2025/11/02
高気密・高断熱の住宅に使われる吹付け断熱材ですが、見えない場所でカビが繁殖する危険性があります。
【記事を読んで分かること】
吹付け断熱材にカビが発生する原因、予防のポイント、正しい施工と管理法が理解できます。
【記事を読むメリット】
住宅の性能を損なわずに、カビのリスクを最小限に抑える知識と実践的な対策が身につきます。
1. 吹付け断熱フォーム材とは?特徴と住宅への効果
断熱材は、現代の住宅に欠かせない存在です。その中でも「吹付け断熱フォーム材」は、隙間なく施工できる点が評価され、特に高気密・高断熱住宅で多く採用されています。しかし、その一方で、施工や管理を誤るとカビが発生しやすいというリスクも抱えています。この章では、まず吹付け断熱材の基礎知識をおさえておきましょう。
1-1. 吹付け断熱の基本構造と使用される素材
吹付け断熱フォーム材は、主にウレタン樹脂を原料とした発泡断熱材です。施工現場で液体状の原料を混合・発泡させ、壁面や天井などに直接吹き付けて使います。
施工時に発泡して膨らむことで隙間なく密着し、気密性と断熱性を同時に向上させる特徴があります。接着剤やビスを使わずに密着できるため、複雑な形状の空間でもムラなく施工が可能です。
1-2. 高気密高断熱がもたらすメリットと盲点
吹付断熱の最大の利点は、空気の出入りを抑え、室内の温度を一定に保てることです。エアコン効率が向上し、光熱費の削減にもつながります。
しかし、この**「高気密」という特性は、湿気の逃げ場を失わせる要因にもなります。湿度がこもりやすくなることで、内部結露や断熱材裏でのカビ繁殖**を招くケースが報告されているのです。
2. 吹付け断熱材にカビが発生する主な原因とは?
「断熱材=カビとは無縁」と思っている方も少なくありませんが、実は断熱材そのものはカビの栄養源ではないものの、カビの生育環境を作り出してしまうことがあります。特に吹付タイプの断熱材では、施工不良や設計ミスがカビのリスクを増大させる要因になります。
2-1. 結露がカビを呼ぶメカニズムと気密空間の落とし穴
住宅内の温かい空気が、壁内の冷たい空気と触れ合うと、結露が発生します。吹付断熱の場合、壁体内に湿気が入り込んでも、気密性が高すぎて湿気が排出されにくく、結露が内部にとどまってしまうのです。
この水分が乾かないまま残ることで、カビの生育条件(温度・湿度・栄養)が揃い、見えない断熱層の裏でカビが静かに広がっていくのです。
2-2. 断熱材裏側で起きるカビ被害の典型パターン
よくある事例としては、天井裏や壁の吹付け断熱の裏にカビがびっしりと発生し、気づいたときには部屋にカビ臭が充満していたというものです。
また、施工時に木材の水分が多く残っていた場合、断熱材の裏に結露が発生→木材にカビが繁殖という流れも典型的なパターンです。目視ではわからず、クロスや壁紙に黒ずみが出るまで発見できないことが多いため、非常に厄介です。
3. 断熱材のカビを放置するリスクと健康への影響
見えない場所のカビは気づかれにくいため、長期間放置されてしまうケースが多いです。しかし、それがもたらすリスクは決して軽視できません。ここでは、健康面と建物面、2つの観点からのリスクを解説します。
3-1. カビによるアレルギー・体調不良のリスク
カビが発する胞子は空気中に浮遊し、呼吸とともに体内に取り込まれる可能性があります。特に、喘息やアレルギーを持つ方、小さなお子さん、高齢者にとっては、深刻な健康被害を及ぼす恐れがあります。
実際、吹付断熱の裏でカビが繁殖し、それが室内に広がっていたことで、慢性的な咳や頭痛、アレルギー性鼻炎を引き起こしていたという例もあります。
3-2. 建物構造や資産価値への悪影響
カビは断熱材そのものよりも、断熱材の裏にある木材や構造材を腐朽させることが問題です。湿気とともにカビが広がると、柱や梁が劣化し、建物の耐久性が低下します。また、カビ臭や見た目の悪化により、住宅の資産価値が下がることもあります。
断熱材の裏側は修繕が困難で、カビ被害が進行すれば一部解体して対応する必要が出てくるため、費用も時間もかさみます。
4. カビを防ぐための吹付断熱材の施工と管理のポイント
断熱材の性能を最大限活かしながらカビを防ぐには、「正しい施工と環境管理」が不可欠です。ここでは、施工時と使用後に押さえておきたいポイントを紹介します。
4-1. 結露対策としての通気設計と適切な施工法
断熱材を施工する際は、まず壁内の湿気が抜ける設計がされているかどうかを確認する必要があります。
例えば、通気層の確保・防湿シートの適切な設置・換気経路の確保などが基本です。また、施工現場で使用される木材の含水率が高いまま断熱材を吹き付けると、湿気が内部に閉じ込められてしまうため、十分に乾燥させてから施工することが原則です。
さらに、外壁側の通気性が確保されていない場合には、結露が逃げ場を失いカビのリスクが倍増します。
4-2. 施工後の点検と湿度管理の重要性
断熱材施工後も、カビを防ぐためには定期的な点検と室内の湿度管理が必要です。特に梅雨や冬の結露が発生しやすい時期は、室内湿度を50〜60%以下に保つことが理想です。
また、吹付け箇所付近に換気口や点検口を設けておくことで、湿気や異臭の兆候に気付きやすくなります。点検できない=被害が拡大しやすいというのが吹付断熱の大きな盲点なのです。
5. カビの再発を防ぐためにできるメンテナンスと対処法
万が一カビが発生してしまった場合や、カビのリスクが高いと感じたときには、早期の対処と予防策の見直しが必要です。
5-1. カビが発生したときの対応とリフォーム方法
軽度な表面カビであれば、消毒用エタノールや防カビスプレーで拭き取り対応が可能です。ただし、壁体内や断熱材裏にまでカビが広がっている場合には、部分解体・吹付断熱の再施工・構造材の清掃と乾燥が必要になります。
施工から数年でカビが発生した場合は、断熱施工業者に原因調査を依頼し、再発防止のための施工見直しを検討しましょう。
5-2. 専門業者による空気環境調査と定期チェックのすすめ
カビは目に見えない段階で空気中に胞子を放出します。そのため、**専門業者による空気環境の測定(カビ・湿度・温度)**が非常に有効です。
一般社団法人 微生物対策協会などでは、室内空気の「見える化」を通して、カビの発生リスクを数値で把握することができます。
こうした定期的なチェックを取り入れることで、見落とされがちな住宅内部のカビ問題を早期に発見し、安心・安全な住まいを長く保つことが可能になります。
一般社団法人 微生物対策協会について
一般社団法人微生物対策協会は、「カビの検査と対策」に特化した専門団体です。私たちは、住宅や建物内で発生する微生物による被害、特にカビの影響から健康と住環境を守る活動を行っています。
協会の取り組みは、平成27年施行の「アレルギー疾患対策基本法」に基づいており、生活環境の改善や建築構造の見直しを通じてアレルギー症状の予防と軽減を目指しています。
特に現代の住宅では、高気密・高断熱化により、カビが発生しやすい状況が増加しています。目に見えない空気中のカビや、壁体内・断熱材の裏で繁殖するカビは、見逃されやすく深刻な健康被害や構造被害に繋がるリスクを持っています。
私たちは、**空気環境の測定と分析による「見える化」**を通じて、科学的根拠に基づいたカビ対策を提案し、住宅や施設の安全性を高めるサポートを提供しています。
断熱材の施工や住環境のカビが気になる方は、ぜひ一度、微生物対策協会へご相談ください。カビの見えないリスクを明確にし、根本からの対策で安心できる暮らしを支援いたします。