2025/11/06
「合成樹脂ボードにカビ!? フェノールフォームの落とし穴と正しい対策」
見た目がキレイな合成樹脂ボードでも、裏側や接着面にカビが発生し、建材や空気環境に影響を与えるケースがあります。
【記事を読んで分かること】
合成樹脂ボードにカビが生える原因、健康や建材への影響、対処法や再発防止策を理解できます。
【記事を読むメリット】
カビに強い建材選びと施工方法を知ることで、住まいの快適さと衛生を長期的に保つことができます。
1. 合成樹脂ボードにカビは生えるのか?素材の特性とリスク
合成樹脂ボードは、耐水性や断熱性に優れた建材として広く使用されていますが、実は「絶対にカビが生えない素材」ではありません。とくに、フェノールフォームなどの断熱材に化粧材が貼られたボード構造では、見えない裏側や接着層に湿気がたまりやすく、思わぬカビの温床となることがあります。
1-1. フェノールフォーム断熱材と表面化粧材の構造とは
フェノールフォームは、高い断熱性と不燃性を持つ優秀な素材で、住宅や商業施設の内装、外断熱、パネルなどに使われています。多くの場合、ボード状に成形され、その表面に化粧材(ビニルクロスや樹脂フィルムなど)が貼られて仕上げられます。この構造により、外見は美しく、メンテナンスも簡単ですが、内部には空気が通りにくく湿気がこもりやすい欠点もあります。特に接着剤の塗布面や隙間に湿気が残ると、カビの発生リスクが高まります。
1-2. 見えない接着層や内部に湿気がたまるメカニズム
フェノールフォーム自体は防水性がある一方で、空気を通さないため湿気が逃げにくいという側面があります。施工時の気密性が高すぎたり、下地が湿った状態でボードを貼り付けてしまうと、内部に閉じ込められた湿気が化粧材の裏や接着面にたまり、そこからカビが繁殖する原因になります。また、室内の温度差により、壁の内部で結露が発生することもあり、これがカビの発生をさらに助長します。
2. カビが発生した場合の影響とリスク
カビが一度合成樹脂ボードに発生すると、単なる見た目の問題にとどまらず、健康や建材そのものに深刻な影響を与えることがあります。特に内部にカビが広がっている場合、気づいたときには被害が進行していることも少なくありません。
2-1. カビによる健康リスクと空気環境への影響
カビは空気中に胞子を放出し、それを吸い込むことで、アレルギー性鼻炎や喘息、皮膚疾患などを引き起こす可能性があります。合成樹脂ボードにカビが生えても表面には現れないことが多く、内部で静かに繁殖したカビが、室内の空気環境を悪化させるという見えないリスクを抱えることになります。特に換気が不十分な室内では、空気中のカビ菌が滞留し、慢性的な健康被害につながる可能性があります。
2-2. ボードの性能劣化や建物へのダメージの可能性
フェノールフォーム自体はカビの栄養にはなりにくい素材ですが、接着剤や微細なホコリなどにカビが付着して広がるケースが確認されています。また、カビが発生した環境では、湿度の影響で接着力の低下や剥離が起こりやすくなり、結果としてボードの断熱性や強度にも悪影響が及びます。これが壁や天井の仕上げ材の浮きや歪み、場合によっては建物全体の耐久性の低下を招く可能性もあるのです。
3. カビ発見時の対処法と注意点
表面に変色や臭いなどの異常を感じたら、まず疑うべきはボード内部で進行するカビです。ここでは、カビの発見方法と適切な対処法について説明します。
3-1. 表面・裏面の異変に気づくサインと確認方法
表面が波打っていたり、接着面に気泡のような膨らみがある、または壁からカビ臭がする場合は、内部でカビが発生している可能性があります。明らかな変色がなくても、手で触れた際に柔らかくなっていたり、湿っぽさを感じるようであれば、化粧材の裏側でカビが進行していることも考えられます。こうした場合は、表面を一部剥がして内部を確認する必要がありますが、自己判断で作業すると二次被害を招く恐れもあるため、専門業者への相談が安全です。
3-2. 除去・交換すべきケースと業者に相談する基準
カビが表面に達している場合や、内部にまで広がっている疑いがある場合は、除菌処理だけでは不十分で、部分的な交換が必要になるケースもあります。特に高湿度環境下で設置された合成樹脂ボードは、再発リスクが高いため、再度施工環境の見直しも重要です。壁の中の状況が見えない場合は、空気中のカビ濃度測定や赤外線カメラによる温湿度チェックなど、プロの設備による検査を受けるのが最善です。
4. カビを防ぐための施工と使用上の工夫
カビを防ぐには、施工段階での環境管理が極めて重要です。ボードの性能だけに頼るのではなく、湿気をため込まない設計や施工を行うことが、長期的なカビ対策につながります。
4-1. 接着面の乾燥・防湿処理の重要性
ボードを貼り付ける際には、下地が完全に乾燥していることを確認する必要があります。施工現場では見落とされがちですが、わずかに残った湿気が密閉構造の中で蓄積されることで、カビの原因となります。下地材に防湿処理を施したり、透湿性のあるシートを併用することで、湿気の移動をコントロールできます。また、接着剤には防カビ性能を持つものを選ぶと、リスク軽減に役立ちます。
4-2. 通気性・気密性を両立する設計のコツ
通気層を適切に確保しつつ、室内の気密性も保つ設計が理想です。これは一見矛盾しているようですが、例えば壁の内部に空気の通り道を設け、かつ外気の湿気が侵入しないような構造にすることで、湿気の停滞を防ぎつつ高い断熱性能を維持することが可能です。また、室内の湿度管理や換気システムの整備も併せて行うことで、カビに強い空間づくりが実現できます。
5. カビに強い合成樹脂ボード選びと長期維持のポイント
使用するボードの選定も、カビ対策には重要なステップです。素材選びと定期的な管理の両面から、快適で衛生的な住空間を守りましょう。
5-1. 防カビ仕様ボードや裏面処理製品の選び方
現在では、防カビ剤を配合したフェノールフォームボードや、裏面に透湿・防カビシートを一体化させた高機能製品も登場しています。価格はやや高めになりますが、高湿度環境下での使用を想定するなら十分に検討の価値があります。特に、浴室近くや結露の起きやすい北側の壁面などには、こうした製品の使用が推奨されます。カビに強いだけでなく、施工後のトラブル予防にもつながります。
5-2. 定期点検とメンテナンスで再発防止を図る方法
年に1〜2回は、ボードの表面状態を点検し、変色・浮き・臭いがないかをチェックしましょう。また、室内の湿度が60%を超える環境では、除湿器や換気システムの使用を習慣化することも有効です。長期間気づかないまま放置すると、内部のカビ被害は深刻化します。小さな変化に早く気づき、対処することが長期的な快適空間維持の鍵となります。
一般社団法人 微生物対策協会について
一般社団法人 微生物対策協会は、「カビの検査と対策」を専門に行う団体です。建築資材に発生するカビのリスクを科学的に分析し、住環境を守るための啓発とサポートを提供しています。とくに合成樹脂ボードやフェノールフォームといった断熱材は、内部にカビが発生しても気づきにくく、深刻な空気汚染や建材の劣化につながる恐れがあります。
当協会は、平成27年に施行された「アレルギー疾患対策基本法」を根拠に、生活環境改善のための調査・提案活動を行っており、室内の空気環境の「見える化」を通じて健康を支える住宅設計・改修の支援をしています。
カビ菌は目に見えず、気づいたときには手遅れということもあります。私たちは空気中のカビ菌の濃度測定、ボード内部の含水率や菌種の特定など、専門機器と知識を用いて正確な診断を実施します。必要に応じて、最適な除去方法と再発防止策を提供し、安全で快適な暮らしの維持をお手伝いします。
建材の見えない部分に不安がある方、住宅のリフォームや新築でカビ対策を徹底したい方は、ぜひ一度、微生物対策協会へご相談ください。