2025/09/28
土壁にカビが生えてしまったけど、どうやって対処していいのか分からないという声が多く聞かれます。
【記事を読んで分かること】
土壁にカビが発生する原因、注意すべき掃除方法、再発を防ぐポイントまでが理解できます。
【記事を読むメリット】
繊細な土壁を傷めずにカビ対策ができ、健康と建物を守る正しい知識と対応が身につきます。
1. 土壁にカビが生える原因とは?
日本の伝統的な住宅や和室に多く使われている「土壁」は、自然素材でできているため、環境にやさしく調湿性にも優れています。しかし、その一方でカビが生えやすいという弱点もあります。特に湿度の高い季節や、換気の悪い空間では、土壁が持つ性質が逆にカビの温床となってしまうのです。この章では、土壁とカビの関係性、そしてカビが生える環境について詳しく解説します。
1-1. 土壁の素材特性とカビの関係性
土壁は、主に「土・藁すさ・石灰・砂」などの天然素材を組み合わせて作られています。これらの素材はすべて、微細な孔(あな)をたくさん持っており、空気中の水分を吸収・放出する「調湿機能」を持っています。この調湿性が、夏はジメジメを緩和し、冬は乾燥を防ぐというメリットをもたらしています。
しかし、湿気を吸収したままの状態が続くと、壁の内部が常に湿った状態になりやすくなります。そして、そこにホコリや皮脂、花粉などの栄養源が付着すると、カビが繁殖する絶好の環境が整ってしまうのです。
特に問題となるのは、雨漏りや結露、水回りに近い場所の壁です。これらの場所では土壁が吸収できる湿気の量を超え、長期間にわたって湿潤な状態が続くため、カビが定着しやすくなります。また、土壁は表面がざらついており、胞子が付着しやすいのも要因のひとつです。
1-2. 湿度・通気・環境による影響とは
土壁のカビ発生は、湿度や通気、室内環境によって大きく左右されます。まず、カビが最も活発に繁殖するのは湿度70%以上。梅雨や秋の長雨、冬の結露が続く季節には、室内の湿度が上がりやすく、土壁も水分を多く含んでしまいます。
さらに、通気性の悪い場所では、土壁が吸収した湿気を外に放出できず、常に壁の内部がジメジメとした状態になります。押し入れの中や家具の背面、角部屋の壁など、空気の流れが少ない部分は特に注意が必要です。
また、土壁のある家の中でも、北向きの部屋や1階部分は湿気がこもりやすく、カビの発生リスクが高まります。日光が当たりにくい場所では壁が乾燥しにくいため、自然とカビが繁殖しやすくなってしまうのです。
これらのことから、土壁の性質をよく理解し、「湿気・通気・温度」のバランスを整えることが、カビの発生を防ぐための基本となります。
2. 土壁のカビを放置するとどうなる?
「少しカビてるけど、見た目が気になるほどじゃないし…」と、そのまま放置してしまう方も少なくありません。しかし、土壁に発生したカビを放っておくと、思わぬ健康被害や建物への深刻なダメージにつながることがあります。この章では、土壁のカビを無視したときに起こりうる具体的なリスクについて解説します。
2-1. 健康への影響とアレルギーリスク
土壁に生えたカビは、空気中に目に見えない**胞子や化学物質(MVOC)**を放出します。これらが室内に拡散すると、呼吸と一緒に体内に取り込まれることになり、以下のような健康被害が起こる可能性があります。
- 鼻炎、咳、喉の違和感
- 皮膚のかゆみや湿疹
- アレルギー症状(くしゃみ・鼻水・目のかゆみ)
- 気管支喘息の悪化
- シックハウス症候群のような症状
特に免疫力の低い高齢者や子ども、アレルギー体質の方は影響を受けやすく、**「家にいると体調が悪くなる」**と感じる場合は、カビの影響を疑うべきです。土壁は自然素材のため、湿気と一緒に胞子が壁内部に吸い込まれて蓄積されやすく、見た目で気づきにくいのが厄介な点です。
2-2. 建物や壁内部へのダメージの進行
カビの影響は、健康だけでなく建物そのものにも深刻な被害を与えます。土壁の奥までカビが浸透すると、壁材の劣化が進み、強度が低下します。表面を掃除して一時的に見えなくなっても、内部に根を張ったカビは再発しやすく、放置すればするほど被害が広がっていきます。
さらに、壁の下地が木材や竹などの自然素材でできている場合、カビとともに腐朽菌(ふきゅうきん)も繁殖し、建材の腐敗が進行する恐れがあります。これは、土壁全体の崩れや剥がれにつながり、リフォームや修復に高額な費用がかかってしまうことも。
特に築年数の経った家屋では、土壁の構造そのものがデリケートであるため、小さなカビでも早期の対処がとても重要です。見た目に現れない部分でも劣化が進行している可能性があるため、軽視せずに対処することが家を長持ちさせるポイントです。
3. 土壁のカビ除去における注意点
土壁にカビが発生した場合、「とにかく取らなきゃ!」と慌てて市販の洗剤やカビ取り剤を使ってしまう方も少なくありません。しかし、土壁は非常に繊細な素材のため、誤った方法で掃除すると逆に壁を傷めたり、カビの再発を招いてしまうことがあります。この章では、カビ除去時にやってはいけないことと、土壁に適した安全な掃除法について解説します。
3-1. 市販のカビ取り剤は使っていい?NGな対処法とは
一般的なカビ取りに使われる塩素系漂白剤(カビキラーなど)は、確かに強力な除菌・漂白効果がありますが、土壁には絶対に使ってはいけません。その理由は以下の通りです:
- 成分が土壁に染み込む:土壁は多孔質(小さな穴が多数ある構造)であるため、液体がどんどん内部に吸い込まれてしまいます。塩素成分が奥に残留すると、壁材が劣化する原因になります。
- 色ムラや変色のリスク:漂白作用により、土壁本来の色が抜けてしまい、見た目が汚くなる場合があります。
- 粉落ち・剥がれの原因に:強い薬剤の刺激で、表面の土がパラパラと崩れ落ちてしまうことがあります。
また、ブラシでゴシゴシこすったり、水を大量に使うのもNGです。摩擦や水分で土が剥離しやすくなり、カビどころか壁そのものを壊してしまう危険性があります。
3-2. 土壁に適した安全なカビ除去方法
土壁のカビ対策では、**「できるだけ乾いた方法で、やさしく行う」**が基本です。以下のような方法を順を追って試すとよいでしょう。
- 乾いた柔らかいブラシや布で、カビを軽く払う
表面に付着しているカビなら、これだけで十分落ちる場合があります。壁を傷めないように優しく払うことが大切です。マスクと手袋を着用して、胞子の吸い込みにも注意しましょう。 - アルコールを使って除菌(※軽く拭く程度に)
消毒用エタノール(70%前後)を乾いた布に染み込ませ、カビがあった部分を「ポンポン」と軽くたたくように除菌します。決して強く擦らず、染み込ませないように気をつけましょう。 - よく乾燥させる
カビの再発を防ぐには、掃除後にしっかり乾かすことが重要です。風通しを良くし、可能なら扇風機や除湿機で壁の湿気を飛ばします。
それでもカビが広範囲にわたっている場合や、何度も同じ場所に発生する場合は、無理に自力で対応せず、専門業者への相談を検討しましょう。特に土壁の場合、構造や素材の状態によって適切な処置が異なるため、専門知識のあるプロの判断が安心です。
4. 土壁のカビを防ぐための予防対策
カビは、一度発生してしまうと除去に手間がかかるうえ、完全に除去しきれないこともあります。特に繊細な土壁にとっては、「発生させないこと」=予防が最も重要な対策となります。この章では、カビを寄せつけないための日常的な湿気対策や、防カビアイテムの活用方法について詳しくご紹介します。
4-1. 日常でできる湿気対策と換気の工夫
土壁は呼吸する壁とも言われ、湿気を吸収・放出する性質がありますが、常に湿った状態が続くとカビの温床になってしまいます。日常的な湿気管理が、最も有効なカビ予防法です。
まず意識したいのが換気の徹底です。特に雨の日が続いた後や、冬の結露が多い季節は、湿気がこもりやすいため要注意。以下のような換気方法を取り入れましょう:
- 毎朝10~15分ほど、窓を2か所以上開けて空気を通す
- 湿気がこもりやすい押し入れ・収納スペースも定期的に開ける
- 雨の日や冬でも、除湿機や換気扇で空気を循環させる
また、家具を壁にぴったりつけないことも大切です。壁と家具の間に空気が通らないと、湿気が溜まりやすく、土壁にカビが発生する原因になります。家具は壁から5〜10cmほど離して配置するのが理想的です。
加えて、洗濯物の室内干しや、加湿器の使いすぎなども土壁の湿度を上げてしまうため、使い方には注意が必要です。
4-2. 防カビ剤や調湿素材の活用方法
湿気対策に加えて、防カビ効果のあるアイテムを上手に活用することで、土壁をより長く清潔に保つことができます。以下は土壁との相性が良い対策方法です。
▶ 防カビスプレー(天然成分タイプ)
化学薬品を含まない、エタノールや柿渋、ティーツリーオイルなどの天然由来の防カビスプレーは、土壁に使用しても比較的安全です。カビの生えやすい場所に、2~3か月に1回の頻度で使用することで、胞子の発芽を抑制できます。
▶ 炭・珪藻土・調湿材
土壁と同様に調湿効果のある炭や珪藻土グッズも、湿気のこもる場所に置いておくだけで空気中の水分を吸収し、カビのリスクを軽減できます。押し入れや和室の隅、家具の裏などに設置すると効果的です。
▶ 除湿剤の配置
市販の除湿剤(タンクタイプなど)は、湿気が多くカビの温床になりやすい場所で力を発揮します。土壁のすぐ近くに直接触れさせず、空間の湿度をコントロールする目的で活用しましょう。
これらのアイテムを活用しつつ、こまめな換気と清掃を心がけることで、土壁のカビ発生リスクをぐっと抑えることができます。
5. カビが繰り返す場合の相談先と対処法
どれだけ掃除しても、除湿しても、何度も同じ場所にカビが発生する…。そんなときは、目に見えない場所で問題が深刻化している可能性があります。土壁の場合は、表面だけの対処では根本的な解決にならないことが多く、専門家の力を借りることが重要です。この章では、カビが繰り返す理由と、相談すべきタイミング、そして依頼時のポイントについて解説します。
5-1. カビ検査や専門家による調査の重要性
繰り返すカビには、「目に見えない原因」が必ずあります。たとえば、以下のような状態です:
- 壁の内部にまでカビが侵食している
- 結露や水漏れが構造の中で発生している
- 換気や断熱が不十分で、湿気がこもりやすい設計になっている
こういった問題は、表面的な掃除ではどうにもならず、建物の構造レベルでの調査と対策が必要になります。特に土壁は素材的に水分を吸いやすく、内部でカビが繁殖している可能性もあるため、空気中のカビの量や湿度の状態を「見える化」する検査が効果的です。
たとえば、微生物対策協会のような専門機関では、カビの有無だけでなく、どの種類のカビがどれくらい発生しているのか、という「詳細な分析」が可能です。これにより、再発の原因を科学的に突き止め、的確な処置がとれるようになります。
5-2. プロに依頼する際のポイントと費用相場
カビ除去を専門業者に依頼する際には、いくつかのポイントを確認しておきましょう:
- 土壁や自然素材に対応した実績があるか
土壁は扱いが難しいため、一般的な業者では対応できないこともあります。施工例や事例があるかを事前に確認することが大切です。 - 使用する薬剤や方法が壁材に適しているか
化学薬品ではなく、低刺激で素材にやさしい薬剤を使用する業者を選ぶことで、壁へのダメージを最小限に抑えることができます。 - 費用の目安と対応範囲
費用はカビの広がり具合や調査内容によって異なりますが、簡易検査+除去作業で3〜10万円前後が目安となります。調査・測定だけなら数千円〜1万円程度のケースもあります。
カビの再発を繰り返している場合、自己対処を続けるよりも、早めにプロに依頼した方が時間的・経済的にも効率が良いことが多いです。特に住まいの健康を守りたい方にとっては、正しい知識と専門的なアプローチが大きな安心につながります。
一般社団法人 微生物対策協会とは
一般社団法人微生物対策協会は、「カビの検査と対策」に特化した専門機関です。カビによる健康被害や建物の劣化といった問題に対し、室内空気の「見える化」を通じて、誰もが安心して暮らせる健全な住環境の構築を目的に活動しています。
当協会の取り組みは、平成27年に施行された「アレルギー疾患対策基本法」にもとづいており、この法律では、アレルギー症状の予防や緩和のために生活環境や建築構造の改善が求められています。私たちはこの法的背景をもとに、科学的かつ実践的なカビ対策を行っています。
主な活動内容は、空気中に浮遊する微生物やカビの調査・検査です。私たちが日常的に吸い込んでいる空気には、目に見えない汚染物質が多く含まれています。協会では、専門の測定機器を用いてそれらを数値化し、カビの有無や種類、濃度を**「見える化」**することで、根本的な原因の特定と効果的な対策を可能にします。
建物内における微生物の被害の多くはカビによるものであり、その中には目に見えるものもあれば、壁内部や空気中など目に見えない場所に潜むカビも存在します。落下したカビの胞子は自然には死滅しにくく、適切な対処がなければ被害が広がる可能性があります。
こうした背景から、微生物対策協会では、見た目では判断できないリスクを正確に評価し、住まいや職場、公共施設などあらゆる空間での安全・安心な環境づくりを支援しています。カビのことでお困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。