2025/10/03
【注意】基礎断熱なのにカビが発生?換気システムで見落としがちな落とし穴
基礎断熱と換気システムを導入したのに、なぜかカビが発生するというトラブルが増えています。
【記事を読んで分かること】
基礎断熱と換気の仕組み、設計時の注意点、カビ発生のメカニズムと対策方法がわかります。
【記事を読むメリット】
新築・リフォームの際にカビのリスクを回避し、快適で健康的な住まいを実現する知識が得られます。
1. なぜ基礎断熱でカビが発生するのか?
「基礎断熱にしたらカビが生えた…」という声は、近年、住宅業界でもよく聞かれるようになってきました。本来、基礎断熱は断熱性を高めて快適な住環境を実現するための工法です。しかし、その施工や運用を誤ると、床下や壁内に湿気がこもり、カビの温床になる可能性があるのです。ここでは、基礎断熱がなぜカビと関係してくるのか、その背景と理由を解説します。
1-1. 基礎断熱の仕組みとカビが発生しやすい理由
基礎断熱とは、床下ではなく建物の基礎部分(コンクリート)自体を断熱する方法です。外気の影響を受けにくくなることで、冬場でも床が冷えにくくなり、断熱効果が高まるとされています。加えて、床下空間を屋内と一体化させることで、空調効率を上げるというメリットもあります。
しかし、その分、気密性が高まりすぎると床下に湿気がたまりやすくなるリスクがあります。本来なら床下に流れていた空気の循環が断たれ、湿気が逃げ場を失って滞留するのです。とくに、土間コンクリートの湿気が基礎内に上がってきたり、生活で発生した水蒸気が床下に流れ込んだりすると、わずかな湿気が蓄積されてカビの発生源となります。
基礎断熱には多くのメリットがありますが、湿気対策がセットでなければ、快適性どころか健康リスクの原因になってしまうのです。
1-2. 床下の湿気がこもるメカニズムとは
基礎断熱を施した住宅では、床下空間は「室内と同じ扱い」になります。つまり、通常の通気口を設けない構造になることが多いため、空気の流れが極端に少なくなるのです。ここでポイントとなるのが、床下に発生する「湿気の発生源」です。
一つは、地面からの湿気上昇です。基礎コンクリートは見た目には硬くても、実は水蒸気を通しやすい性質があるため、土壌からの湿気がじわじわと上がってきます。もう一つは、室内の水蒸気の流入。キッチンや浴室、洗濯などで発生した湿気が床下に流れ込むと、それが外に逃げずに留まってしまいます。
加えて、床下の温度は外気に比べて一定に保たれやすいため、湿気が冷やされて結露を引き起こすリスクも高まります。この結露が床下の断熱材や木材に付着すれば、そこからカビが広がっていきます。
つまり、基礎断熱では「湿気を出さない設計」と「湿気をこもらせない運用」の両方が求められるということです。どちらかが欠けると、知らないうちにカビが静かに繁殖しているという事態になりかねません。
2. 換気システムがあるのにカビが生える理由
近年の住宅では、24時間換気システムや全館空調が導入されていることが一般的になってきました。そのため、「換気しているからカビは発生しないはず」と考える方も多いです。しかし、実際には換気システムが稼働していても、床下や壁内にカビが発生してしまう事例が後を絶ちません。この章では、なぜ換気システムが機能しているのにカビが発生するのか、その理由を解説します。
2-1. 換気システムの種類と特徴を理解する
住宅の換気システムには主に3つのタイプがあります。
- 第1種換気:給気・排気の両方を機械で行うタイプ。最も制御性が高いが、導入コストが高い。
- 第2種換気:給気のみを機械で行い、排気は自然に任せる方式。気密性が高い施設に向くが、住宅には不向き。
- 第3種換気:排気のみを機械で行い、給気は自然吸気口から取り入れる方式。一般的な住宅に最も多く使われる。
ここで注意すべきなのは、どのシステムも「床下の換気まではカバーしていない」ケースが多いということです。特に基礎断熱構造の場合、床下が“室内扱い”となるため、換気経路が省略されがちです。つまり、リビングや寝室の空気はしっかり換気されていても、床下や壁の中に空気の流れが届いていないということが起こりえるのです。
また、換気システムはあくまでも「空気の入れ替え」を目的としており、湿度の調整までは行っていないのが通常です。そのため、空気の流れはあっても、湿気が高ければカビの原因は残ったままになってしまいます。
2-2. 換気が機能しない原因と見直しポイント
「換気システムがあるのにカビが生える」という場合、考えられる原因はいくつかあります。
まず多いのが、設計段階での換気経路の不備です。特に、床下や収納の奥まった場所、ユニットバス裏、壁内などは換気の流れが届かず、空気が滞留しやすい「死角」となります。こうした場所に湿気がこもると、気づかないうちにカビが発生してしまうのです。
また、換気システムのメンテナンス不足も大きな要因です。フィルターが詰まっていたり、ファンが正常に動いていなかったりすると、本来の換気性能が発揮されません。とくに新築から数年経過した家では、掃除や点検がされていないことが多く、実質的に「機能していない換気システム」になっているケースもあります。
さらに、生活習慣によって湿度が高くなるタイミングに換気が追いつかないという問題もあります。たとえば、冬場の入浴後に浴室のドアを開け放してしまったり、洗濯物を室内干しする頻度が高かったりすると、換気だけでは湿度が下がりきらず、カビの原因になることがあります。
重要なのは、換気システムの存在に安心せず、**「本当に空気が流れているか」「湿度は適切に管理されているか」**を定期的に確認することです。
3. 基礎断熱×換気設計のよくある失敗例
基礎断熱は、断熱性能を高めるとともに床下の空間を室内と一体化する先進的な工法ですが、換気システムとの相性や設計の工夫が不十分だと、カビのリスクを高める原因にもなります。特に新築住宅では「高気密・高断熱」が重視されるあまり、湿気が逃げにくくなり、見えない部分でトラブルが起きるケースも多く見受けられます。この章では、基礎断熱と換気の組み合わせで起こりがちな設計ミスとその実例をご紹介します。
3-1. 通気不足・気密過剰による湿気トラブル
高性能な住宅にしようと意識しすぎて、気密性を高めることに注力しすぎると、湿気の逃げ場がなくなるという落とし穴にはまりやすくなります。特に基礎断熱では、床下を室内と同じ空間と見なすため、従来の床下換気口がなくなり、通気が極端に減ります。
この状態で、適切な換気設計がされていないと、湿気がこもったままの「密閉空間」が床下にできてしまいます。たとえば、以下のような失敗事例があります:
- 設計段階で床下の換気経路が考慮されておらず、カビ臭が数か月後に発生
- 土壌からの湿気を遮る防湿シートやコンクリートの施工が不十分で、床下に湿気が充満
- 家族が増えて生活湿気が多くなったのに、換気量が不足して対応できていなかった
これらのケースでは、湿気のこもり方がゆっくり進行するため、発見した時には被害が拡大していることが多いのです。特に、冬場は冷気との温度差で結露も起こりやすくなり、さらにカビが増殖する原因となります。
3-2. 設計ミスで起こる“見えないカビ”の怖さ
住宅のカビ問題で特に厄介なのは、見えない場所で静かに繁殖するケースです。基礎断熱と換気の設計ミスがあると、壁の内側、床下、ユニットバスの裏側など、目に見えない部分にカビが広がってしまいます。
実際の失敗例では、新築からわずか2年で、
- 壁紙の表面に黒い斑点が浮き上がってきた
- 押し入れ内部がカビ臭くなり、荷物が変色していた
- ユニットバス下部からカビ臭が上がってきて、住人がアレルギー症状を訴えるようになった
というような被害が出ています。これらはすべて、換気や断熱の**「見えない部分」の対策不足**が原因です。
さらに怖いのは、カビが構造材や断熱材にまで達すると、建物の寿命そのものを縮める恐れがあることです。見えない場所だからこそ、設計段階での細かい配慮と、完成後の定期的な点検が欠かせません。
4. カビを防ぐために知っておくべき注意点
基礎断熱+換気システムは、住宅性能を向上させるための重要な技術ですが、その正しい理解と運用がなければ、カビのリスクを増大させる要因にもなりかねません。住まいの快適性と健康を守るために、設計段階・施工後のそれぞれで押さえておきたい注意点を具体的に解説します。
4-1. 湿度センサーや点検口の設置でリスク軽減
まず設計段階での重要なポイントが、湿度の「見える化」と定期点検を前提にした設計です。基礎断熱住宅では床下空間も“室内扱い”になるため、湿度がこもりやすく、異変に気付きにくいという特徴があります。そこで効果的なのが、湿度センサーの設置です。
床下や壁の中など、目に見えない部分にセンサーを設置しておけば、日々の湿度変化をモニタリングでき、湿度が高くなりすぎたタイミングで迅速に対応することが可能になります。スマートホーム機能と連携すれば、アプリで通知を受け取ることもでき、より安心です。
加えて、点検口の設置場所にも注意が必要です。点検がしづらい設計だと、いざ異常を感じた時に対応が遅れます。点検口は、床下の複数箇所に設け、施工後でも点検・通気・メンテナンスが容易に行えるよう配慮しましょう。
こうした「将来的なメンテナンスを前提にした設計」は、長期的な住宅の健康管理につながります。
4-2. 施工後の定期点検とメンテナンスの重要性
どれほど完璧な設計・施工をしても、住み始めてからの湿気・温度・生活環境の変化により、予期せぬカビが発生するリスクはゼロではありません。だからこそ、施工後の定期的な点検とメンテナンスがカギを握ります。
特に注意したいのは以下のようなタイミングです:
- 梅雨時期や冬の結露が増えるシーズン
- 引っ越し直後(家具の配置による通気の変化)
- 家族構成の変化(湿気の発生量が変わる)
これらの時期には、床下の湿度、換気扇の動作確認、排気経路の清掃などを実施し、常に換気が正常に機能しているかをチェックしましょう。排気口の埃や汚れは、換気効率を大きく下げる原因になります。年に1回は、専門業者にメンテナンスを依頼するのもおすすめです。
また、生活習慣も見直しのポイントです。室内干しの頻度が高い、長時間お風呂のドアを開けっ放しにする、加湿器を使いすぎているなどの行動は、換気システムだけでは処理しきれない湿気を生み出す可能性があります。
「湿気を出さない・湿気をこもらせない」両方の視点から、日常的に意識を持ち続けることが、カビ対策の基本です。
5. プロが教えるカビ対策の最適な住まい設計とは
カビを本気で防ぎたいなら、「断熱」や「換気」だけに注目するのではなく、住宅全体のバランス設計が不可欠です。プロが推奨するのは、“気密・断熱・換気”の3要素がかみ合った設計。そして、入居後の暮らし方やメンテナンスも見据えた「住み続けて健康を守れる家」の考え方です。この章では、カビの発生を最小限に抑えるための設計上の工夫と、専門家によるサポートの活用法を解説します。
5-1. 換気・断熱・気密のバランスが最重要
住宅性能を高めようとすると、「断熱性能の強化」や「気密性の向上」に目が行きがちです。確かにそれらは快適性や光熱費削減に貢献しますが、バランスを欠くとカビの温床を生み出すリスクも伴います。
たとえば、断熱・気密性能だけを高めて換気が追いつかない設計にしてしまうと、湿気の逃げ場がなくなり、壁内結露や床下結露を招いてしまいます。逆に、換気だけを重視しすぎると、冬場は過乾燥や冷気の流入により不快な室内環境になりかねません。
理想は、以下のようなトータルバランスです:
- 断熱性…室内の温度変化を最小限に抑えることで、結露発生を防ぐ
- 気密性…隙間からの外気や湿気の流入を制御する
- 換気計画…計画的に湿気を排出し、空気を循環させる
この3つがうまく連動することで、温度差による結露が抑えられ、カビの発生要因を大きく減らすことができます。
また、断熱材や建材の選び方にも注意が必要です。吸湿性のある材料を使う場合は、防湿層の位置や通気層の設計も慎重に考慮しなければなりません。目に見えない部分の仕上がりが、10年後、20年後のカビ被害を左右します。
5-2. 専門家による事前相談のすすめ
カビ対策の家づくりをする上で重要なのが、プロの視点を早い段階から取り入れることです。設計士や施工会社だけでなく、空気質や微生物汚染に詳しい専門家に相談することで、見落としがちなリスクを事前に回避できます。
例えば、以下のようなサポートが期待できます:
- 土壌の湿気特性や地域の気候特性を踏まえた断熱計画
- 床下や壁内の湿度を想定した換気ルートの設計提案
- カビの発生しやすい構造や施工パターンの回避指導
- 完成後の空気質測定や、微生物検査による健康チェック
また、完成後も定期的に空気中のカビ濃度を測定したり、床下の点検を依頼することで、住まいを長く健康に保つことが可能になります。特に小さなお子様や高齢者がいるご家庭では、目に見えない空気環境の影響が大きいため、**プロによる「見えないリスクの可視化」**は非常に価値のある対策です。
家は一生に一度の大きな買い物。だからこそ、「見た目のデザイン」や「設備の豪華さ」だけでなく、健康で安心して住み続けられる環境づくりを重視することが大切です。
一般社団法人微生物対策協会について
一般社団法人微生物対策協会は、主に「カビの検査と対策」に特化して活動している団体です。現代の住環境では、見えない空気の質や微生物による健康リスクが注目されつつありますが、その中でもカビは、健康被害と建物の劣化という二重のリスクをもたらす存在です。当協会はそうしたカビの脅威に対し、正しい知識と対策を広めることを目的に設立されました。
活動の法的根拠は、平成27年に施行された「アレルギー疾患対策基本法」にあります。この法律では、アレルギー疾患の予防および症状の軽減に資するため、生活環境や建築構造の改善などが推奨されています。当協会はこの法的背景をもとに、住環境の健全化に貢献する具体的な取り組みを進めています。
私たちの主なミッションは、室内や車内を浮遊する微生物、特にカビの影響を把握し、公衆衛生の向上に寄与することです。保健医療、福祉、環境保全といった分野とも連携しながら、持続可能で健康的な生活空間を守ることを目指しています。
当協会では、空気中に漂うカビや汚染物質の検査を通じて、**空気の「見える化」**を実現しています。特に建物内で発生しやすいカビは、空気中を浮遊して落下した後も、自然に死滅することはほとんどありません。そのため、カビの「有無」だけでなく、「濃度」や「広がり方」を把握することが、安全な住環境を守る上で不可欠です。
また、見えるカビだけでなく、壁紙の裏や床下などに存在する「見えないカビ」の存在も明確にすることが、当協会の特徴です。これにより、カビ対策における「早期発見・早期対応」が可能となり、健康被害や建材の劣化を未然に防ぐことができます。
住まいの快適性と健康を守るには、目に見えないリスクと向き合うことが大切です。私たち微生物対策協会は、その第一歩として、カビの検査・対策の重要性を発信し、安心・安全な住環境づくりを支援しています。