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2025/10/23   

湿気に強いは本当?コルク素材とカビの関係を徹底検証

コルクタイルやコルクボードにカビが生えるケースがあり、使用をためらう人も少なくありません。

【記事を読んで分かること】
コルク素材の特性やカビの発生要因、正しい掃除法と防カビ対策が分かります。

【記事を読むメリット】
素材を長く安全に使うための知識が身につき、カビのリスクを減らす具体策がわかります。

コルクタイルやコルクボードは、自然素材ならではの温かみと機能性を兼ね備えた建材・装飾材として人気があります。見た目のやさしさだけでなく、足ざわりの柔らかさや断熱性、防音性に優れており、住宅や店舗、オフィスなどさまざまな空間で使われています。まずは、コルク素材の基本的な性質と、どのような場面で活用されているのかを理解しておきましょう。

コルクは、主に地中海沿岸に生息する「コルク樫(がし)」という木の樹皮から作られる自然素材です。この樹皮は9〜10年ごとに再生し、木を伐採せずに採取できるため、環境にやさしいサステナブルな素材としても注目されています。

コルクの内部は、無数の小さな空気の泡で満たされた細胞構造になっており、これが高い断熱性・防音性・弾力性を生み出しています。そのため、冬は冷たくなりにくく、夏は熱を伝えにくいという特徴があり、足ざわりも柔らかく快適です。また、軽量で加工しやすい点も魅力で、DIYや壁材、床材、掲示板、コースターなど、さまざまな形で使用されています。

コルクの構造は水分や湿気をある程度はじく性質もあり、一定の防水性を持ちますが、完全に防水というわけではないため、使用環境には注意が必要です。

コルク素材が住宅リフォームやDIYで選ばれる理由は、そのやさしい質感と高機能性の両立にあります。特に床材としてのコルクタイルは、足腰への負担が少なく、音を吸収してくれるため、子育て世代やペットのいる家庭でも人気です。

また、断熱性が高いため、冷暖房効率を上げる効果も期待でき、エコな住宅づくりにも適しています。さらに、見た目にもナチュラルでインテリアに溶け込みやすく、無垢材や漆喰などと組み合わせた自然素材住宅とも相性が良いです。

DIYの観点でも、カッターやハサミで比較的簡単に加工でき、扱いやすいため、初心者にも使いやすい素材です。ただし、湿気や水分が多い場所では、カビや変色が起こるリスクがあるため、防水処理や適切な設置場所の選定が大切です。

コルク素材は通気性や調湿性に優れているとされる一方で、「カビが生えた」という声も少なくありません。なぜ自然素材であるコルクにカビが発生してしまうのでしょうか? この章では、カビが繁殖するメカニズムと、コルクの持つ抗菌性がどこまで効果を発揮するのかについて、正しく理解していきましょう。

カビが発生するためには、「湿度」「温度」「栄養(有機物)」の3つの条件が必要です。コルクは植物由来の有機素材であるため、カビにとって栄養源になりやすいという特徴を持っています。

特に問題となるのが湿度の高さです。コルクにはある程度の調湿機能がありますが、限界を超えると湿気を溜め込みやすくなり、表面や内部に水分が残留しやすくなります。例えば、浴室のマット代わりや、台所・洗面所のような湿気の多い場所に設置された場合、コルク表面に付着した水分が乾かずにカビの温床となることがあります。

さらに、皮脂汚れやホコリなどが蓄積されると、それがカビの養分となってしまうため、定期的な清掃がされていないとリスクはさらに高まります。通気性が良いとされるコルクですが、空気が滞るような場所や、家具の下に敷かれて空気が流れにくい状態では、湿気がこもりカビが発生しやすくなります。

コルクには天然の「スベリン」という成分が含まれており、これが水分や細菌の侵入を防ぐバリアのような役割を果たしています。そのため、ある程度の抗菌・防虫効果があるとされ、コルク素材が注目される理由の一つとなっています。

しかし、この抗菌性はあくまで自然の素材が持つ「一定の耐性」であり、過度な湿気や汚れにさらされ続けると防ぎきれないのが実情です。とくに加工されたコルクタイルやボードは、接着剤や塗装が施されていることが多く、これらが経年劣化したり、効果が薄れた場合には抗菌性も弱まってしまいます。

また、抗菌性があるからといって「防カビ素材」として過信すると、結果的にカビが生えてしまったときの対応が遅れる可能性もあります。大切なのは、素材の自然な性質を理解した上で、適切な使い方やメンテナンスを行うことです。

どんなに気をつけていても、湿気や通気不足などの環境が重なれば、コルク素材にカビが生えてしまうこともあります。発見したときに正しい対処をすることが、被害の拡大を防ぐカギとなります。この章では、カビの安全な除去方法と、やってはいけないNG行動について詳しく解説します。

コルク素材にカビが発生した場合、まず大切なのは素材を傷めず、カビの再発を防ぐことです。以下は一般的な手順です。

  1. 換気をしながら作業する
     カビの胞子が空気中に飛散するため、窓を開けたり換気扇を回すなど、必ず換気を行いながら作業を行います。
  2. 乾いた状態で掃除を始める
     コルクが濡れているときにゴシゴシこすると、内部に水分とカビが入り込みやすくなるため、しっかり乾燥させてから掃除を行います。
  3. エタノールや中性洗剤で拭き取る
     市販の無水エタノールを布に含ませ、カビの部分をやさしく拭き取ります。頑固な場合は中性洗剤を使って薄めた液で拭き、その後しっかり水拭き・乾拭きしましょう。
  4. 完全に乾燥させる
     掃除後は湿気を残さないように、風通しの良い場所で完全に乾燥させることが重要です。

なお、カビが奥まで根を張っている場合、表面だけの掃除では不十分なこともあります。色素沈着や臭いが残るようであれば、素材の交換も検討する必要があります。

焦ってカビを除去しようとするあまり、コルク素材を傷めてしまうNG行動も少なくありません。以下のような行動には注意が必要です。

  • 漂白剤や塩素系カビ取り剤の使用
     これらの薬剤は強力ですが、コルクを変色させたり劣化させる原因になります。また、有害なガスが発生するため、室内での使用は特に危険です。
  • 水でジャブジャブ洗う
     コルクは吸水性が高く、水分を吸い込むと内部でカビが繁殖しやすくなります。水洗いは逆効果となるため絶対に避けましょう。
  • 硬いブラシやタワシでゴシゴシこする
     表面のコーティングや繊維が傷つき、見た目が悪くなるだけでなく、そこにカビが入り込みやすくなることもあります。
  • ドライヤーの高温風で一気に乾かす
     熱による変形やヒビ割れを起こす可能性があるため、乾燥は自然乾燥か、弱風の送風がおすすめです。

正しい対処法を知っていれば、被害を最小限に抑えつつ、コルク素材を長持ちさせることができます。焦らず丁寧に、素材に合った方法でカビを取り除きましょう。

カビが発生してから除去するのは手間もリスクもかかります。だからこそ、日頃の予防と正しい使い方がもっとも重要です。コルクタイルやコルクボードを清潔に保ち、長く美しく使うために、どのような工夫ができるのか。この章では、カビを未然に防ぐためのポイントを解説します。

コルクは湿気に強いという印象を持たれがちですが、通気性が悪く湿気がこもる環境では逆にカビやすい素材です。そのため、設置場所の選び方は非常に重要です。

まず、浴室・脱衣所・キッチン周辺などの高湿度エリアでは使用を控えるのが無難です。どうしても使いたい場合は、防水加工されたコルクタイルを選び、壁から浮かせて設置するなど、空気の流れを確保できる工夫が必要です。

また、家具の下など空気の動きが少ない場所に敷いた場合もカビのリスクが高まります。定期的に位置をずらしたり、掃除のたびに持ち上げて裏面を乾燥させる習慣をつけることが大切です。

壁面に貼るコルクボードについても、壁自体が結露しやすい場合には注意が必要です。外壁に面した場所に貼る際は、断熱・通気の確保を意識して、必要であれば専門家に相談するのもひとつの方法です。

防カビ対策として、日々のメンテナンスと室内環境のコントロールは欠かせません。コルク製品を長持ちさせるために、次のような習慣を取り入れるのがおすすめです。

  • 乾いた布や掃除機でこまめにホコリを除去する
     ホコリや皮脂はカビの栄養源になります。掃除のついでにコルクの表面をサッと拭くだけでも、清潔さを保つ効果があります。
  • エタノールスプレーで拭き掃除をする
     1〜2ヶ月に一度、無水エタノールを薄めたスプレーで表面を軽く拭くと、カビの予防になります。使用後は必ず乾拭きして湿気を残さないようにしましょう。
  • 部屋の湿度は40〜60%をキープ
     除湿機や換気を活用し、湿度が70%を超える状態が長時間続かないように気を配ります。特に梅雨時期や冬の結露シーズンは要注意です。
  • 防カビ加工済みの製品を選ぶ
     最近では防カビ加工や撥水処理が施されたコルク製品もあります。少し価格は上がりますが、メンテナンスの手間が減るため、長期的には安心です。

このように、「使い方+環境管理+お手入れ」の3つを意識することで、コルクにカビを寄せ付けない清潔な状態を保つことができます。

コルクは自然素材でありながら、適度な防湿・防音・断熱性能を備えた優秀な建材です。では、他の床材や内装材と比べて、カビの発生リスクはどの程度なのでしょうか? ここでは、コルクと他の代表的な素材を比較しながら、どんな基準で選べばよいのかをご紹介します。

コルク素材をカビ対策の観点から他素材と比較してみましょう。

コルクタイル・ボード

  • 通気性:◎
  • 調湿性:◯(吸湿しすぎると逆効果)
  • 抗菌性:◯(天然スベリン成分)
  • カビリスク:中(環境次第で左右されやすい)

フローリング(無垢・複合)

  • 通気性:△
  • 調湿性:無垢材は◯、複合材は×
  • 抗菌性:なし(カビやすい環境では注意)
  • カビリスク:中〜高(特に結露に注意)

クッションフロア(ビニル製)

  • 通気性:×
  • 調湿性:×(水は通さないが溜まりやすい)
  • 抗菌性:製品による(防カビ剤入りもあり)
  • カビリスク:低〜中(下地に湿気がこもりやすい)

この比較から分かるように、コルクは使い方によってはカビに強くも弱くもなる素材だと言えます。特に「通気性」と「設置環境」が重要なポイントとなります。

カビ対策を重視するなら、素材そのものの性能に加え、家全体の通気性・換気性・断熱性との相性を見ることが大切です。以下の基準を意識して選びましょう。

  1. 設置場所の湿気レベル
     水回りや結露しやすい場所には、防水性・防カビ性に優れた素材を。湿度が比較的安定している場所ではコルクも有効です。
  2. メンテナンスのしやすさ
     表面の汚れを拭き取りやすいか、洗剤や薬剤が使えるかを確認。コルクはやさしく扱う必要があるため、頻繁な清掃が必要な場所には不向きなこともあります。
  3. 断熱・通気とのバランス
     コルクは断熱性が高く、結露を防ぎやすいですが、換気が悪いと逆効果になることも。壁面や床下の通気計画を含めて考えることが重要です。
  4. 加工の有無
     防カビ加工や撥水処理がされた製品であれば、コルクの弱点を補いながら使えます。DIY用であっても、保護剤を塗布しておくことで耐久性が上がります。

素材選びにおいては、「カビが生えにくいこと」だけでなく、「生えても対処しやすいこと」「長く使い続けられること」も考慮するべきです。そうした視点で見れば、コルクは適切に使えば十分にカビ対策に適した素材といえるでしょう。

一般社団法人 微生物対策協会は、**「カビの検査と対策」を柱とした活動を行う専門団体です。近年、住宅や施設内におけるカビ被害が健康や建物の寿命に与える影響が社会問題として注目される中、当協会は室内空気の“見える化”**を通じて、安心・安全な住環境の実現を目指しています。

当協会は、平成27年に施行された「アレルギー疾患対策基本法」に基づき、生活環境の改善や建築構造の見直し、微生物対策の必要性を提唱。この法律にある「アレルギー症状の予防および症状軽減に資するための環境整備」に則り、具体的な検査や対策方法を一般家庭や事業者に向けて提供しています。

主な活動内容は、建物内および車室内に浮遊するカビや細菌などの微生物を測定・調査・分析し、「見えないリスク」を可視化することです。これにより、住宅に潜むカビの種類や濃度、分布状況を明らかにし、最適な除去方法や再発防止策を提案しています。

特にカビは、空気中を浮遊して目に見えないまま広がり、落下した箇所に定着して増殖します。一度発生したカビは自然に消えることはほとんどなく、早期発見と正しい対処が不可欠です。微生物対策協会では、見えるカビだけでなく、見えないカビのリスクにも焦点を当てた対策を徹底しており、時代が求める健全な住環境づくりを支援しています。

また、保健医療、福祉、環境保全の分野とも連携し、空気環境に関する知識の普及や啓発活動にも力を入れております。住宅の新築・リフォームを検討している方、アレルギーや呼吸器疾患に不安のあるご家族がいる方には、当協会の専門的な知見と検査サービスをご活用いただくことで、より快適で健康的な住環境が整えられます。

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