2025/10/18
根太掛けなどの床下構造材にカビが発生すると、家の安全性や耐久性に大きな影響を及ぼす可能性があります。
【記事を読んで分かること】
カビの発生原因、根太掛けの劣化リスク、調査方法、除去・予防策まで体系的に理解できます。
【記事を読むメリット】
床下の見えないトラブルを早期に発見し、住まいを長持ちさせるための実践的な知識が身につきます。
1. 根太掛けにカビが発生する原因とは?
根太掛けは、床を支える重要な構造材であり、住宅の安全性と快適さを維持するための基礎とも言える存在です。しかし、その根太掛けがカビに侵されると、家全体の耐久性が低下するおそれがあります。特に床下は通気性が悪く湿気がこもりやすいため、カビが発生しやすい環境となっています。この章では、根太掛けにカビが生える具体的な原因について解説します。
1-1. 湿気がたまりやすい床下環境の特徴
カビは湿度が60%以上、気温が20〜30度の環境で繁殖しやすく、日本の気候では特に梅雨や夏場に床下の湿度が上昇し、カビが発生しやすくなります。床下は日光が当たらず、空気の流れも少ないため、湿気が滞留しやすいのが特徴です。
さらに、以下のような条件が重なると、床下環境は一気にカビの温床となります。
- 通気口が塞がれている、または数が足りない
- 床下に断熱材がなく、外気との温度差が大きい
- 地面からの湿気が防湿シートで遮断されていない
- 過去に水漏れや雨漏りがあった
とくに築年数が経過した住宅では、地面からの湿気や外気の影響を受けやすく、床下の湿度管理が不十分な場合が多いです。その結果、根太掛けや根太といった木材に湿気が長時間残り、カビが発生しやすい状態になります。
1-2. 木材とカビ・腐朽菌の関係性
木材は、カビや腐朽菌(ふきゅうきん)にとって非常に好ましい栄養源です。根太掛けに使用される木材は、湿気を吸収すると内部まで水分が染み込み、表面だけでなく中からもカビや菌類が繁殖し始めます。
カビと一口に言っても、その中には「木材を変色させるカビ」や「木材を劣化・腐食させる菌(腐朽菌)」が存在し、これらが根太掛けに侵入すると以下のような問題が発生します。
- 表面に黒ずみや緑色の斑点が現れる
- 木材がふわふわした手触りになり、柔らかくなる
- カビ特有の異臭が広がる
- 構造的な強度が徐々に低下する
特に「褐色腐朽菌(かっしょくふきゅうきん)」などは、木材をボロボロに分解し、根太掛けの耐久性を大きく損ないます。これを放置すれば、床が沈む・ミシミシと音が鳴る・傾くなど、住まいの安全に直結する問題に発展する可能性もあります。
木材とカビの関係は、見た目だけの問題ではなく、「住宅の寿命」や「住む人の健康」にまで大きな影響を及ぼすのです。
2. 根太掛けのカビを放置するとどうなる?
床下の見えない場所に発生したカビは、気づかれないまま長期間放置されがちです。しかし、根太掛けにカビが発生したまま対処せずにいると、家の構造や住む人の安全に深刻な影響を与える可能性があります。この章では、カビの放置によって起こる代表的なトラブルとそのリスクについて詳しく解説します。
2-1. 木材の強度劣化と床の沈み・きしみ
カビが根太掛けに発生すると、木材の表面だけでなく内部にまで菌糸が入り込み、木の繊維構造を壊していきます。この状態が長く続くと、木材が柔らかくなり、踏んだときに沈み込んだり、たわんだりするようになります。
さらに深刻なのが、「褐色腐朽菌(かっしょくふきゅうきん)」や「白色腐朽菌(はくしょくふきゅうきん)」といった木材腐朽菌の繁殖です。これらはカビと同じような条件で繁殖し、木材の内部からボロボロにしてしまう性質があります。根太掛けは床を支える部材の一つであるため、ここが劣化すると次のような不具合が生じます。
- 床がミシミシと鳴るようになる
- 歩くと沈む・傾く・歪む
- 床全体のたわみが起こり、建具が閉まりにくくなる
こうした状態を放置すると、部分的な床の補修では済まず、大規模な改修工事が必要になる場合もあります。つまり、カビによる小さな劣化が、家の構造そのものにまで波及することもあるのです。
2-2. 白蟻や害虫被害との連鎖リスク
カビの発生がもたらすもう一つの大きな問題が、白蟻(シロアリ)などの害虫を呼び寄せるリスクです。湿気が多く、カビが発生している木材は、白蟻にとって格好の住みかであり、栄養源でもあります。
白蟻は乾燥した木材にはほとんど寄りつきませんが、カビが生えて柔らかくなった状態の木材にはすぐに食いつきます。そして、根太掛けや床板、柱などを内部から食い荒らし、次第に家全体の構造にダメージを与えていきます。
カビと白蟻はセットで発生しやすく、以下のような悪循環を引き起こします:
- 湿気がこもる
- カビが生える
- 木材が劣化する
- 白蟻が侵入しやすくなる
- 家の構造が大きく損傷する
最初は単なるカビと思っていたものが、白蟻被害と合わさることで、結果的に家全体の資産価値を下げてしまうことになりかねません。
見えない場所で進行するため、自覚症状が出た時点ではすでに被害が進んでいるケースも多いため、床下の異常は「気づいた時が勝負」です。
3. 床下にカビがあるか調べる方法とチェックポイント
根太掛けや床下構造にカビが生えているかどうかは、普段の生活ではなかなか気づきにくいものです。しかし、床下のカビは早期発見・早期対処がとても重要です。この章では、カビの兆候に気づくためのチェックポイントと、専門業者による調査の流れについて詳しく解説します。
3-1. 見た目・におい・音からわかる初期サイン
床下にカビが発生しているかどうかを自分で判断するには、日常の小さな変化に気づくことが大切です。以下のような症状が見られた場合、床下でカビが進行している可能性があります。
✅ においの変化
- 畳やフローリングの近くでカビ臭い・土臭いにおいがする
- 雨の日や湿気が多い日に特ににおいが強くなる
- 押入れ・収納スペースの中がムッとする
においは目に見えませんが、カビの存在を知らせてくれる最も分かりやすいサインの一つです。
✅ 見た目の異変
- 床がうっすら波打っているように見える
- フローリングが浮き上がる・隙間ができる
- 畳や床に黒いシミや変色がある
こうした見た目の異常は、根太掛けや床材が内部から湿気を含み、変形していることを示しています。
✅ 音や感触
- 歩くと「ミシッ、ギシギシ」と音がする
- 一部の床がフワフワ・沈み込む感じがする
- 踏む場所によって違和感がある
これらは、床下の木材がカビや湿気で劣化しているサインです。
こうした変化に気づいた時点で、早めに床下の確認を行うことが、深刻なトラブルを防ぐ第一歩です。
3-2. プロによる床下調査と検査の流れ
自分では確認が難しい場合や、より正確な状況を把握したい場合は、専門業者による床下調査を依頼するのが確実です。調査では以下のような方法でカビや劣化の有無をチェックします。
✅ 床下点検口からの目視確認
- 点検口(または畳をめくって開口)からライトとカメラを使って床下をチェック
- 根太掛け・根太・大引き・束など構造材のカビ・腐食・濡れ跡を観察
✅ カビ臭・湿度の測定
- 空気中の湿度やカビ臭の強さを確認
- 必要に応じて湿度計・サーモグラフィーなどの機器を使って検査
✅ 木材の含水率チェック
- 専用の機器を使い、木材の中にどれだけ水分が含まれているかを測定
- 含水率が20%を超えるとカビ・腐朽リスクが高いとされる
✅ 必要に応じたカビ菌のサンプル採取
- 深刻な場合は、木材や空気中のカビ菌を採取し、検査機関で分析することもあります
床下調査の所要時間はおよそ30分〜1時間程度。費用は業者によって異なりますが、簡易調査で5,000円〜、詳細調査では1〜3万円程度が一般的です。
一見コストがかかるように感じるかもしれませんが、早期発見で家全体の修繕費用を抑えられることを考えれば、非常に価値のある投資です。
4. 根太掛けのカビ除去と再発防止策
根太掛けにカビが見つかった場合、そのまま放置すれば木材の腐朽や構造の弱体化を招くリスクがあります。対策には「カビの除去」と「再発を防ぐ環境づくり」の両方が不可欠です。この章では、実際にどのように根太掛けのカビを除去し、再びカビが生えないようにするかについて具体的にご紹介します。
4-1. 解体時の適切なカビ除去と防腐処理
根太掛けにカビが発生していると確認された場合、被害の程度によって対処方法が異なります。表面だけにカビが付着している軽度の状態であれば、洗浄・除菌・乾燥処理で対応できますが、内部までカビが浸透している場合には部分的な交換や大工工事が必要になることもあります。
【除去の流れ(軽度な場合)】
- 表面のカビを乾いた布で拭き取る(濡れ拭きはNG)
- アルコールや防カビ剤を塗布して除菌
- 強制乾燥または数日間換気して湿気を飛ばす
- 木材保護剤や防カビ剤で再コーティングする
※この段階でも、必ずゴム手袋・マスク・換気を徹底し、作業中にカビの胞子を吸い込まないよう注意が必要です。
【被害が中度〜重度の場合】
- 木材の表面が柔らかくなっていたり、変色が深く広がっている場合
- 木材の一部が崩れたり、指で押すとへこむような状態になっている場合
このようなケースでは、根太掛けや根太材の交換を検討する必要があります。施工時にはカビ除去後に木材保護塗料や防腐処理剤を塗布し、再発防止の下地を作っておくことが推奨されます。
また、床下全体にカビが広がっている場合は、カビ燻蒸(燻煙処理)や防カビコーティングなどの専門的な施工を業者に依頼することが効果的です。
4-2. 床下の湿度コントロールと断熱・通気対策
カビの再発を防ぐには、根本的な原因である「湿気」を取り除くことが不可欠です。以下に、根太掛けを含む床下空間の湿気対策と通気・断熱の工夫をご紹介します。
✅ 床下の湿気対策
- 防湿シートの設置:地面からの水分蒸発を抑えるシートを敷く
- 床下調湿材の活用:炭やシリカゲル系の素材で湿度を安定化
- 排水の見直し:床下近くに排水管の漏れや滞留がないか点検
✅ 通気性の改善
- 床下換気口の確保・拡張:ブロックや物でふさがれていないか要確認
- 基礎パッキン工法の導入:新築や大規模リフォーム時に効果的な床下換気手法
- 床下換気扇の設置:空気がこもりやすい環境では電動換気を検討
✅ 断熱・結露対策
- 床下断熱材の施工:温度差による結露を防止
- 水道管・配管の結露防止材の巻きつけ:冷たい配管が湿気の発生源になるため
このような対策を講じることで、根太掛け周辺の環境をカビが生えにくい状態に保つことができます。単にカビを除去するだけでなく、「なぜカビが生えたのか?」という根本原因を改善することが最も重要です。
5. 家を長持ちさせるために今できる対策とは?
住宅の寿命を左右するのは、目に見える部分のメンテナンスだけではありません。特に根太掛けのような床下の構造部材は、普段は見えないからこそ劣化に気づきにくく、気づいたときには大きな修繕が必要になっていることも少なくありません。この章では、今すぐ実践できるカビ・湿気対策と、安心して住み続けるために大切な「相談先」について解説します。
5-1. カビ・白蟻を寄せ付けない住環境の作り方
根太掛けや床下構造をカビや白蟻から守るためには、日常的な予防対策の積み重ねが重要です。以下のようなポイントを押さえておくことで、床下トラブルのリスクを大きく減らすことができます。
✅ 室内環境を適切に保つ
- 湿気がこもりやすい季節はこまめに換気を行う
- エアコンの除湿機能や除湿機を活用する
- 雨の日に洗濯物を室内に干すのは最小限にする
✅ 定期的な床下チェック
- 年に1回は点検口を開けてにおいや湿気の確認をする
- 畳やフローリングの浮き・沈み・きしみ音に注意を払う
- 異変を感じたら早めにプロの調査を依頼する
✅ 雨漏りや水漏れを放置しない
- 屋根や外壁、配管の不具合はすぐに修理
- 床下に湿気を呼び込むルートを断つことが根本対策につながります
特にカビは、一度発生すると完全に除去するのが難しいため、発生を未然に防ぐ意識を持つことが何より大切です。
5-2. 専門機関に相談するメリットと安心感
床下の異常やカビの兆候に不安を感じた場合、最も確実なのは専門機関やプロの業者に相談することです。自力では見落としがちな微細な異変や、隠れた構造の問題も、専門の目でチェックすれば正確に判断できます。
専門機関に相談するメリット
- 見えないカビの有無や範囲が明確になる
- 必要な修繕や対策がプロ目線で提案される
- 木材の含水率や白蟻の有無など、構造に関わる深部まで確認できる
- 自分で判断できないケースでも科学的データを元に対応可能
また、最近では空気中のカビ濃度を数値化する検査や、カビの種類まで特定できる分析サービスもあります。信頼できる団体や業者に相談することで、見えない不安を“見える安心”に変えることができるのです。
住宅は、一度建てたら終わりではなく、「守って育てていく」ものです。
床下のカビはその大敵となる存在ですが、正しい知識と行動があれば、長く安心して住み続けられる家を維持することができます。
一般社団法人 微生物対策協会について
一般社団法人 微生物対策協会は、**「カビの検査と対策」**を専門とする協会です。私たちは、住宅や建物におけるカビによる健康被害や劣化被害を防ぐことを目的に、目に見えない空気環境を「見える化」する取り組みを行っています。健全な住環境づくりを支えることが、私たちの使命です。
この活動の根拠には、平成27年に施行された**「アレルギー疾患対策基本法」**があります。この法律は、アレルギー症状の軽減や予防のために、生活環境や建築構造の改善を推進することを求めており、当協会はこの法的背景に基づき、室内空気の質向上に努めています。
当協会の主な目的は、微生物による災害から人々の住まいや生活環境を守ることです。空気中に浮遊するカビや細菌は、私たちの健康だけでなく建物そのものにも悪影響を与えます。特にカビは、壁の中や床下、根太掛けといった目に見えない部分で発生しやすく、放置することで構造の劣化や白蟻被害の温床になることもあります。
そこで当協会では、空気中のカビ菌や微生物を専用の機器で測定し、その濃度や種類を数値で把握する「見える化検査」を実施しています。これにより、表面に現れていない問題の早期発見が可能となり、確実な対策を講じることができます。
また、建物の診断だけでなく、適切な防カビ施工や環境改善の提案も行っており、住宅の寿命を延ばし、安心して暮らせる住空間の提供を支援しています。特に昨今では、アレルギーや喘息といった症状に悩む方も増えており、カビや微生物への正しい理解と対処が、今後ますます重要になってきています。
目に見えない空気を科学の力で可視化し、健康と建物を守る新しい常識を広めること。それが、一般社団法人 微生物対策協会の活動の根幹です。
カビや空気環境でお悩みの際は、ぜひ当協会にご相談ください。正しい知識と確かな技術で、安心できる暮らしをサポートいたします。