2025/07/26
新築住宅なのにカビが発生してしまうケースが近年増えています。
【記事を読んで分かること】新築住宅でカビが多発する原因や注意点、正しい対策と予防法がわかります。
【記事を読むメリット】知らずにカビ被害にあわないために、住む前・住んだ後にできる具体的な対策が身につきます。
1. 新築住宅でカビが多発する理由とは?
「新築だから安心」と思っていたのに、住み始めて間もなくカビのにおいやシミに気づいた――そんな声が近年急増しています。新築住宅でカビが発生するというのは意外かもしれませんが、実は構造や施工、暮らし方の盲点が原因で、カビが「多発」してしまうケースがあるのです。ここでは、新築住宅ならではのカビ発生のメカニズムについて解説します。
1-1. 見えない湿気と気密性の落とし穴
現代の新築住宅は、高断熱・高気密が基本です。エネルギー効率が良く、室内の温度を快適に保ちやすい反面、空気の流れが悪くなりやすい構造でもあります。この「気密性の高さ」が、カビの発生にとっては理想的な環境をつくってしまうのです。
特に問題となるのが、湿気のこもりやすい場所です。浴室やキッチン、室内干しスペースなどは日常的に水分が発生し、空気の入れ替えが不十分な場合、湿度が高い状態が持続します。さらに、新築では木材や内装材に施工時の水分が残っているケースもあり、それが乾ききる前に断熱材や壁で密閉されることで、内部でカビが発生してしまうのです。
1-2. 施工中や引き渡し直後に潜むリスク
意外と見落とされがちなのが、建築中の気候や管理体制による影響です。たとえば、雨天が続く中で屋根が完成する前に壁材を貼った場合、構造材に水が染み込んでしまい、それが乾燥しきらないまま家が完成することがあります。また、現場での換気不足・乾燥不足も、隠れカビの原因になります。
さらに、引き渡し直後の新築住宅は、建材から出る水分が多く、最初の数か月間は特に湿度が高くなりやすい状態です。この時期にしっかり換気や除湿を行わないと、室内の見えない場所――たとえば壁紙の裏やクローゼットの奥など――でカビが静かに繁殖し始めるのです。
新築住宅におけるカビ問題は、「見た目のきれいさ」や「新しさ」に油断しがちなだけに、気づいたときにはすでに広範囲に広がっていたというケースも珍しくありません。
2. よくあるカビ発生箇所とその兆候
新築住宅では見た目がきれいなだけに、カビの発生に気づきにくいことがあります。しかし、カビは見えない場所や空気の流れが滞るところからひそかに広がり、やがて目に見える被害や健康被害につながることも。ここでは、新築住宅で特に注意が必要な発生箇所と、カビの「初期サイン」について詳しく解説します。
2-1. 壁紙の裏・床下・クローゼットなど注意すべき場所
新築住宅でカビが発生しやすいのは、以下のような「湿気がこもりやすく、通気性が悪い場所」です。
- 壁紙の裏側やクロスのつなぎ目:施工時に残った湿気が乾燥しきらず、内側からカビが繁殖するケースがあります。特に北側の壁や外気に面した部分は冷えやすく、結露によってカビができやすいです。
- 床下・基礎周辺:高気密・高断熱の住宅ほど、床下の通気が十分でない場合に湿気がたまりやすくなります。基礎コンクリートの乾燥が不十分だと、見えない場所でカビが繁殖する原因になります。
- クローゼット・押し入れの奥:日光が当たらず、扉を閉めたままだと空気が動かないため、収納した衣類や壁面にカビがつくことがあります。
- 浴室・洗面所の天井・換気扇周辺:新築時でも施工不良や換気不足によって、湿気が排出されずにカビが生えることがあります。
2-2. においや変色などカビ問題の初期サイン
カビは目に見えるようになる前に、においや小さな異変として現れることが多いです。以下のような症状に気づいたら、カビを疑ってみてください。
- 部屋に入った瞬間、かすかに湿ったようなにおいがする
- 壁や天井にポツポツとした黒や茶色の点がある
- 押し入れの布団や衣類にうっすらとシミがついている
- クローゼットの奥に入れたものにカビ臭がついている
- フローリングの一部が変色・浮き・めくれを起こしている
こうしたサインは、カビが広がる前に対処するための警告信号です。放置してしまうと、壁材や断熱材の奥にまでカビが根を張ってしまい、簡単には除去できない状態に進行してしまいます。
次の章では、これらのカビを放置することで起こる深刻な影響について、健康と建物の両面から解説します。
3. カビを放置することで起こる深刻な問題
新築住宅に発生したカビを「まだ少しだから」「掃除すれば大丈夫」と軽く考えて放置してしまうと、後になって深刻なトラブルを招くことになります。カビは見た目の問題だけでなく、健康被害や住宅そのものへのダメージという2つの大きなリスクを伴います。この章では、カビをそのままにしておくことでどんな影響が出るのかを詳しく見ていきましょう。
3-1. 健康被害やアレルギーのリスク
カビは空気中に**胞子や揮発性の有機化合物(MVOC)**を放出しており、私たちはそれを知らず知らずのうちに吸い込んで生活しています。これが原因で起こる健康被害として、以下のようなものがあります:
- アレルギー性鼻炎や咳・くしゃみの増加
- 喘息の悪化や発症
- アトピー性皮膚炎やかゆみ
- 頭痛・倦怠感・めまいなどの体調不良
特に、小さなお子様や高齢者、アレルギー体質の方がいる家庭では、カビの影響は非常に深刻です。新築住宅であっても「空気がなんとなく重い」「いつも鼻がムズムズする」といった感覚があれば、カビが原因の空気汚染が進行しているサインかもしれません。
3-2. 建材や住宅性能へのダメージ
カビは壁紙の表面だけでなく、下地材・断熱材・木材などの奥深くまで侵食する性質があります。放置すれば以下のような住宅への被害が進みます:
- 壁や床の内部が腐朽し、構造的な強度が低下する
- 断熱性能が落ちて結露が悪化し、さらにカビが広がる
- フローリングが浮く・変色する・剥がれるといった劣化現象が進む
- シロアリが好む湿った環境ができ、二次被害を招く
また、カビの跡が残ってしまうと資産価値の低下にもつながり、将来売却やリフォームの際に大きなマイナスになる可能性があります。新築という大きな買い物を台無しにしないためにも、早期発見・早期対処が欠かせません。
次の章では、もし実際にカビが発生してしまった場合の正しい対処法と、ハウスメーカーとのやり取りで注意すべき点についてご紹介します。
4. カビが発生したときの正しい対処法
新築住宅でカビが発生してしまったら、まず重要なのは「慌てず、正しい手順で対処すること」です。誤った方法で掃除をすると、かえってカビの胞子を広げてしまうリスクもあります。また、ハウスメーカーや工務店とのやり取り次第で、保証や対応の有無が大きく変わることも。この章では、実際にカビが見つかったときにすべき具体的な行動を解説します。
4-1. 自分でできる応急処置と注意点
軽度のカビ(壁の一部、家具の背面、表面の黒ずみ程度)であれば、自分での応急処置も可能です。ただし、以下の注意点を守りましょう:
【準備するもの】
- ゴム手袋、マスク、保護メガネ
- アルコール除菌スプレー or カビ取り剤(素材に適したもの)
- ペーパータオルや使い捨て布
【処置の手順】
- 窓を開けて換気しながら作業を開始
- カビの部分にスプレーし、数分放置
- ペーパータオルでやさしく拭き取り、使用した布は密閉して破棄
- 乾燥後、再発防止としてアルコールを軽く吹きかける
※木材や壁紙の素材によっては、塩素系カビ取り剤を使うと色落ちや劣化の恐れがあるため注意が必要です。
応急処置後もにおいが残る、再発する、見えない場所からにじみ出てくるような場合は、目に見えない範囲までカビが広がっている可能性が高く、専門対応が必要になります。
4-2. ハウスメーカーや保証制度の確認ポイント
新築住宅でカビが発生した場合は、施工会社やハウスメーカーに連絡することが最優先です。特に以下のような場合は、保証や補修の対象になる可能性があります:
- 引き渡しから数ヶ月〜1年以内に発生した
- 施工不良(断熱材の入れ忘れ、結露対策不足など)が疑われる
- 建築中の雨水混入や乾燥不良の可能性がある
連絡の際は、写真やにおいの記録、日付、発見箇所、面積などを詳細に伝え、メールや文書で残すようにしましょう。施工会社が誠意ある対応をしてくれるかどうかも、今後の信頼性を判断する材料になります。
もし対応に不満がある場合は、住宅瑕疵担保責任保険や第三者住宅検査機関への相談も検討してみてください。
5. カビの発生を防ぐために新築時からできる対策
新築住宅でのカビ発生を未然に防ぐには、「建てる前」または「引き渡し直後」の段階から対策を講じておくことが重要です。見えない場所に発生するカビだからこそ、住む前からの備えが決め手になります。ここでは、設計・設備・住まい方の3つの観点から、効果的なカビ予防策をご紹介します。
5-1. 設計・換気・断熱の工夫で予防する
まずは、設計段階からの対策がカビリスクを大幅に下げます。以下のような工夫が有効です。
【適切な断熱と結露対策】
- 壁や天井にしっかりとした断熱材を使用し、外気との温度差による結露を抑えることが基本です。
- 窓には複層ガラスや樹脂サッシを採用し、断熱性と気密性を確保しながらも、結露を最小限に抑えることができます。
【計画換気の導入】
- 第1種換気(機械で給排気するタイプ)や第3種換気(排気のみ機械)などを設計段階で選定し、湿気のこもらない空間設計を行うことがカビ防止に直結します。
- 洗面所や脱衣所など、湿気の多い空間に個別換気扇を設けるのも有効です。
【施工後の乾燥期間の確保】
- 内装工事後、引き渡しまでの間に十分な乾燥期間と換気を設けてもらうことで、施工時の水分が室内にこもるのを防げます。
5-2. 入居後に継続すべき湿度管理とチェック習慣
入居後も、湿気をためない住まい方がカビ予防の鍵になります。以下のポイントを日常に取り入れてみてください。
【湿度を「見える化」する】
- 室内に湿度計を設置し、湿度を常に50~60%以下に保つ意識を持つことが大切です。
- 湿度が高くなりやすい梅雨や冬季は、除湿機やエアコンの除湿モードを活用して調整しましょう。
【通気を意識した収納・家具配置】
- クローゼットや押し入れの扉を定期的に開けて空気を入れ替える。
- 家具は壁から数cm以上離して設置し、空気の通り道をつくることで、カビの温床をつくらないようにします。
【定期的な目視チェック】
- 月に1回程度、壁のすみ・収納内部・窓際の結露をチェックして、異変を早期に察知できるようにしましょう。
- 「なんとなくにおう」「なんとなく湿っている」と感じたときは、すぐに調査する習慣をつけることが大切です。
一般社団法人 微生物対策協会とは
一般社団法人 微生物対策協会は、住宅や建物内に発生するカビの検査と対策を専門的に行う団体です。現代の高気密・高断熱住宅では、見えないところでカビが発生しやすく、それによる健康被害や建物の劣化が社会的な問題になりつつあります。当協会は、そうした住環境のリスクを**「見える化」**し、より健全で安全な暮らしを守るために設立されました。
活動の根拠は、平成27年に施行された**「アレルギー疾患対策基本法」**にあります。この法律では、アレルギーを悪化させる要因の一つとして生活環境、特に建築構造や室内環境の改善が求められており、当協会はこれを具体的な行動として実践しています。
当協会の主な目的と活動
- 室内や車内に浮遊するカビ・微生物の調査・測定(見える化)
空気中には目に見えないカビ菌や細菌が存在しています。当協会では、専用の機器と分析方法を用いて、それらを測定し、数値で可視化します。 - カビの被害状況の把握とリスク評価
目に見えるカビだけでなく、壁の裏側や天井内部などの隠れカビまで調査し、カビがどれほどのリスクを持っているかを評価します。 - 公衆衛生の向上と啓発活動
住宅だけでなく、宿泊施設・学校・医療機関など、空気環境が重要な場所に向けて、啓発や対策指導を行い、保健医療・福祉・環境保全の一助となることを目指しています。
なぜ「カビの見える化」が必要なのか?
カビは空気中を浮遊していて、目に見えない段階でも健康に影響を与えることがあります。落下したカビ菌は、適切な温度と湿度さえあれば簡単に定着・繁殖し、アレルギー症状や体調不良の原因になります。
「見えないから大丈夫」ではなく、「見えないからこそ調べておく」ことが、現代の住環境では求められているのです。当協会では、カビの種類・濃度・リスク評価まですべて数値で明確にし、必要な対策をご提案しています。