2025/06/15
賃貸にカビが生えたらどうする?原状回復の請求を防ぐための5つのポイント
退去時に「カビが原因で原状回復費用を請求された」そんなトラブルが増えています。
【記事を読んで分かること】賃貸住宅でカビが発生した場合の責任範囲や対策、交渉の注意点が分かります。
【記事を読むメリット】費用トラブルを防ぎ、安心して退去できる知識と行動のポイントが身につきます。
1. 賃貸住宅でカビが発生したら誰の責任?
「退去時にカビが原因で原状回復費用を請求された」「これは本当に自分の責任なの?」という声が後を絶ちません。賃貸住宅でカビが発生した場合、原則的な責任の所在を理解しておくことが、トラブルを防ぐ第一歩になります。この章では、原状回復義務と通常損耗の違い、借主と貸主の責任分担について解説します。
1-1. 原状回復義務と通常損耗の違いとは
「原状回復」とは、退去時に部屋を入居時の状態に戻す義務のことですが、経年劣化や通常使用による傷み(=通常損耗)までは借主に責任がないと、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」でも明確に定められています。
■ 通常損耗とは?
- 時間の経過とともに自然に発生する汚れや傷み
- 例:家具の設置跡、日焼けによる壁紙の変色、軽度の結露によるシミ
■ 借主の原状回復義務に含まれるもの
- 故意・過失・不注意・通常を超える使い方によって発生した損傷
- 例:エアコン使用時の換気不足でのカビ大量発生、風通しをせずに生じた広範囲の黒カビ
つまり、通常の生活の範囲で発生したカビは貸主負担、しかし明らかな過失や管理不足によるカビは借主負担というのが基本です。
1-2. 借主と貸主の責任範囲の考え方
責任の分かれ目は、「発生した原因を誰がコントロールできたか」という点にあります。
■ 貸主が責任を負うケース
- 建物の構造的な欠陥(例:外壁のヒビ割れからの浸水)
- 入居時点でカビがすでに存在していた
- 設備故障や雨漏りによって発生したカビ
■ 借主が責任を負うケース
- 定期的な換気や掃除を怠っていた
- 結露を放置し、壁や天井にカビが拡大した
- 長期間留守にして湿気がこもった
とはいえ、最終的な責任の判断は契約書や現場の状況によって左右されるため、入居時・退去時の記録や写真、契約書の内容をしっかり把握しておくことがカギとなります。
2. カビによる原状回復費用が請求されるケースとは?
カビが発生したからといって、必ずしも借主が修繕費用を負担しなければならないとは限りません。ただし、管理不足や過失があるとみなされた場合は、原状回復費用の一部または全部を請求される可能性があります。 ここでは、どんな場合に費用が発生するのか、そしてそれを避けるために必要な条件を具体的に見ていきましょう。
2-1. 借主の過失とみなされる具体例
以下のようなケースでは、カビの発生が借主の責任と判断され、原状回復費用の請求対象になる可能性が高いです。
■ 典型的な「借主の過失」ケース
- エアコンや浴室の換気扇を使用しなかった
- 冬場に結露を放置し、カーテンや窓枠に黒カビが発生
- 押し入れやクローゼットを長期間閉めっぱなしにして湿気が充満
- 洗濯物を部屋干しし続け、湿度が高い状態が常態化
- カビの初期段階を放置し、壁紙や下地まで傷めた
このような行動が見られると、管理会社やオーナーは「通常使用とは言えない」と判断し、修繕や張り替えの費用を請求することになります。
2-2. 費用を負担しないために必要な条件
一方で、カビが発生しても借主が費用を負担しないで済むケースもあります。その条件は、以下のような内容に当てはまるかどうかです。
■ 費用免除の判断基準となる条件
- 定期的な換気や掃除をしていた記録がある
- カビの原因が構造上の欠陥や外部からの浸水にある
- カビの範囲が小規模で、通常使用の範囲内と見なされる
- カビが発生した際、すぐに管理会社に報告し、対応を依頼している
また、入居時の写真や報告記録を残しておくことも非常に有効です。これにより、「入居時からすでにカビがあった」と証明できれば、借主に責任が及ばない可能性が高まります。
3. トラブルを防ぐためのカビ対策と日常習慣
賃貸住宅では「原状回復トラブル」を未然に防ぐことがとても大切です。カビの発生を抑えるためには、日常的な湿気対策や清掃の習慣が重要です。さらに、万が一カビが発生してしまった場合に備えた「証拠の保全」もカギとなります。この章では、実践しやすいカビ対策と、万が一のときに備えた対応策を解説します。
3-1. 通気・除湿・掃除でカビを防ぐコツ
カビは湿度・汚れ・空気の滞留という条件がそろったときに発生します。ちょっとした習慣の積み重ねが、カビ予防につながります。
■ カビを防ぐ日常習慣のポイント
- 毎朝5〜10分程度の換気を行う(窓を2か所開けるのが理想)
- 押し入れ・クローゼットは週に1〜2回は開けて空気を入れ替える
- エアコン・換気扇は湿気がこもりやすい季節に積極的に使用
- 室内干しの際は除湿機またはサーキュレーターを併用
- 窓の結露はこまめに拭き取り、カーテンも定期的に洗濯する
- 浴室や洗面所は使用後に壁や床を乾拭きして湿気を残さない
とくに梅雨時や冬場の結露シーズンには、意識的に湿気を管理することがカビ防止のカギになります。
3-2. カビの初期対応と証拠の残し方
もしカビを発見した場合、「とりあえず掃除して終わり」ではなく、まずは記録を取ることが大切です。なぜなら、カビの責任問題になった際に、発生状況の証明や対応履歴が交渉材料になるからです。
■ カビ発見時のベストな対応手順
- スマホなどでカビの状態を写真・動画で記録(日付が分かるように)
- 発生場所や範囲を簡単にメモしておく(例:押入れ奥の左下、10cm程度の黒カビ)
- 管理会社または大家にすぐに連絡し、報告・相談をする
- 清掃や除去を行う場合は、前後の写真を残しておく
これにより、「借主としてやるべきことはやっていた」と証明できるため、退去時に不利な扱いを受けるリスクを大幅に減らせます。
4. 原状回復トラブルを避ける退去前の注意点
退去時に「思いがけない費用を請求された」というトラブルは後を絶ちません。とくにカビに関する問題は、借主と貸主の見解が分かれやすい分野です。円滑に退去するためには、事前準備と対応の仕方が重要になります。この章では、原状回復トラブルを回避するために押さえておきたい退去前のポイントをご紹介します。
4-1. カビの現状報告と写真記録の重要性
退去が近づいたら、部屋のカビ状況を改めて確認し、必ず記録に残しておくことが基本です。
■ 写真記録で差がつく!
- カビのある場所と範囲を鮮明な写真で残す
- 撮影時は、日付が表示されるカメラ設定やアプリを活用
- カビの除去を行った場合、その前後の状態を記録
写真があれば、万一「ここにカビがあった」「掃除が不十分だった」と指摘された場合でも、適切に管理していたことを説明しやすくなります。
また、カビの発生が構造や設備の問題に起因していると考えられる場合は、必ず退去前にその旨を文書やメールで報告しておくと、後の交渉に有利になります。
4-2. 管理会社とのやり取りで気をつけたいこと
退去の立ち合いや原状回復費用の精算においては、管理会社やオーナーとのやり取りが非常に重要です。以下のポイントを押さえておきましょう。
■ やり取り時の注意点
- 立ち合い時にカビの場所を一緒に確認し、口頭だけでなく書面に残す
- 「これは通常損耗では?」と思う点があれば、その場で質問する
- 事前に国土交通省のガイドラインを読んでおき、自分の立場を明確にする
- 署名・捺印をする書類は内容を確認した上で慎重に
- 納得できない費用請求があった場合は、即答せず持ち帰って検討する
誠実に対応しつつ、記録をしっかり残すことと、法的知識を持って臨むことが冷静な対処につながります。
5. カビが原因でトラブルになった場合の対処法
退去時のカビに関する責任の所在や費用負担をめぐって、管理会社やオーナーとトラブルに発展するケースは少なくありません。納得できない費用請求を受けた場合は、冷静に対応しつつ、適切な第三者機関に相談することが大切です。この章では、トラブル時に活用できる相談窓口や、最終的な解決手段についてご紹介します。
5-1. 不動産トラブル相談窓口と活用法
まず第一に検討すべきなのは、専門の相談窓口を活用することです。費用をかけずに法律的なアドバイスや仲裁を受けられる機関が複数あります。
■ 主な相談窓口一覧
- 国民生活センター(消費生活センター)
→ 地域の相談窓口を通じて不動産トラブルの助言・仲裁を行う - 不動産適正取引推進機構(RETIO)
→ 原状回復に関するガイドラインの提供、相談対応 - 弁護士による無料法律相談(自治体や法テラス)
→ 専門家の視点で契約内容や証拠の評価を受けられる - 宅建業協会・不動産協会
→ 加盟業者に対する苦情・相談対応をしてくれる
これらの窓口は、感情的な対立になる前に冷静な助言を受ける場として有効です。相談時には、契約書・写真・メール記録などの証拠資料を持参するのがポイントです。
5-2. 裁判・少額訴訟の流れと現実的な解決策
相談で解決できない場合、費用請求の取り消しや返金を求めて法的手段に移行することも可能です。現実的かつスムーズに進めるには、「少額訴訟制度」を知っておくと便利です。
■ 少額訴訟とは?
- 請求金額が60万円以下であれば、1回の審理で判決が出る簡易な裁判制度
- 弁護士をつけずに本人だけで申し立て可能
- 訴訟費用も比較的少なく済み、スピード解決が期待できる
■ 現実的な対応策
- まずは管理会社と改めて交渉する意思を伝える(記録を残す)
- 合意に至らなければ、内容証明郵便で正式に異議を申し立てる
- 解決しない場合は、裁判所の相談窓口で手続きを確認する
いきなり訴えるのではなく、交渉・相談・法的手段の順に段階を踏むことが円満解決への近道です。主張の正当性を裏付けるためにも、記録や証拠の整備がカギとなります。
一般社団法人 微生物対策協会について
一般社団法人 微生物対策協会は、**「カビの検査と対策」**を中心に据えた専門機関として設立されました。カビが原因で発生する健康被害や、建物の劣化といった現代住宅の深刻な問題に対し、**室内空気の「見える化」**を通じて、健全で安心な住環境の実現を目指しています。
この活動の根拠は、平成27年に施行された「アレルギー疾患対策基本法」にあります。この法律では、アレルギー症状の予防および緩和を目的として、生活環境や建築構造の改善が重要であると明記されています。当協会はこの理念に基づき、暮らしの安全と快適さを守るための実践的な取り組みを行っています。
活動内容の一例:
- 室内空気中の微生物(カビや浮遊菌など)に関する調査・検査
- 建物内部のカビの有無や濃度を測定し、**被害状況の「見える化」**を実施
- カビの種類や分布を明確化し、適切な対策・改善案の提案
- 環境微生物に対する理解を深める啓発活動と講習会の実施
- 保健・医療・福祉・環境保全に寄与する地域連携型の活動
特に建物内では、目に見えるカビだけでなく、空気中に浮遊するカビ菌のリスクが問題となっています。当協会では、専門的な測定とデータ解析を通じて、見えないリスクを可視化し、科学的根拠に基づいた確実な対策をサポートいたします。
カビによる健康被害や、家族のアレルギー、住宅の資産価値低下など、さまざまな課題に悩む方々にとって、当協会の取り組みが安心・安全な住まいの実現に貢献できる存在であり続けることを使命としています。