2025/08/15
24時間換気はカビ予防になるはずが、使い方や環境次第では逆にカビが発生することがあります。
【記事を読んで分かること】24時間換気とカビ発生の関係、原因、正しい運用方法やメンテナンスが理解できます。
【記事を読むメリット】換気トラブルを防ぎ、カビのない快適な室内環境を維持する具体的な方法を学べます。
1. 24時間換気システムとカビ発生の関係
24時間換気システムは、新鮮な外気を取り入れつつ室内の汚れた空気を排出し、カビや結露を防ぐために導入される設備です。しかし、実際には「換気しているのにカビが生えた」という相談も少なくありません。これは、システムの特性や運用方法、周囲の環境によって、カビ予防どころか繁殖を助けてしまうケースがあるからです。ここでは、その仕組みとトラブル事例を解説します。
1-1. 換気システムの仕組みとカビ予防のはずが逆効果になる理由
24時間換気は、建築基準法で義務化されている常時換気方式で、主に第1種(吸排気とも機械)、第2種(機械吸気+自然排気)、第3種(自然吸気+機械排気)の3タイプがあります。理論上は空気の流れを作り湿気を溜めない構造ですが、外気が高湿度の場合、その湿気を室内に持ち込み、結果としてカビの発生条件(湿度60%以上)を満たしてしまうことがあります。また、給気口やフィルターが汚れて換気量が低下すると、空気の流れが弱まり、結露やカビの温床になることもあります。
1-2. 換気不良や誤使用で発生するトラブル事例
実際の事例では、冬場に暖房を強くかけた室内と冷たい外気との温度差で、給気口や窓付近に結露が発生し、そのままカビが繁殖するケースがあります。また、夏場に梅雨の湿った外気をそのまま取り込み、室内湿度が高止まりして壁や家具裏にカビが発生した例も報告されています。さらに、入居者が「電気代節約のため」と換気システムを停止してしまい、短期間でカビが広がったケースも少なくありません。このように、24時間換気は万能ではなく、環境や使い方を誤るとカビトラブルの原因となります。
2. 24時間換気でカビが発生する主な原因
24時間換気は本来、湿気や汚染物質を排出し、カビを防ぐための設備ですが、条件やメンテナンス状態によっては逆にカビを発生させる原因になります。ここでは、よくある原因を2つに分けて詳しく解説します。
2-1. フィルターやダクトの汚れによる換気効率低下
換気システムのフィルターやダクトは、外気のホコリや花粉、排気ガスの微粒子を長期間にわたって捕集します。清掃や交換を怠ると、フィルターが目詰まりして換気量が減少し、室内の湿気が滞留しやすくなります。さらに、フィルター自体やダクト内部にカビが発生し、それが室内に拡散することもあります。特に湿度の高い時期や結露の起きやすい場所では、フィルター表面が湿りやすく、カビの温床となる危険性が高まります。
2-2. 外気の湿気や室内環境とのバランス不良
24時間換気は外気を取り込む仕組みのため、梅雨や夏場など湿度の高い外気をそのまま室内に入れてしまう場合があります。除湿機能のない換気では、湿度管理が不十分になり、室内の湿度が常に60%以上を保ったままになることもあります。また、家具やカーテンで給気口や排気口を塞いでしまうと、空気の流れが滞り、部屋の一部に湿気がこもってカビが発生します。室内の温度設定や空気の循環が適切でないことも、湿気の偏りを助長する要因です。
3. カビを防ぐための24時間換気の正しい運用方法
24時間換気を正しく運用すれば、カビの発生を大幅に抑えることができます。ポイントは「湿度管理」「空気の流れ」「季節ごとの調整」の3点です。ここでは、日常的に実践できる具体的な方法を紹介します。
3-1. 季節ごとの設定と湿度管理のポイント
梅雨や夏場など外気が湿っている季節は、24時間換気に加えて除湿機やエアコンの除湿モードを併用し、室内湿度を40〜60%に保ちます。冬場は逆に過乾燥を防ぐため、加湿器を併用しますが、湿度が上がりすぎないよう湿度計で常にチェックします。また、外気温と室内温度の差が大きい時期は、結露を防ぐために暖房や冷房の設定温度を急激に変えないことが重要です。
3-2. 室内レイアウトや家具配置で換気効率を上げる工夫
給気口や排気口の前を家具やカーテンで塞がないようにし、空気の流れを妨げない配置にします。部屋の隅や家具裏など空気が滞留しやすい場所にはサーキュレーターを置き、空気を循環させます。複数の部屋がある場合は、ドアを半開きにして換気経路を確保することで、湿気の偏りを防げます。さらに、定期的に窓を開けて自然換気を行えば、外気と室内の空気をしっかり入れ替えられ、換気システムの効果も高まります。
4. 24時間換気システムの点検とメンテナンス
24時間換気システムを効果的に運用するためには、定期的な点検とメンテナンスが欠かせません。フィルターやダクトの汚れは換気効率を下げるだけでなく、カビや細菌の繁殖源にもなります。ここでは、家庭や施設で実践できる具体的なメンテナンス方法を紹介します。
4-1. フィルター清掃・交換の頻度と方法
フィルターは、外気のホコリや花粉、排気ガスを取り除く重要な部品です。汚れがたまると空気の流れが悪くなり、湿気がこもってカビの温床になります。一般的には1〜3か月に一度の清掃が推奨されます。清掃時は掃除機でホコリを吸い取り、水洗いできるタイプは中性洗剤で優しく洗い、完全に乾燥させてから再装着します。破損や劣化が見られる場合は速やかに交換します。
4-2. ダクトや換気口のカビ・汚れ対策
長期間使用していると、ダクトや換気口内部にもホコリや湿気が溜まり、カビが発生することがあります。家庭用では自力での完全清掃が難しいため、年1回程度は専門業者による内部洗浄を依頼するのが安全です。日常的には、換気口の周囲をアルコールで拭き取り、ホコリが溜まらないようにしましょう。換気口の結露が頻繁に発生する場合は、断熱施工や換気経路の改善も検討する必要があります。
5. カビ発生時の安全な除去と再発防止策
24時間換気をしていても、条件が重なればカビが発生してしまうことがあります。その場合、まずは被害の範囲を確認し、安全に除去することが大切です。そして、除去後は再発防止のために換気や湿度管理の改善を行う必要があります。
5-1. 自分でできる軽度なカビ除去方法
小規模なカビであれば、ゴム手袋とマスクを着用し、70%前後のエタノールを使って拭き取ります。漂白剤を使う場合は換気を十分に行い、対象素材に適しているかを確認してから使用しましょう。作業後は必ず乾燥させ、湿気を残さないことが重要です。フィルターや換気口にカビが発生している場合は、清掃・交換を行い、内部の湿気や汚れも取り除きます。
5-2. 専門業者依頼と構造的な改善策
壁内部やダクトの奥など、自力で手が届かない場所にカビが広がっている場合は、専門業者に依頼するのが安全です。業者はHEPAフィルター付き機材や防カビ処理を用い、胞子の飛散を防ぎながら根本から除去します。再発防止には、換気システムの経路改善や断熱強化、除湿機の常設など構造的な見直しが有効です。また、季節ごとの運転設定を見直し、外気の湿度や室温に応じた使い方を徹底することで、長期的にカビの発生を抑えることができます。
一般社団法人 微生物対策協会について
一般社団法人微生物対策協会は、「カビの検査と対策」を柱に活動する専門団体です。カビは健康被害や建物の劣化を引き起こす原因となりますが、その多くは目に見えず空気中を漂っています。当協会は室内空気を「見える化」し、リスクを把握して健康を守るための健全な住環境づくりを目的に設立されました。その活動の基盤は、平成27年施行の「アレルギー疾患対策基本法」です。この法律は、アレルギー疾患の予防や症状軽減を目的に、生活環境や建築構造の改善を推進することを定めています。
当協会の目的は、環境微生物災害から住まいと生活環境を守ることです。室内や車内に浮遊する微生物の問題を正しく理解し、公衆衛生の向上、保健医療・福祉・環境保全に寄与しています。具体的には、空気中の微生物や汚染物質の有無・濃度を測定し、その特性を分析して的確な対策を提案します。調査結果では、建物内での微生物被害の多くがカビであり、一度落下したカビ菌は自然死滅しにくく、放置すれば被害は拡大します。
微生物対策協会は、見えるカビも見えないカビも正確に把握し、安心・安全な空間を提供するパートナーとして、今後も科学的根拠に基づいた検査と対策を続けていきます。