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2025/11/05   

「防音材の裏で起きているカビ汚染とは?健康と性能を守る方法」

吸音材や遮音材に使われる繊維系素材は、湿気に弱くカビが生えるリスクがあり、見えない場所での被害が深刻です。

【記事を読んで分かること】
繊維系吸音材にカビが生える原因、健康や性能への影響、発見と対処の方法、そして予防策が理解できます。

【記事を読むメリット】
住まいの静音性を保ちつつ、カビによる健康リスクから家族を守るための実践的な知識が得られます。

吸音材や遮音材は、防音や音の反響を抑えるために住宅やオフィス、スタジオなどさまざまな場所で使用されています。中でもグラスウールやロックウールなどの「繊維系素材」は広く用いられていますが、実はカビが発生しやすい素材でもあります。ここでは、なぜ吸音材にカビが生えるのか、その根本的な原因を解説します。

グラスウールやロックウールなどの繊維系吸音材は、空気をたっぷり含んだ繊維の隙間が音を吸収する仕組みになっています。この構造は防音性能には優れていますが、一方で空気中の湿気を含みやすく、長期間にわたって湿った状態が続くと、カビの繁殖につながります。吸音材自体には防カビ加工がされていないことも多く、湿度の高い環境や通気性が悪い場所では、内部にカビが発生してしまうリスクが高まるのです。

特に注意すべきは、壁の中や天井裏などに設置された吸音材・遮音材です。これらの場所は外気との温度差によって結露が発生しやすく、その水分が吸音材に吸収されることで、常に湿った状態になってしまいます。また、エアコンや加湿器の影響、生活から発生する水蒸気(調理、入浴など)も湿度を高める要因です。湿気の逃げ場がない空間では、繊維の奥深くでカビが静かに繁殖を始め、発見が遅れることが多くなります。

吸音材にカビが生えると、美観を損ねるだけでなく、音響環境・建物の構造・健康にも悪影響を及ぼします。気づかないまま放置してしまうと、思わぬトラブルにつながることもあります。

カビは空気中に胞子を放出し、呼吸とともに体内に取り込まれることで、アレルギー症状やぜんそく、頭痛、倦怠感などを引き起こす可能性があります。特に吸音材の内部で繁殖したカビは、外からは見えにくいため、知らぬ間に部屋中に胞子が拡散されてしまう危険があります。吸音材が使用される場所は「静かに快適に過ごす空間」であることが多いため、室内の空気環境がカビによって汚染されるのは非常に深刻な問題です。

カビが繊維を侵食すると、吸音材の物理的な構造が変化し、本来の防音性能が低下するおそれがあります。また、吸音材の下にある石膏ボードや木材にもカビが広がれば、建材の劣化や腐食が進み、建物全体の耐久性にも影響します。防音性能を維持しつつ長持ちさせるには、見えない場所の素材にも衛生的な環境を整えておくことが欠かせません。

カビが吸音材に発生しているかどうかを確認するには、見た目だけでは限界があります。内部に隠れていることが多いため、異変に気づいたら早めの行動が必要です。

吸音材にカビが生えている場合、室内に特有のカビ臭が広がることがあります。また、壁や天井にシミや変色が見られる場合、その裏側でカビが進行しているサインかもしれません。防音室や音楽スタジオなどでは、湿度が高くなりがちな密閉空間が多いため、音の響き方がいつもと違うと感じたら、それもカビによる変質が影響している可能性があります。こうした違和感に早く気づくことが、被害の拡大を防ぐ第一歩です。

軽度のカビであれば、アルコールスプレーなどでの表面拭き取りで対応できる場合もありますが、吸音材の奥にまでカビが根を張っている場合は、素材を交換する以外に根本的な解決は難しいことが多いです。壁内や天井裏のカビは、一般の方が簡単にアクセスできる場所ではないため、被害が広がっていると感じたら、早めにカビ専門の業者へ相談することをおすすめします。プロによる調査で、見えないカビの範囲を可視化することが可能です。

カビの発生は未然に防ぐことが一番です。ここでは、カビを寄せ付けないための設計上・素材選定上の工夫について紹介します。

吸音材を使う空間では、まず湿気がこもらないような設計が重要です。適切な換気システムを導入し、湿度を常に50〜60%に保つことで、カビの繁殖を抑制できます。また、壁の中や天井裏に吸音材を設置する際は、防湿シートや通気層を確保し、湿気が滞留しない構造にしておくことが有効です。結露が起こりやすい部位では、断熱材との併用や気密性の調整も効果的です。

最近では、防カビ加工が施された吸音材や遮音材も市販されています。これらの素材は、カビの栄養源となる成分を抑えたり、表面に抗菌剤を配合することで、繁殖を防ぐ機能があります。施工時には、防湿層との組み合わせや、接着剤などの副資材にもカビに強いものを選ぶことで、効果がさらに高まります。また、施工前後の環境管理(除湿・乾燥)も重要なポイントです。

快適な音環境と衛生的な空間を両立するためには、日々のメンテナンスと素材の正しい管理が不可欠です。

吸音材・遮音材は、壁の中や天井裏に隠れていることが多いため、半年〜1年に一度は、専門業者による点検を実施することをおすすめします。特に湿度が高まる梅雨や冬の結露が気になる時期には、カビの兆候が現れやすいため、重点的にチェックしましょう。点検時には、空気中のカビ菌濃度の測定や赤外線カメラによる水分検査などを活用することで、見えないトラブルを早期に発見できます。

最近では、繊維系に代わるカビに強い防音素材として、フォームタイプ(硬質ウレタン系)や無機質系の吸音パネルも注目されています。これらは通気性を持ちながらも湿気に強く、カビの温床になりにくい特性があります。また、リサイクル素材を使用したエコタイプの防音材の中にも、防カビ性能を高めた製品が増えています。用途や設置環境に応じて最適な素材を選ぶことが、防音と衛生の両立につながります。

一般社団法人 微生物対策協会は、「カビの検査と対策」に特化した専門団体として、室内環境に潜む見えない脅威である微生物(主にカビ)から、私たちの健康と住環境を守る活動を行っています。

私たちの取り組みは、平成27年に施行された「アレルギー疾患対策基本法」に基づいており、この法律はアレルギー疾患の予防および軽減のために、生活環境の改善を求めています。当協会では、この理念のもとに、住宅や施設内の空気環境を「見える化」し、カビの有無や濃度を科学的に分析・評価しています。

特に吸音材や遮音材のように、内部に隠れて見えない素材にカビが発生しているかどうかを判断することは難しいため、私たちは専門的な検査機器と調査技術を駆使して、問題の本質を明らかにします。測定結果に基づき、最適な除去方法と再発防止策を提案し、住宅・施設の安心・安全な環境づくりに貢献しています。

カビの被害は「見えないから大丈夫」と思っているうちに進行します。吸音材や壁内部の空気環境に不安を感じたら、ぜひ微生物対策協会までご相談ください。確かな知識と技術で、快適な暮らしをサポートいたします。

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