一般社団法人
微生物対策協会

ブログ

2025/06/22   

ジプトーンがカビの温床に!? 病院での天井カビ対策完全ガイド

病院の天井に使用されるジプトーンにカビが生えていたら、患者や職員の健康に深刻な影響を与える可能性があります。
【記事を読んで分かること】ジプトーンにカビが発生する原因、健康被害、そして適切な対策方法が分かります。
【記事を読むメリット】医療施設の空気環境を改善し、院内感染リスクを防ぐ具体的な知識と行動指針が得られます。

病院の天井に多く使用されている「ジプトーン」は、衛生的で静かな環境が求められる医療施設において、長年重宝されてきた建材の一つです。しかしこのジプトーン、実はカビの発生リスクが高いという弱点も併せ持っています。この章では、まずジプトーンとはどのような素材なのか、そして病院で使用される理由を詳しく解説します。

ジプトーンは、石膏ボードの表面に紙を貼り、その上に吸音効果をもたらすための小さな穴(パンチング)を多数あけた天井材です。見た目が白く、軽量で施工がしやすいことに加え、室内の音をやわらげる効果があるため、オフィスや学校、病院などの天井に広く採用されています。

病院では、特に以下のような理由でジプトーンが多用されています:

  • コストが安く、工事が比較的簡単であること
  • 天井の裏側に設置された配線・設備へのアクセスが容易(点検口タイプ)
  • 室内の音響をやわらげ、患者のストレスを軽減できる

そのため、処置室や廊下、待合室など、患者が長時間過ごすエリアでも静かな環境をつくる目的で採用されることが多いです。

病院建築では、安全性とメンテナンス性が最優先されます。ジプトーンは軽量で耐震性もあり、さらに天井裏の点検や配管修理がしやすい設計になっているため、医療現場において非常に都合の良い素材です。

また、リフォームや改修の際も、部分的なパネル交換が容易で経済的という点が大きなメリットとされてきました。こうした理由から、多くの病院やクリニックでは長年にわたりジプトーン天井が採用され続けてきました。

しかし、表面に穴が空いていて空気中のホコリや湿気を吸い込みやすい構造であるため、時間が経つとともに内部に汚れが蓄積しやすく、そこにカビが生える原因となるのです。

衛生管理が最重要の病院にとって、素材選びは慎重であるべきです。ジプトーンの性質を正しく理解し、必要に応じた点検・対策を行うことが、安心・安全な医療環境の維持に直結します。

一見すると清潔に見える病院の天井ですが、実際には「ジプトーン」という素材の性質上、カビが発生しやすい条件が整っていることが少なくありません。特に病院という特殊な環境下では、カビの温床となる要因が日常的に存在しています。この章では、ジプトーン天井にカビが発生しやすい理由を、素材の特性と空間環境の両面から解説します。

ジプトーンは、石膏を芯材とし、表面に紙を貼った吸音性のある多孔質素材です。この「多孔質」という特性が、実はカビの繁殖にとって非常に都合が良い環境を提供してしまいます。

具体的には以下のようなメカニズムです:

  • 紙素材や穴の内部に空気中の湿気が蓄積されやすい
  • 湿気とともに浮遊するホコリや有機物が表面に付着し、カビの栄養源となる
  • 日常清掃では細かい穴の中までは届かず、徐々にカビが定着していく

また、天井材は壁面や床と違って定期的に拭き掃除がされることが少なく、汚れや湿気が“放置されがち”な部位でもあります。そのため、見えない間にカビが静かに繁殖してしまうのです。

ジプトーン天井にカビが発生するもう一つの大きな要因が、「天井裏の環境」です。天井裏は配管や空調ダクトが集中する場所であり、結露が起きやすい条件がそろっています。

病院では、季節を問わず空調による温度調整が行われており、室内と天井裏の温度差によって以下のような現象が生じます:

  • 冷暖房の効いた空間で、配管の表面や金属部分に結露が発生
  • 天井裏の湿気がジプトーンにじわじわと染み込む
  • 換気が不十分な箇所では湿度がこもり、カビの繁殖環境が持続する

さらに、空調からの送風によって空気中に舞い上がったホコリやカビ胞子がジプトーン表面に付着することもカビ発生の一因です。つまり、空調機器の状態や使用方法によってもカビのリスクが大きく左右されるのです。

ジプトーンはその機能性ゆえに選ばれることが多い天井材ですが、「カビの発生しやすさ」というデメリットも併せ持つことをしっかりと理解し、適切な点検・対策を講じることが必要です。

病院の天井に発生したカビは、単なる見た目の問題にとどまらず、患者や職員の健康、さらには病院全体の信頼性に関わる重大なリスクです。特にジプトーンのような吸湿性の高い素材で発生したカビは、空気中に胞子を拡散しやすく、空気感染やアレルギー症状の原因になりかねません。この章では、病院環境におけるカビの影響について、健康被害と運営リスクの2つの観点から解説します。

カビは成長する際に微細な胞子を空気中に放出します。これを吸い込むことで、以下のような健康被害が引き起こされる可能性があります:

  • 咳や鼻水、くしゃみなどのアレルギー反応
  • 目のかゆみや皮膚の炎症
  • 気管支炎、喘息などの呼吸器系疾患
  • アスペルギルス症などの真菌感染症

特に注意すべきは、免疫力の低い患者への影響です。がん治療中の方、手術直後の方、高齢者、乳幼児など、免疫が抑制された状態の人にとっては、カビは命に関わる深刻なリスクとなります。

また、カビが発生している空間で働く医療従事者にも、職業性アレルギーや慢性的な体調不良を引き起こす恐れがあります。これは、毎日長時間その空間にいることで、知らず知らずのうちに体への負担が蓄積してしまうためです。

ジプトーン天井のカビは、目に見えないうちに空気中に胞子を撒き散らし、空調を通して広範囲に拡散する可能性があります。これが最も恐れられているのが、「空気感染」です。結核やインフルエンザなどと同様に、空気中に浮遊するカビ胞子も感染源になりうるのです。

こうした事態が起これば、病院内での二次感染やクラスターの発生リスクが高まります。特に、ICU(集中治療室)や手術室などの清浄区域でカビが見つかった場合、その病院の管理体制自体が問われることにもなりかねません。

さらに、カビの発生が原因で患者からクレームが寄せられたり、SNSなどで情報が拡散された場合には、病院の評判や信頼性が大きく損なわれる恐れもあります。どれほど医療技術が優れていても、衛生面での不備があれば患者からの信頼を得ることは難しくなります。

ジプトーンのカビは「見えない」「気づきにくい」からこそ、発見されたときにはすでに広がっているケースも多いのです。だからこそ、カビを軽視せず、定期的な点検と予防策を講じておくことが、病院運営において非常に重要です。

病院内でカビが発生していても、目視で気づいたときにはすでに広範囲に広がっていることが多いです。特にジプトーン天井は見た目が白く、表面の小さな穴にカビが入り込んでも気づきにくいため、早期発見のためには意識的な点検と専門的な検査が重要です。この章では、カビの見分け方と、天井点検時に注意すべきポイントを解説します。

ジプトーン天井に付着するカビは、一般的な汚れと区別しにくいことがありますが、次のような特徴に注意することで見分けが可能です。

◆カビの特徴:

  • 黒・茶・緑などのまだら模様や点状の斑点
  • 表面に細かい粉が浮いているように見える
  • 時間が経つと拡大する傾向がある
  • **におい(カビ臭)**を伴う場合もある

一方で、空調の吹き出し口周辺にたまりがちな「ホコリ汚れ」は、こすれば比較的簡単に落ちます。しかしカビは、内部に根(菌糸)を張っているため、拭いても残るまたは再発しやすいという点が大きな違いです。

◆視認すべきポイント:

  • 空調ダクトや換気扇の周囲
  • 照明器具のまわり
  • 天井材の継ぎ目・端部
  • 水回り(トイレ・洗面所)付近の天井
  • 窓の近くや外壁に面した天井

目視でのチェックは、照明の角度を変えて影を作ると、凹凸や変色が浮かび上がりやすくなります。

見た目だけで判断がつかない場合は、専門機関による空気検査や表面検査を行うことが効果的です。

◆検査方法の例:

  • 空中浮遊菌検査:空気中に漂うカビ菌を捕集し、数や種類を分析
  • 付着菌検査:天井の表面を拭き取り、カビが定着しているかを調べる
  • 湿度・温度ログ計測:天井裏や空間の結露リスクを把握するためにセンサー設置
  • VOC測定:カビ由来の揮発性有機化合物(かび臭)の検出

こうした検査を定期的に実施することで、「見えないカビリスクの可視化」が可能になり、適切なタイミングで対策を講じることができます。

また、専門の業者に依頼すれば、報告書に基づいた改善提案や対策の実施まで一貫してサポートしてくれる場合もあります。清掃では限界のある「見えない汚染」を把握するためにも、検査導入は非常に有効です。

病院の天井にカビが発生していることが分かった場合、そのまま放置するのは極めて危険です。ジプトーン天井はその構造上、カビの根が内部に入り込んでしまいやすく、見た目だけの除去では不十分な場合がほとんどです。この章では、再発を防ぐための効果的な対策方法と、ジプトーンの適切な処理について詳しく解説します。

カビの除去には、まず「汚染範囲の特定」と「適切な処理方法の選定」が必要です。ただし、表面を拭き取るだけの清掃では、以下のような問題が残ります:

  • 素材内部の菌糸が生き残り、数日〜数週間で再発
  • 清掃時に胞子が空気中に拡散して感染リスクを高める
  • 天井材が劣化し、カビがさらに定着しやすくなる

そのため、カビが軽度であれば以下のような対策が効果的です:

  • 除菌剤やアルコールによる拭き取り+乾燥処理
  • 防カビスプレーや抗菌コーティングの施工
  • 天井裏の湿度管理(結露防止の断熱材追加や換気改善)

ただし、カビが広範囲に及んでいる、変色が激しい、臭いが強いといった場合は、ジプトーン天井の全面交換または大規模な防カビ施工が必要になるケースもあります。

根本的な再発防止を考えるなら、カビが定着したジプトーン天井の交換や本格的な防カビ施工を検討すべきです。以下のような場合が「交換のサイン」です:

  • 同じ箇所に何度もカビが再発している
  • 天井裏に結露や水漏れが確認されている
  • 空調設備まわりにもカビが広がっている
  • 患者や職員からカビ臭や空気の違和感が指摘された

天井を交換する際には、以下のようなカビに強い素材の選定が重要です:

  • 防湿性・防カビ性を備えた石膏ボード
  • 抗菌加工されたPVCやアルミ天井材
  • 湿度変化に強い吸放湿型の建材

また、防カビ塗料を施した上での仕上げも、コストを抑えつつ再発リスクを軽減する有効な方法です。

病院のように空気の質が患者の健康に直結する施設では、「とりあえず拭く」ではなく、科学的根拠に基づいた対策が求められます。定期的な点検・検査とあわせて、適切な施工を行うことで、安心して治療に専念できる環境づくりが実現できます。

一般社団法人 微生物対策協会は、カビをはじめとする環境中の微生物による被害を防止・管理することを専門とする団体です。特に「室内空気の見える化」に力を入れており、健康被害や建物劣化といった問題に対して、科学的かつ実践的なアプローチで解決を支援しています。

当協会の設立目的は、室内や車内に浮遊する微生物による健康被害や衛生リスクの把握と改善にあります。その根拠の一つとなっているのが、平成27年に施行された「アレルギー疾患対策基本法」です。この法律では、生活環境の改善を通じてアレルギーの予防や症状軽減を目指すことが明記されており、当協会の活動はこれを踏まえたものです。

私たちが行っている主な取り組みは以下の通りです:

  • 空気中のカビや細菌の検査・調査
  • カビの有無や濃度を数値で見える化
  • 天井や壁などの表面の拭き取り検査
  • VOC(揮発性有機化合物)測定による空気質評価
  • 検査結果に基づいた改善提案や防カビ対策のアドバイス

特に、病院や高齢者施設など、空気の安全性が命に直結する現場において、カビによる空気汚染リスクを明確にし、根本的な対策につなげる活動を行っています。

また、カビは目に見えない状態で広がっていることが多く、放置すれば建物の内部構造や設備にも深刻なダメージを与えます。そのため、当協会では、被害の見極めから対処法の提案、防カビ施工の支援まで一貫した対応を提供しています。

私たちの使命は、「安心・安全な空間づくりを支える」こと。
住まいや医療施設、公共空間における衛生管理を、科学的根拠に基づき、分かりやすく、実行可能な形でサポートする。それが、微生物対策協会の役割です。

ページトップへ
メールアイコン お問い合わせ  電話アイコン 052-908-0058