2025/07/27
新築やリフォーム直後でも、内装材からカビが発生するケースが増えています。
【記事を読んで分かること】内装材の種類ごとのカビリスク、原因、対策方法までが明確にわかります。
【記事を読むメリット】見えないカビ被害を未然に防ぎ、健康と住環境を守るための知識が得られます。
1. なぜ内装材にカビが発生するのか?
新築住宅やリフォーム直後のきれいな室内でも、「なんだかカビ臭い」「壁にシミができている」といった問題が発生することがあります。その原因は、見えないところで内装材にカビが繁殖している可能性があるためです。ここでは、内装材にカビが発生する主な理由を2つの観点から解説します。
1-1. 内装材の素材と湿気がカビの原因になる
カビは、**湿度・温度・栄養源(有機物)**がそろうことで簡単に繁殖します。そして、内装材の多くはこの条件を満たしてしまうのです。
たとえば、壁紙(クロス)は多くの場合、紙やビニール素材+接着剤で構成されています。これらの材料にはカビの栄養源となる有機物が含まれており、湿気を吸いやすい性質もあります。また、合板や石膏ボードといった建材も湿気を吸収しやすく、内部に水分がこもるとカビが根を張ってしまいます。
特に新築や改装後は、建材や接着剤に含まれる水分が乾燥しきっていない場合が多く、湿気の多い時期や通気の悪い場所ではカビの温床となりやすいのです。
1-2. 施工不良や換気不足もカビの一因に
素材そのものだけでなく、施工段階での問題やその後の換気不良も、カビの発生を引き起こす大きな要因です。
例えば、工事中に雨に濡れたままの建材を使用したり、乾燥不十分の状態で仕上げた場合、その湿気が閉じ込められてしまい、後にカビが発生します。また、断熱材や防湿シートの施工ミスにより、室内外の温度差から結露が発生し、壁内部に水分がたまるケースも少なくありません。
さらに、高気密化された住宅では、自然な空気の流れが弱まりがちです。24時間換気が機能していない、家具を密着させている、クローゼットの扉を長期間閉めたままにするなど、空気が動かない場所には湿気がこもり、カビが発生しやすくなります。
2. カビが発生しやすい内装材の特徴とは
すべての内装材が同じようにカビやすいわけではありません。実は、使われている素材の種類や構造、含水率、表面加工の有無によって、カビの発生リスクは大きく異なります。ここでは、カビが発生しやすいとされる内装材と、その理由をわかりやすくご紹介します。
2-1. 壁紙・合板・断熱材などのリスクが高い素材
まずは、住宅によく使われる内装材の中でも、カビが発生しやすい代表例をご紹介します。
【壁紙(クロス)】
紙素材のものや、表面がビニールでも裏打ちが紙の場合は湿気を吸収しやすく、カビが好む条件が揃いやすくなります。また、壁紙を貼る際の糊(のり)や接着剤が有機成分を含んでいるため、カビの栄養源にもなります。
【合板・ベニヤ板】
木材を薄く加工した合板は、湿気を吸いやすく内部に水分がこもりやすい素材です。表面が見た目には乾いていても、内部に湿気が残っていると、目に見えないところでカビが発生し、腐食や変形の原因になります。
【断熱材(グラスウール・ロックウールなど)】
基本的に無機質な断熱材自体にはカビはつきにくいですが、ホコリや湿気が内部にたまることでカビが生える土壌になります。施工が不十分で空気が滞留していると、内部結露が発生し、カビが繁殖する危険があります。
2-2. 自然素材でも油断できない理由
一見「体にやさしそう」「通気性が良さそう」と思われがちな自然素材の内装材ですが、実はカビに弱い一面もあります。
【無垢材(天然木)】
調湿性が高く、環境にやさしいとされる無垢材ですが、湿気を多く吸収しやすいという性質もあります。通気が不十分だったり、乾燥が足りないまま施工されると、内部にカビが発生する可能性が高まります。
【珪藻土や漆喰の壁】
これらは調湿効果があると言われていますが、表面が汚れていたり、施工後に水分を含んだまま密閉された空間になるとカビが発生することも。特に、安価な調湿壁材の中には、調湿性が低かったり、防カビ処理がされていない製品もあるため注意が必要です。
3. 内装材にカビが生えると起こる問題点
「カビぐらい、掃除すればなんとかなる」と思っていませんか?
しかし、内装材にカビが生えると、見た目の不快感だけでなく、健康被害や建物の性能劣化など、長期的に深刻な影響をもたらします。この章では、内装材に発生したカビを放置することで生じる2つの大きな問題について解説します。
3-1. 健康被害とアレルギーリスク
カビは、表面に見える黒ずみだけでなく、空気中に胞子や微細な化学物質(MVOC)を放出します。これらは呼吸とともに体内に入り、以下のような健康被害を引き起こします。
- アレルギー性鼻炎、咳、喉の痛み
- 喘息の悪化、息苦しさ
- 皮膚のかゆみや湿疹、アトピーの悪化
- 慢性的な倦怠感、頭痛、集中力の低下
特に小さなお子さまや高齢者、アレルギー体質の方にとっては、カビの影響が顕著に現れます。見えない場所のカビでも、空気環境全体に影響を及ぼすため、「においがする」「体調がすぐれない」といった違和感があれば注意が必要です。
3-2. 建材の劣化と修繕コストの増加
内装材にカビが発生したまま放置すると、建材の寿命を大きく縮めてしまうことになります。
たとえば…
- 壁紙の裏や合板にカビが根を張ると、内部が腐食し、剥がれや浮きが生じる
- フローリング材の下地にカビが広がると、床がきしむ・へこむ・反るといった変形が発生
- 湿気による断熱材の機能低下や結露再発により、住宅の断熱性が著しく低下
これらはすべて、大がかりな補修工事や張り替えが必要になり、費用と時間がかさむ原因となります。
また、住宅の価値にも悪影響があり、将来の売却時やリフォーム時に「カビの履歴」が問題視されるケースも少なくありません。
4. カビを防ぐために内装材選びで意識すること
内装材は見た目や価格だけで選びがちですが、実は「カビに強いかどうか」もとても大切な選定基準です。素材や表面処理によって、カビの発生しにくさは大きく変わります。この章では、カビ対策として効果的な内装材の選び方と、取り入れたい機能性素材について詳しくご紹介します。
4-1. 防カビ・抗菌加工された素材を選ぶポイント
近年では、あらかじめ防カビ・抗菌処理が施された内装材が多く流通しています。特に以下のような素材や加工に注目しましょう:
【壁紙(クロス)】
- 防カビ性能を表示した製品(JIS規格合格品など)を選ぶ
- 接着剤も防カビタイプを使用してもらうよう依頼する
- できれば通気性のあるタイプを選び、湿気を逃がす設計にする
【床材・フローリング】
- 抗菌加工された塗装仕上げの製品を選ぶ
- 合板のフローリングでは、接着剤の品質や含水率の低さも重視
【天井材・建具】
- 湿気がたまりやすい水まわりや北側の部屋には、防湿性・防カビ性を強化した建材を使うと安心です
防カビ加工がされていても、施工方法や換気環境が悪ければ効果は半減します。素材選びとあわせて、空気の流れや湿気の逃げ場も意識した設計が必要です。
4-2. 湿度調整機能を持つ建材の活用法
カビ対策としてもう一つ効果的なのが、調湿機能のある内装材をうまく取り入れることです。これにより、室内の湿気を自然にコントロールすることができ、結露やカビの発生リスクを下げられます。
【おすすめの調湿建材】
- 珪藻土や漆喰:多孔質構造により、余分な湿気を吸収・放出する機能がある
- エコカラットなどの機能性壁材:高い調湿性に加えて、においや有害物質の吸着機能も持つ
- 調湿石膏ボード:壁や天井に使いやすく、建材としての強度も高い
これらの素材は、北側の部屋や収納内部、寝室など湿気がこもりやすい場所に使うと効果を発揮します。施工費はやや高めですが、カビ被害による修繕費と比べれば、先行投資として十分な価値があるといえるでしょう。
5. 内装工事前後に行いたいカビ対策
カビの発生は、素材選びだけで防げるものではありません。施工中の湿気管理や換気の徹底、完成後のメンテナンスなど、建築プロセス全体にわたる管理が不可欠です。この章では、内装工事の前後に行っておきたい具体的なカビ対策を、実践的な視点で解説します。
5-1. 施工中の湿気管理と換気の重要性
内装工事中の現場は、建材の水分や作業時の湿気が大量に発生するため、カビにとっては非常に好ましい環境です。この時期の対策が不十分だと、見えない場所にカビが発生してしまう可能性が高まります。
【実践ポイント】
- 雨天時に濡れた建材を乾燥させずに使わない
- 石膏ボードや合板は、含水率が低い製品を選定し、現場でも保管状態を徹底する
- 壁紙を貼る前に、室内の湿度を50~60%以下に下げておく
- 作業中は窓開けや送風機を使いながら換気を行う
また、工期が押している現場ほど乾燥不足が起こりやすいため、建築会社や工務店には「湿気管理とカビ対策を重視してほしい」と事前に伝えておくことが大切です。
5-2. 完成後に行うチェックと定期的なメンテナンス
建物が完成して入居する段階では、すでにカビの兆候が潜んでいる可能性もあります。早期発見・早期対処ができれば、深刻な被害になる前に食い止めることが可能です。
【入居前後のチェックリスト】
- 壁や天井のすみ、収納内部に黒ずみやシミがないか確認
- クローゼットや押し入れのにおいや湿度のこもり具合をチェック
- 窓の結露やサッシまわりの状態を確認し、換気のしやすさもチェックする
入居後も、除湿器の使用や換気扇の活用、家具の配置に配慮して湿気がこもらない生活を心がけましょう。特に梅雨や冬季は、湿度管理の意識を高めることがカビ予防の要となります。
一般社団法人 微生物対策協会とは
一般社団法人 微生物対策協会は、住宅や施設におけるカビの検査と対策を専門とする機関です。目に見えないカビや微生物が引き起こす健康被害や建物の劣化などの問題に対処し、安心して暮らせる住環境づくりを支援しています。
当協会の設立は、平成27年に施行された**「アレルギー疾患対策基本法」**に基づいています。この法律では、アレルギーの予防と症状の軽減を目的として、建築構造や生活環境の改善が推奨されており、当協会はそれを実現するための具体的な活動を展開しています。
活動の柱は「カビの見える化」と「環境改善」
私たちが最も重視しているのは、空気中に漂う微生物やカビを**“見える化”することです。空気には目に見えないカビ胞子や細菌が存在しており、それが健康や建物にさまざまな悪影響を及ぼす可能性があります。
協会では、専用の測定機器や分析手法を用いて、空気中の浮遊菌の種類・濃度・リスク評価**を行い、住まいや施設の空気環境を数値で明確にします。
安心・安全な住環境のために
当協会では、以下のような目的と活動を通じて、社会の健全な住環境づくりに貢献しています:
- カビの発生状況を正確に把握し、対策につなげる調査と報告
- 空気環境の改善による健康維持と予防医療の推進
- 住宅・宿泊施設・保育園・医療機関などへの啓発と支援活動
- 公衆衛生や環境保全への寄与
特にカビは、建物内で最も多く確認される微生物被害であり、その被害範囲は壁紙の裏や床下、天井内部など目に見えない場所にも広がっています。
放置すれば、アレルギー症状や呼吸器疾患の引き金になるだけでなく、住宅の寿命を縮める原因にもなります。
ご相談・検査はお気軽に
カビや空気のにおいが気になる方、体調不良が空間のせいではないかと不安に感じている方は、ぜひ一度ご相談ください。
「見えないものを、見えるかたちに」
私たち一般社団法人 微生物対策協会が、安心・安全な住まいづくりをお手伝いいたします。