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2025/10/22   

【断熱材選びに失敗しない】セルロースファイバーとカビ問題を徹底解説!

セルロースファイバー断熱材にカビが発生するという声が増えており、不安を感じている人が多いです。

【記事を読んで分かること】
カビが発生する原因や、セルロースファイバーの防カビ性能、他の断熱材との違いが分かります。

【記事を読むメリット】
適切な断熱材の選び方と施工上の注意点がわかり、カビのリスクを最小限に抑える方法が理解できます。

セルロースファイバー断熱材は、近年「高断熱」「自然素材」「調湿性能」といった観点から注目を集めているエコ系断熱材の一つです。特に、リサイクル新聞紙を主原料とし、防音性や防火性にも優れることから、住宅の快適性や環境への配慮を両立させたい人に選ばれています。この章では、まずセルロースファイバー断熱材の基礎知識と、その性能が評価される理由について解説していきます。

セルロースファイバー断熱材は、主にリサイクルされた新聞紙を細かく粉砕し、防カビ・防虫処理を施して断熱材として再生させた自然由来の素材です。これらの繊維は、空気をたっぷりと含む構造になっており、熱を伝えにくくすることで優れた断熱性能を発揮します。さらに、繊維の間にある無数の空間が湿気を吸ったり吐いたりする「調湿機能」を持っているため、室内の湿度を自然にコントロールする効果も期待できます。

この断熱材は吹き込み施工が主流で、構造体の中に隙間なく充填することで、従来の断熱材にありがちな「隙間からの熱の逃げ」や「結露による劣化」といった問題を防ぐ設計になっています。また、難燃処理に使われているホウ酸が防虫・防カビにも一役買っているとされ、自然素材でありながらも高性能な点が評価されています。

セルロースファイバー断熱材がエコ住宅で選ばれる最大の理由は、「断熱」「調湿」「遮音」「防火」「持続性」など多面的な性能をひとつの素材で兼ね備えているからです。とくに注目されているのが「調湿性能」で、日本のように四季があり、湿度の変化が大きい気候では、壁内結露の防止が非常に重要です。

セルロースファイバーは空気中の水分を吸収・放出する性質を持っており、これが壁内にたまりがちな湿気を減らす助けとなります。これにより、結露の発生を抑え、カビや腐朽菌の発生リスクを軽減します。さらに、吸音性にも優れているため、外部の騒音を軽減し、静かな住環境を作ることができます。

その上、原材料がリサイクル新聞紙という点で環境負荷が低く、製造時のエネルギー消費量も少ないため、CO2削減にも貢献します。このように「人にも地球にもやさしい断熱材」として、セルロースファイバーは多くのエコ志向の住宅に採用されています。

自然素材であり、調湿性能も高いセルロースファイバー断熱材。しかし、「カビが生えた」という声や不安も一部で聞かれます。実際にはどうなのか?この章では、セルロースファイバー断熱材におけるカビの発生リスクについて、事例や性能をもとに冷静に分析していきます。誤った認識によって施工ミスを招かないよう、正確な知識を身につけることが重要です。

セルロースファイバー自体には、ホウ酸処理などで防カビ・防虫効果が付与されています。そのため、素材単体がカビやすいというわけではありません。しかし、実際の現場ではカビが発生するケースも報告されています。その多くが「施工不良」「結露」「過剰な湿気」など環境要因に起因しているのが現実です。

たとえば、気密処理が不十分だったことで、室内の湿気が壁内部に侵入し、冷たい外気との温度差で結露が発生。その結果、セルロースファイバーが含んだ水分が乾ききらず、カビの温床となるという事例があります。調湿性能があるとはいえ、湿気が常に過剰な状態では限界があるのです。また、吹き込み施工の際に湿度の高い日に作業を行ったことで、断熱材内部が長期間湿った状態になっていたケースもあります。

つまり、カビが発生するのは素材そのものが原因ではなく、施工や設計、周囲環境の問題であることがほとんどです。

セルロースファイバー断熱材は、防カビ性能があるとされる一方で、「絶対にカビない」という過信は危険です。防カビ性能とは、「カビの発生を抑制する効果がある」という意味であり、完全にカビを防ぐわけではありません。実際には、ホウ酸による抗菌作用がカビの繁殖を抑える役割を果たしていますが、それは適切な湿度管理や施工があってこそ機能するものです。

また、製品によってはホウ酸の含有量や処理方法に違いがあるため、全てのセルロースファイバーが同じ防カビ性能を持つとは限りません。さらに、防カビ性能はJIS規格などの評価基準に沿っていることが重要ですが、施工現場での管理が甘ければ、その効果は発揮されにくくなります。

つまり、防カビ性能を過信せず、「防ぐための設計・施工・換気」まで含めて考えることがカビ対策として本質的です。

カビはどこにでも存在する微生物ですが、ある特定の条件が揃うと一気に繁殖します。断熱材や住宅構造の性能が高くても、環境管理が甘ければカビは防げません。この章では、カビが発生しやすい環境の特徴と、放置したときの健康・建物へのリスクについて詳しく解説します。

カビの発生には「湿度」「温度」「栄養源」の3要素が揃うことが条件です。その中でも特に重要なのが湿度と結露です。空気中の湿気が断熱材や壁内部にこもり、冷たい外気と接する部分で結露が起きると、その水分がカビの繁殖源になります。いわゆる「壁内結露」です。

現代の高気密・高断熱住宅では、室内の温かい空気が逃げにくいため、逆に湿気も外に逃げにくくなっています。そのため、適切な換気や調湿がされていないと、湿度が常に高止まりし、カビが非常に発生しやすい状態になります。とくに梅雨や冬場は要注意で、外気との温度差が大きくなることで壁内に結露が集中する傾向があります。

また、セルロースファイバーのような調湿性のある断熱材でも、過度な湿気には対応しきれず、飽和状態になると水分が滞留し、カビの温床となる可能性があります。つまり、素材の性能だけに頼らず、湿度管理・施工の丁寧さ・換気計画が三位一体であることがカビを防ぐカギです。

カビの問題は見た目の悪さだけではありません。人体への健康リスク建物自体の劣化という、2つの深刻な影響をもたらします。

まず健康面では、カビの胞子が空気中に拡散し、それを吸い込むことでアレルギー症状や喘息、鼻炎、皮膚炎などの原因になります。特に小さなお子さんや高齢者、アレルギー体質の方にとっては、生活環境そのものが健康被害の要因になる危険性があります。

次に建物への影響ですが、カビは素材を劣化させる原因になります。セルロースファイバーのような繊維系素材にカビが繁殖すると、断熱性能が低下し、住宅の省エネ性能にも悪影響を及ぼします。また、壁体内にまでカビが浸透してしまうと、リフォームでは対応できず、大規模な解体工事が必要になることもあります。

このように、カビの問題は「見えないところで進行し、見える頃には手遅れ」というケースが少なくありません。だからこそ、日頃からの環境管理と、正しい施工が重要なのです。

セルロースファイバー断熱材は本来、カビに強い性能を持っていますが、それを発揮するには正確な施工と設計が欠かせません。逆に、施工ミスや知識不足によっては、その性能を十分に活かせず、かえってカビの温床になる可能性すらあります。この章では、カビを防ぐための具体的な施工ポイントと、設計段階で押さえるべき注意点について解説します。

セルロースファイバー断熱材は主に「吹き込み工法」で施工されます。この工法では、壁や天井の中に断熱材を均一かつ隙間なく充填することが重要です。もし一部に隙間があれば、そこに空気が通り、結露が発生しやすくなり、カビの原因となってしまいます。

また、施工時の含水率にも注意が必要です。セルロースファイバーには「乾式」と「湿式」の施工方法がありますが、湿式では適切な水分量の管理ができていないと、断熱材が乾燥しきらずに内部で湿気がこもり、カビの温床になります。湿式を採用する場合は、必ず施工後に乾燥状態を確認し、十分に時間を置いてから仕上げ材を貼ることが大切です。

加えて、気密処理の徹底も欠かせません。気密シートやテープを使って空気の流れをコントロールし、湿気が壁内に侵入しないよう施工することで、カビリスクを大幅に低減できます。つまり、断熱材の性能に加えて、「気密・換気・湿気管理」の3つを意識した施工が求められます。

断熱材の性能だけでカビを完全に防ぐことはできません。換気・調湿・断熱のバランスを取ることが、カビの発生を防ぐうえで非常に重要です。

まず換気についてですが、住宅内の湿気を外に逃がす仕組みがなければ、いくら調湿性のある断熱材を使っても限界があります。特に高気密住宅では、**計画換気(第1種または第3種換気)**の導入が推奨されており、24時間換気システムの適切な運用が不可欠です。

次に調湿について。セルロースファイバー自体が湿度を吸収・放出する「調湿材」としての役割を果たしますが、内装材や外壁材との相性も考慮する必要があります。調湿しにくいビニールクロスなどを多用すると、内部の湿気が抜けにくくなり、逆効果になる可能性があります。

最後に断熱性能。断熱不足があると、外気との温度差で結露が起こりやすくなります。特に熱橋(ヒートブリッジ)と呼ばれる、構造材を伝って熱が逃げやすい部分に注意が必要です。これを防ぐには、断熱材の厚みや配置を正しく計算し、適切な施工を行うことが求められます。

これら3つの要素をバランスよく設計・施工することで、セルロースファイバー断熱材の本来の性能を最大限に引き出し、カビに強い住環境をつくることが可能になります。

住宅の快適性や健康を左右する断熱材選びは、カビ対策の面からも非常に重要です。どの断熱材にも一長一短があり、素材ごとの特性を理解して選ぶことが求められます。この章では、セルロースファイバーを中心に、他の断熱材と比較しながら、カビ対策に適した断熱材の選び方を解説します。

断熱材にはさまざまな種類がありますが、住宅によく使われる代表的な3種を比較すると以下のような特徴があります。

セルロースファイバー断熱材
・調湿性能が高く、湿度の変化に強い
・自然素材ベースで、ホウ酸処理による防カビ効果あり
・隙間なく施工することで断熱性も高くなる
・施工精度により効果に差が出やすい

グラスウール断熱材
・価格が安く、コストパフォーマンスが高い
・繊維系素材で調湿性はほぼなく、結露リスクが高い
・吸湿すると性能が大きく低下する
・施工が雑になるとすき間ができやすい

ウレタンフォーム断熱材(吹付け)
・気密性・断熱性ともに非常に高い
・調湿性はないため、適切な換気・防湿対策が必要
・硬化後に変形しにくく、長期的に安定した性能
・施工時の化学反応や有害物質が気になる場合も

このように、調湿性と防カビ性の両立を考えるなら、セルロースファイバーが有力な選択肢になりますが、設計や気候条件、施工業者の技術によっては他の素材の方が適している場合もあります。

断熱材選びで失敗しないためには、「素材の性能」だけでなく、「住宅の構造・立地・設計」といった全体のバランスを見て判断することが重要です。たとえば、湿気が多い地域(例:日本の沿岸部や梅雨の多い地域)では、調湿性能がある素材が適しています。一方で、寒冷地では断熱性と気密性がより重視されるため、ウレタンフォームなどの方がメリットがあるケースもあります。

また、防カビ性能を最大限に活かすためには、施工業者の知識と経験も非常に重要です。素材の扱い方や建物の設計に合わせた最適な工法を選べる業者でなければ、本来の性能が発揮されません。

最終的には、「どの断熱材が一番良いか」ではなく、「自分の家に合っているかどうか」がもっとも重要な判断基準です。断熱材のパンフレットやメーカーの説明だけで決めるのではなく、第三者の専門家や検査機関に相談することで、より安心して選ぶことができます。

一般社団法人 微生物対策協会は、「カビの検査と対策」を柱に、住環境におけるカビ被害の抑制と健全な空気環境の実現を目的として設立された専門団体です。

私たちは、室内や建物内の空気を科学的に「見える化」することで、目には見えないカビや汚染物質の存在を明確にし、人々の健康を支え、守るための活動を行っています。特に、平成27年に施行された「アレルギー疾患対策基本法」に基づき、アレルギー症状の予防や生活環境の改善に寄与する調査・対策を推進しています。

協会の主な活動内容としては、建物内や車内空間に浮遊する微生物の検査・調査を行い、その数値や状態を把握し、被害の有無やレベルを「見える化」することにより、的確な対応策を提案します。とくにカビ被害は深刻であり、浮遊するカビ胞子が建物のさまざまな場所に定着し、健康や建材に悪影響を及ぼす可能性があります。

こうしたリスクを最小限に抑えるため、私たちは専門知識と測定技術を活かし、目に見えないリスクを具体的に提示することで、安全・安心な住環境づくりをサポートしています。今後も、住まいと健康を守るために、公衆衛生や環境保全の観点から微生物対策の重要性を広く伝えていきます。

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