2025/06/02
賃貸住宅でカビが発生したとき、修繕費や責任は誰が負うべきか分からず困った経験はありませんか?
【記事を読んで分かること】賃貸住宅でのカビ発生時の責任の所在やトラブル時の対応方法、予防策が分かります。
【記事を読むメリット】賃貸トラブルを未然に防ぎ、安心して暮らせる環境を守るための実践的な知識と交渉術が身につきます。
1. 賃貸住宅でカビが発生!誰の責任になるのか?
「壁にカビが生えている」「押入れにカビが広がって家具がダメになった」──そんなとき、賃貸住宅ではいったい誰が責任を負うべきなのでしょうか?修繕費やクリーニング代、さらには健康被害や家財への影響も関わる可能性があるため、責任の所在を正しく理解しておくことが大切です。
1-1. 借主・貸主それぞれの責任範囲とは
賃貸物件でカビが発生した際の責任は、基本的に「どちらに原因があるか」で分かれます。
- 貸主(大家・管理会社)の責任になる場合
建物の構造的な問題(通気性が悪い、雨漏りがある、防水工事が不十分など)によってカビが発生した場合は、貸主側の管理義務が問われます。特に入居前からカビがあった場合や、明らかに建物側の欠陥が原因であると判断された場合は、貸主が対応・修繕費用を負担するケースが多いです。 - 借主(入居者)の責任になる場合
一方で、換気不足や結露放置、家具の配置ミスなど、入居者の日常的な生活習慣が原因とみなされる場合は、借主の自己管理不足とされ、修繕やクリーニングの費用を請求される可能性があります。
つまり、「建物の不備か、入居者の使い方か」が重要な判断基準となります。
1-2. 契約書・特約条項に潜む見落としがちな注意点
カビ問題をめぐるトラブルで見落としがちなのが、賃貸契約書の記載内容です。多くの契約書には、「日常的な換気・清掃は入居者の責任」と明記されていることが多く、仮に建物の構造に多少の問題があっても、借主にある程度の責任が課されるケースがあります。
また、「カビが発生した場合、借主の責任で除去・清掃を行うこと」といった特約条項が含まれていることもあるため、契約時には見逃さずに確認しておくことが大切です。
万が一カビが発生したときのトラブルを避けるためにも、契約書・重要事項説明書を保管し、どちらの責任が問われるのかを冷静に判断する材料として活用できるようにしておきましょう。
2. カビによる被害と健康・生活への影響
カビは見た目が不快なだけでなく、私たちの健康や日常生活に深刻な影響を与える存在です。特に賃貸住宅では、自分の責任で管理しなければならない空間が限られている分、カビの被害を受けやすくなります。この章では、健康面と生活面、それぞれで実際に起こりうる被害について詳しく解説します。
2-1. カビがもたらす健康リスクと体調不良のサイン
カビは空気中に目に見えない胞子を放出しており、それを吸い込むことで体にさまざまな影響を及ぼします。以下は特に注意が必要な症状です:
- 咳、くしゃみ、鼻水などのアレルギー反応
- 皮膚のかゆみ、湿疹、炎症
- 目のかゆみや充血
- 気管支炎や喘息の悪化
特に高齢者、小さなお子さん、アレルギー体質の方はカビの影響を受けやすく、カビのある環境で生活を続けると症状が慢性化してしまうこともあります。
また、室内のカビ臭(湿ったような、土っぽいにおい)を感じる場合は、目に見えない場所でカビが広がっている可能性が高く、早急な対処が必要です。
2-2. 家具・衣類・家電などの損害事例
カビは壁や天井だけでなく、布団・カーテン・衣類・木製家具・家電製品の内部にまで影響を及ぼします。たとえば以下のような被害が報告されています:
- 押入れに保管していた布団に黒カビが繁殖し廃棄に
- 壁際に設置していた木製の本棚にカビが発生して本もダメに
- クローゼットの服にカビが生え、クリーニングでも落ちない
- 結露による湿気でテレビやオーディオ機器が故障
このような被害は、見えないうちに進行することが多く、気づいたときには元に戻せない場合がほとんどです。さらに、こうした家財の損害が発生した場合、賃貸契約上で貸主に補償を求めることは難しく、自己負担になることが一般的です。
3. カビが発生したときの適切な対応とトラブル回避法
賃貸住宅でカビを見つけたとき、「とりあえず自分で掃除すればいいか」と軽く考えてしまうのは危険です。自己判断で動くと、後々トラブルに発展する可能性があります。ここでは、カビを発見したときに取るべき行動と、貸主・管理会社との円滑なやり取りの方法を解説します。
3-1. 管理会社・大家への連絡のタイミングと伝え方
カビを発見したら、できるだけ早く管理会社や大家に連絡することが基本です。時間が経つほど被害が拡大し、責任の所在も曖昧になってしまいます。連絡の際には、以下のような情報を伝えるとスムーズです:
- 発見日時と発生場所
- カビの広がり具合(例:壁一面、窓枠まわりなど)
- 被害の様子(家具や衣類に影響が出ているか)
- 自分の生活状況(換気や除湿は行っていたか)
ここで重要なのは、「責任を押しつけるのではなく、状況を正確に伝える」という姿勢です。感情的なやり取りは避け、冷静かつ丁寧な報告が信頼関係の維持につながります。
3-2. 証拠の残し方と交渉時に役立つ記録の取り方
トラブルを避けるためには、「証拠を残しておく」ことが非常に大切です。以下のような記録は、管理会社や貸主との話し合い、さらに必要であれば消費生活センターなどに相談する際にも役立ちます。
- カビの写真をスマホなどで撮影(複数の角度から)
- カビ発見時の状況メモ(湿度、天候、換気の有無など)
- メールやチャットでのやり取りの保存(口頭だけで済ませない)
- 日々の換気・除湿・掃除などの実施状況を簡単にメモ
これらの情報があれば、「入居者側の過失ではない」と判断される材料になります。逆に、何も記録がないと、全ての責任を押しつけられる可能性もあるため、日頃から“備える意識”がトラブルを防ぐ鍵になります。
4. 賃貸でのカビ予防策と注意すべき生活習慣
カビの発生を未然に防ぐには、日々のちょっとした行動や部屋の使い方がカギとなります。賃貸住宅では構造を変更することが難しいからこそ、「今ある環境でできる対策」を知っておくことが重要です。この章では、手軽に始められる実践的なカビ予防法をご紹介します。
4-1. 賃貸でもできる湿気・結露対策
カビの最大の原因は「湿気」です。まずは、室内に湿気をためこまないための基本対策を押さえましょう。
- こまめな換気を習慣化する
朝と夜の1日2回、5〜10分間窓を開けて空気を入れ替えるだけで、湿度が大幅に下がります。特に雨の日や洗濯物を部屋干しした日は、意識的に換気を行いましょう。 - 除湿グッズの活用
押し入れやクローゼットには除湿剤(シリカゲル・炭タイプ)を置くのが効果的。部屋全体の湿度が高いときは、エアコンの除湿モードや除湿機を使うのもおすすめです。 - 結露は“その場で拭く”が基本
窓やサッシに結露が発生したら、すぐに拭き取ることが大切。放置すると水分がたまり、ゴムパッキンや壁にカビが発生する原因になります。
4-2. カビを防ぐ家具の配置・換気の工夫
家具の置き方にも、実はカビの発生リスクを下げるコツがあります。
- 壁から数センチ離して家具を配置
タンスやベッド、冷蔵庫などを壁にぴったりくっつけていると、空気が流れず湿気がこもりやすくなります。5〜10cmほど離すことで、空気の通り道ができ、湿気が逃げやすくなります。 - 収納は詰め込みすぎない
押し入れやクローゼットの中は、スペースに余裕をもたせて収納しましょう。ぎっしり詰め込むと通気性が悪くなり、カビの温床になりやすいです。 - カーテンの開閉で自然換気を取り入れる
日中はカーテンを開けて、日光を取り込むようにしましょう。太陽光には殺菌効果があり、湿気のこもった空間を乾燥させてくれます。
これらの対策はすべて、賃貸住宅でも手軽に実行できる方法ばかりです。日常の中で無理なく取り入れ、カビのリスクを下げましょう。
5. 退去時のカビをめぐる原状回復トラブルを防ぐには
賃貸住宅を退去する際、「カビが原因で原状回復費用を請求された」といったトラブルは少なくありません。場合によっては高額なクリーニング代や修繕費を請求されることも。ここでは、そうしたトラブルを未然に防ぐために知っておきたいポイントと、事前にできる対策を解説します。
5-1. 原状回復費を請求された場合の対応方法
退去時、カビに関する原状回復費が請求された場合は、そのカビが誰の責任で発生したかを明確にすることが重要です。ポイントは以下の通りです:
- まずは見積書の明細を確認
「クロス張り替え費用」や「クリーニング代」などが、どの範囲に対して、どんな理由で請求されているのかを確認しましょう。 - 発生原因に異議がある場合は、写真や記録をもとに交渉
入居時にすでにカビがあった、換気や掃除は十分行っていたなど、入居者に落ち度がないことを証明できる写真やメモ、やり取りの記録があれば、請求を減額または免除できる可能性があります。 - 納得できない場合は専門機関へ相談
どうしても話し合いがつかない場合は、消費生活センターや**住宅紛争処理支援センター(すまいのADR)**などの第三者機関に相談し、専門的なアドバイスを受けることも視野に入れましょう。
5-2. 退去前に確認すべきチェックポイントと事前準備
退去トラブルを回避するには、退去前に自分でできる点検と掃除をしっかり行うことが大切です。
- 壁や天井、押し入れなどにカビがないか目視でチェック
- 結露が多かった窓枠やサッシのゴム部分を重点的に掃除
- エアコンや換気扇のフィルター清掃も忘れずに
- カビが発生した場合は、簡単でも写真を撮って記録を残す
また、入居時の写真を退去時に見せられるように保管しておくことで、「もともとあったカビ」なのか「入居者による過失」なのかを明確にする材料になります。これは将来的な敷金返還交渉にも有利です。
一般社団法人 微生物対策協会について
一般社団法人 微生物対策協会は、「カビの検査と対策」に特化した専門団体として、健康被害や建物の劣化、生活環境の悪化など、カビが引き起こす様々な問題に対応するための活動を行っています。私たちは、“見えない空気の汚染”に注目し、空気中の微生物を「見える化」することで、安心して暮らせる健全な住環境づくりを目指しています。
当協会の活動は、平成27年に施行された「アレルギー疾患対策基本法」に基づいています。この法律は、アレルギー症状を悪化させる原因のひとつである「住まいの環境改善」を重視しており、当協会もこの理念を踏まえて、室内環境の調査・分析・改善提案を行っています。
主な活動内容は、建物内や車室内などに浮遊する微生物(特にカビ)を対象とした調査・検査です。空気中に浮かぶカビの胞子を測定し、濃度や種類を可視化することで、表面的には見えないリスクを科学的に評価します。特に近年は、高気密・高断熱化が進んだ住宅が多く、湿気がこもりやすくカビが発生しやすい環境が増えています。こうした状況に対し、確実な対策を講じるためには、目に見えないカビの存在を把握することが第一歩となります。
また、カビは一度発生すると根を張り、表面を拭いただけでは除去できない場合も多くあります。建材に深く入り込んだカビや空中を漂う胞子は、アレルギーや喘息といった健康リスクにつながるため、専門的な検査と知識に基づいた対応が欠かせません。
微生物対策協会では、こうした知識や技術を広く提供し、個人住宅だけでなく、医療・福祉施設や公共空間など、さまざまな場所での「空気の安全管理」をサポートしています。
「健康は空気から」──それが、私たちの基本姿勢です。
見えないリスクから暮らしを守るために、微生物対策協会はこれからも正確な調査と誠実な情報提供を通じて、安全な環境づくりに貢献してまいります。