一般社団法人
微生物対策協会

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2025/11/01   

打ち放しコンクリートにカビが生える原因とひび割れの深い関係

美しいはずのコンクリート打ち放し仕上げに、カビや黒ずみが目立って困った経験はありませんか?
【記事を読んで分かること】
カビとクラックの関係性、発生の原因、そして正しい補修と予防方法について理解できます。
【記事を読むメリット】
打ち放しコンクリートの美観と耐久性を保ちながら、カビの再発を防ぐ具体的な対策が分かります。

建築美を重視するデザインで人気の高い「コンクリート打ち放し仕上げ」。一見、無機質でカビとは無縁のように思えますが、実は非常にカビが発生しやすい素材と構造であることをご存じでしょうか?特に、表面に発生したひび割れ(クラック)部分はカビの発生源になりやすく、放置すれば建物全体の劣化にもつながります。この章では、打ち放し仕上げにカビが生えやすい理由を掘り下げていきます。

コンクリート打ち放しとは、仕上げ材を使用せず、型枠を外したそのままの状態で仕上げる工法です。無骨でスタイリッシュな外観が魅力で、デザイナーズ住宅や商業施設にもよく採用されています。
しかし、塗装や防水層がないため、コンクリートがむき出しの状態で雨風にさらされます。コンクリートは吸水性を持っており、水分を吸収しやすいため、湿度の高い環境では表面や内部に湿気がたまりやすくなるのです。この湿気がカビの発生を誘発します。また、経年劣化により防水性も徐々に低下するため、築年数が経つほどリスクが増加します。

カビとひび割れ(クラック)は、一見無関係のようでいて、実は深く結びついています。クラックがあるとそこに雨水や空気中の水分が侵入し、内部に湿気が溜まる状態が継続します。湿度が60%以上になれば、コンクリート表面やクラック内部にカビの胞子が定着し、繁殖を始めるのです。
また、微細なひび割れは目視で気づきにくく、気付いたときには広範囲にカビが広がっていることもあります。さらに、汚れや大気中の有機物がクラック内に蓄積すると、カビの栄養源にもなり、繁殖しやすい環境が整ってしまうのです。

コンクリートに生じるクラックは避けられない現象とも言えますが、問題はその処理を怠ることです。ひび割れを放置すれば、カビの温床になるだけでなく、建物自体の耐久性も大きく損なわれることになります。

コンクリートの表面に生じるクラックは、わずか数ミリのものでも水分を吸い込みやすい通路になります。雨水や結露水はクラックから浸入し、蒸発せずに内部に留まるため、そこが高湿状態に。カビは湿度・温度・栄養の3条件が揃えば簡単に繁殖するため、この湿気がカビの発生を助長します。
しかもコンクリート内部は、外からの風通しがなく乾燥しにくいため、一度湿気がこもると長期間にわたって高湿度状態が継続されます。これが打ち放し仕上げ特有の「内部カビ被害」を招くのです。

髪の毛ほどの幅しかない「ヘアークラック」は、構造的に大きな問題を生じることは少ないとされますが、カビという視点では要注意です。外見上は目立たなくても、雨や湿気が侵入するには十分な隙間であり、蓄積した水分が内部でカビを繁殖させるには絶好の場所となります。
また、ヘアークラックが集合すると、表面全体が黒ずみ、カビによる斑点模様のようになり、美観を大きく損なうことになります。

放置されたカビとクラックは、単なる見た目の問題にとどまらず、健康や建物そのものへの深刻な悪影響をもたらします。

カビは見た目に大きく影響し、黒ずみや緑色のシミとして外観に現れます。とくに打ち放し仕上げの建物は、その美しさが命ですので、カビによる変色が目立つとデザイン性が損なわれ、建物の印象が大きく悪化します。
さらに、カビが原因で建物の外壁や内壁の素材が劣化した場合、資産価値の低下にも直結します。中古物件や賃貸物件では、外観の印象が価格や空室率にも影響を与えるため、カビの放置は経済的な損失にもつながります。

コンクリートのクラックから発生したカビが室内に拡散すると、アレルギーや喘息などの健康被害を引き起こす可能性があります。特に免疫力の低い高齢者や子どもにとっては深刻な問題です。
また、カビが繁殖する際に生じる酸性物質は、コンクリート内部の鉄筋を腐食させる可能性があり、構造そのものの耐久性にも悪影響を与えることがあります。たかがカビ、と思っていると、将来的に大規模な修繕が必要になることもあるのです。

打ち放しコンクリートを美しく、安全に維持するためには、適切な補修とカビ対策が不可欠です。ここでは、具体的な対応方法を解説します。

クラックが確認されたら、まず行うべきは補修材による充填です。軽度のヘアークラックには、微細クラック用の樹脂シーラントや補修モルタルが使用されます。深く広がったクラックには、Uカット補修工法など、プロによる施工が必要です。
その後、防水性の高いトップコートや撥水剤を塗布することで、コンクリートへの水の浸入を防ぎ、再度のカビ発生を予防できます。防水処理は、紫外線や風雨によって経年劣化するため、5年〜10年に一度の再塗布が理想です。

カビが発生している場合は、まず中性洗剤や専用のカビ除去剤で丁寧に清掃します。表面のカビを落とすだけでは不十分で、除去後に防カビ処理を施すことが重要です。
無色透明の防カビ剤や、撥水性のある防カビ塗料を塗布することで、再発リスクを大きく低減できます。施工後は、湿気がこもらないように定期的な換気と点検を行い、カビの再発を防ぎましょう。

美しい状態を長く保つためには、「問題が起きる前に防ぐ」ことが何よりも大切です。日々の点検と環境管理が、建物の寿命を延ばす最大のカギとなります。

年に1~2回の定期点検を行い、クラックやカビの兆候を早期に発見することが大切です。とくに梅雨前や台風後は、外壁の水染みや黒ずみをチェックしましょう。
小さなトラブルでも、早めに対処すればコストも最小限に抑えられます。放置するほど手間も費用もかかるため、**「気づいたらすぐ対応」**が原則です。

防水処理や補修作業を業者に依頼する場合は、施工実績のある専門業者を選ぶことが重要です。見積もりの内容に「防カビ処理」や「通気対策」が含まれているか、使用する薬剤が環境や建材に適しているかなども確認しましょう。
また、施工後のメンテナンススケジュールの提案があるかどうかも、信頼できる業者を見分けるポイントです。

一般社団法人微生物対策協会は、「カビの検査と対策」を専門に行う団体です。カビによる健康被害や建築物の劣化被害を防ぐことを目的として、**室内空気の「見える化」**により、健全で安心な住環境を整える支援を行っています。

当協会の活動は、平成27年に施行された「アレルギー疾患対策基本法」に基づき、アレルギーの予防と生活環境の改善を推進するものです。この法律では、建築構造や生活空間の改善がアレルギーの軽減につながると定められており、私たちの活動はその実践の一端を担っています。

協会では、建物内外のカビ発生リスクを診断し、空気中の浮遊カビや汚染物質の有無を測定・分析します。その結果に基づき、的確な除去方法や予防策をご提案いたします。
特に、コンクリート打ち放しのように一見カビと無縁に見える構造でも、目に見えないリスクが潜んでいることが多く、プロによる調査が安心につながります。

建築のプロや住まいのオーナーの皆さまにとって、カビ対策はもはや必須の時代です。私たちは、カビの「見える化」から「根本対策」までをワンストップで支援し、快適で安全な住環境づくりをサポートいたします。

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