2025/11/23
グラスウールやロックウールなどの鉱物系断熱材に、カビが生えてしまうことがあるのをご存じですか?
【記事を読んで分かること】
湿気によって鉱物系断熱材にカビが生える原因や施工時の注意点、正しい対処法がわかります。
【記事を読むメリット】
カビに強い断熱環境をつくり、快適で清潔な住まいを維持する知識と対策方法を得られます。
1. 鉱物系断熱材にカビが生えるのはなぜ?
鉱物系断熱材とは、主にロックウールやグラスウールなどを指します。これらは不燃性で安価、断熱性や吸音性にも優れているため、多くの住宅や建築物で採用されています。一見カビとは無縁のように思われがちですが、実際にはカビが発生するケースがあり、その原因は「湿気」にあります。ここでは、鉱物系断熱材とカビの関係を解説します。
1-1. 湿気にさらされやすい場所と断熱材の特性
鉱物系断熱材は繊維状の構造をしており、空気をたっぷりと含んで断熱性を発揮しますが、その構造ゆえに「水分を保持しやすい」性質もあります。天井裏や壁内、床下など、通気性が悪く湿気がこもりやすい場所に施工されることが多く、そこに結露や水漏れが発生すると、断熱材が湿気を吸ってカビの温床になってしまうのです。
1-2. ロックウール・グラスウールの吸湿性と通気性
ロックウールやグラスウール自体は無機質で、直接カビの栄養源にはなりません。しかし、空気中の有機物(ホコリ・皮脂など)が付着し、断熱材が湿気を含んだ状態が長く続くと、その表面にカビが発生することがあります。また、断熱材が湿ると空気の流れが妨げられ、乾燥しにくくなるため、内部の湿度が長期間高止まりし、カビの繁殖を後押ししてしまいます。
2. カビの原因になる施工ミスや環境条件
断熱材にカビが生える原因の多くは、「施工時のミス」や「湿気の管理不足」にあります。どれだけ高性能な素材を使っていても、施工方法や周辺環境によっては簡単にカビが発生してしまうのです。
2-1. 結露・気密不足・防湿処理の不備が引き起こす問題
外気との温度差が大きい場所では、断熱材の周囲に結露が発生しやすくなります。例えば、冬場に室内の暖かい空気が断熱材の裏側で冷やされると、水分が凝縮されて水滴になります。これを防ぐためには、防湿シートの設置や適切な気密処理が必要ですが、施工不良があると水分が断熱材に浸透し、カビの原因になります。
2-2. 湿気がたまりやすい構造とそのチェックポイント
湿気がたまりやすい構造には、通気層の不足、換気口の配置ミス、屋根や外壁の防水不良などがあります。これらが複合的に重なると、断熱材周辺の湿度が上昇し、気づかないうちにカビが広がってしまいます。新築やリフォーム時には、これらの点に注意を払い、定期的な点検を行うことで早期発見が可能になります。
3. 鉱物系断熱材にカビが生えたときの対応法
断熱材にカビが発生してしまった場合、そのまま放置しておくと建材の劣化や健康被害につながる恐れがあります。早期に見つけ、状況に応じた正しい対応をとることが重要です。
3-1. 軽度なカビの処理と被害範囲の見極め方
まずは天井点検口や壁内の点検で、カビの色・におい・広がり方をチェックします。表面に軽度なカビがあるだけで、断熱材が乾いていて構造材まで影響がなければ、除カビスプレーなどでの処理が可能なこともあります。ただし、見た目だけで判断せず、内部の湿度やカビの根の深さも考慮する必要があります。
3-2. 断熱材の交換が必要なケースと判断基準
断熱材が長期間湿っていた場合、内部までカビが浸透し、乾燥させても再発する可能性があります。また、悪臭が取れない、カビが再び発生したなどの症状が見られる場合は、断熱材の撤去・交換が必要です。周囲の構造材や下地にも影響していないか、専門業者による調査を受けることが望ましいです。
4. 鉱物系断熱材でカビを防ぐ施工と対策ポイント
カビの発生を防ぐには、施工段階から「湿気を管理すること」を前提とした設計と処理が必要です。断熱材をカビの原因にしないための基本ポイントを押さえておきましょう。
4-1. 防湿層の設置と通気設計の基本知識
室内側からの水蒸気が断熱材に侵入しないよう、防湿シートをしっかりと施工することが基本です。また、外壁側には通気層を確保することで、断熱材周辺の湿気を効率的に排出することができます。小屋裏や壁内にも自然換気を促す設計を取り入れ、湿気をこもらせない構造が理想です。
4-2. 湿気に強い断熱施工で失敗しないコツ
断熱材を隙間なく敷き詰めることも重要です。隙間があると結露の発生源になり、そこからカビが広がることも。施工中に雨に濡れた断熱材をそのまま使用することは絶対に避け、万が一湿った状態で施工された場合は、しっかり乾燥させてから再設置することが原則です。
5. カビに強い断熱材の選び方と日常メンテナンス
断熱材の性能や施工だけでなく、日常的なメンテナンスも含めた管理が、カビを防ぎ快適な住環境を維持する鍵になります。
5-1. 無機・防カビ加工された断熱材の特徴と選定基準
最近では、鉱物系断熱材に防カビ処理が施された製品も登場しています。無機質素材はカビの栄養源にはなりにくいですが、それでも湿気がこもればリスクはゼロではありません。防カビ剤配合の断熱材や、撥水加工されたグラスウールなどを選ぶことで、より安心して使用できます。選ぶ際は、JIS規格や防カビ性能の表記があるものを確認しましょう。
5-2. 湿気管理と定期点検で断熱材を長持ちさせる方法
断熱材そのものを交換するのは大がかりな作業ですが、湿度をコントロールし、定期点検を行うことで長期間の性能維持が可能です。特に雨漏りや結露が起こりやすい場所、築年数の古い建物は、年に一度程度の天井裏・壁内チェックを習慣化することをおすすめします。換気扇の設置や除湿機の活用も効果的です。
一般社団法人 微生物対策協会のご紹介
一般社団法人微生物対策協会は、「カビの検査と対策」を中心に、住まいや建物内における微生物被害への正しい理解と実践的な対策を推進している団体です。室内空気の「見える化」を通して、安心・安全な生活空間の提供を目指しています。
私たちの活動は、平成27年に施行された「アレルギー疾患対策基本法」に基づき、建築構造や生活環境の改善を通じて、アレルギーの予防と症状の軽減に貢献することを目的としています。
協会では、空気中に漂うカビや細菌などの微生物を正確に測定し、科学的な根拠に基づいた改善策を提案。特に鉱物系断熱材のように目に見えにくい場所でのカビ被害についても、適切な検査と対策が可能です。
住宅の空気品質と住環境を守るために、検査・調査・対策の3本柱でサポートいたします。
カビが見えなくても、そこに影響は確実にあります。見えないリスクにこそ、正しい対処が必要です。
微生物対策協会は、そうした見えない脅威と向き合い、あなたの住まいの健康を守ります。