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微生物対策協会

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2025/06/29   

咳が続くあなたへ。カビが体に与える意外な悪影響

風邪でもないのに乾いた咳が続いていませんか?それ、もしかするとカビが原因かもしれません。
【記事を読んで分かること】この記事では、カビによって引き起こされる咳のメカニズムや見落とされがちな発生源、予防法までを詳しく解説します。
【記事を読むメリット】咳の原因を正しく知り、室内環境を改善することで、体調不良を未然に防ぐことができます。

なかなか止まらない乾いた咳。風邪薬を飲んでも改善せず、病院で診てもらっても「異常なし」と言われる——そんな経験はありませんか?実は、その咳の原因がカビである可能性があります。カビはただの見た目の問題ではなく、空気中に目に見えない胞子を放出し、それが呼吸器に入り込むことで体に影響を与えるのです。この章では、乾いた咳の原因としてカビを疑うべきケースと、カビによる咳の特徴を解説します。

咳が出る原因として最も一般的なのは風邪やウイルス感染ですが、治療しても症状が続く場合には別の要因が隠れている可能性があります。その一つがアレルギーや環境による刺激です。

中でも見逃されがちなのが、空気中のカビ胞子による刺激です。カビは湿気の多い浴室や押し入れなどに生えるだけでなく、胞子を空中に放出することで、私たちが知らず知らずのうちに吸い込んでしまっています。この胞子が気道に付着することで、咳反射が起きるのです。

風邪と違い、カビが原因の咳は**熱が出にくく、痰も少ない、いわゆる“乾いた咳”**であることが多く、長期間続くのが特徴です。また、屋内にいると悪化し、外出すると楽になるというような変化が見られる場合もあります。これは、室内環境に原因があるサインです。

カビによる咳の多くは、アレルギー反応軽度の気道刺激が原因です。私たちの体は、異物であるカビ胞子が侵入するとそれを排除しようとします。その際、咳という形で排出を試みるのですが、胞子が繰り返し吸い込まれる環境にいると、咳は慢性的に続くようになります。

さらに深刻なケースでは、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)や過敏性肺炎といった、カビによる免疫反応が強く出る病気が関係していることもあります。これらは医療機関での検査でしか判断できませんが、咳だけでなく息切れや疲労感がある場合には、カビとの関連を疑ってみる必要があります。

つまり、風邪とは異なる性質を持つ“乾いた咳”が続いているときは、住環境に潜むカビが原因となっている可能性があるのです。次の章では、カビが呼吸器に与える具体的な影響や、どのようにして肺に到達するのかを詳しく見ていきます。

私たちが毎日吸っている空気には、目には見えない「カビの胞子」が含まれています。通常であれば体の免疫機能によって排除されますが、特定の環境や体調不良などが重なると、このカビ胞子が呼吸器に入り込み、咳や喘息、さらには肺炎など、深刻な健康被害を引き起こすことがあります。この章では、カビが呼吸器に与える影響と、そのメカニズムについて詳しく解説します。

カビは、繁殖の過程で**胞子(ほうし)**と呼ばれる微細な粒子を空中に放出します。この胞子は非常に小さく、空気の流れに乗って室内全体に広がり、呼吸とともに体内へと吸い込まれてしまいます。

健康な人の体は、吸い込んだ異物を気道の粘液や線毛運動で外へ排出しようとします。しかし、免疫が弱っていたり、カビの量が多かったりすると、気道の粘膜が炎症を起こし、咳やくしゃみ、喉のイガイガ感などの症状として現れます。

さらに深刻な場合、胞子が肺の奥深くまで入り込み、肺胞(はいほう)という呼吸機能の中心部分に炎症を引き起こすこともあります。これが続くと、肺の働きが落ち、酸素の取り込みがうまくいかなくなることもあるため、注意が必要です。

カビが呼吸器に影響を与えるメカニズムには、大きく分けてアレルギー性感染性の2つがあります。

アレルギー性の反応は、カビに対する体の過剰な免疫反応によって起こります。アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)などが代表的で、喘息を持っている人に多く見られます。特徴的なのは、長引く咳・息苦しさ・痰が絡むような感覚で、風邪では説明できない症状が続く点です。

一方、感染性の場合は、カビそのものが肺組織の中で増殖し、炎症を引き起こします。これは主に免疫が極端に低下している人や、慢性疾患を抱えている人に起こりやすく、進行が早いのが特徴です。発熱、強い咳、倦怠感、体重減少などが見られ、治療を怠ると命に関わるケースもあります。

このように、カビによる影響は単なる軽い咳にとどまらず、アレルギー性の反応から重篤な感染症にまで発展する可能性があるのです。カビを甘く見ず、早めに対策をとることが大切です。

次の章では、こうしたカビが実際にどこに潜んでいるのか、住まいの中で見落とされやすい発生源について詳しく見ていきましょう。

「カビ」と聞くと、浴室やキッチンなどの湿気が多い場所を思い浮かべがちですが、実際には私たちの生活空間のあらゆる場所に潜んでいます。目に見えるカビはほんの一部にすぎず、多くは目に見えない胞子として空気中に漂い、私たちの呼吸に影響を与えています。この章では、見落とされがちなカビの発生源と、注意すべきポイントをご紹介します。

カビが好むのは「湿度が高く」「風通しが悪く」「栄養源がある」場所です。これらの条件がそろう場所では、どんな家庭でもカビが繁殖してしまうリスクがあります。以下に、特に注意すべき場所を挙げてみましょう。

  • エアコン内部:フィルターの掃除が不十分だと、内部にホコリと湿気が溜まり、カビが繁殖します。運転時に胞子が部屋中に拡散されるため、咳の原因になりやすい場所です。
  • 押し入れやクローゼット:風通しが悪く、布団や衣類の湿気を含みやすいため、見えない場所でカビが広がっていることがあります。
  • 窓のサッシやカーテン:結露しやすい窓周辺は、放置するとサッシやカーテンの裏にカビが広がります。
  • マットレスやソファの裏側:床に直置きした寝具や家具の裏は湿気がこもりやすく、掃除が行き届かないことでカビが繁殖します。
  • 洗濯機のゴムパッキン:湿った環境と洗剤カスが栄養源となり、カビが定着しやすい場所です。

こうした場所は、「見えない」「普段手を入れにくい」といった理由でカビの温床になりやすく、気づかないうちに空気中のカビ濃度を高めてしまうのです。

カビは見えにくく、臭いも徐々に慣れてしまうため、発見が遅れがちです。しかし、次のような兆候があれば、カビの存在を疑うべきかもしれません。

  • 室内に入ると鼻がムズムズする・咳が出る
  • 晴れた日や外出中は楽なのに、室内にいると息苦しい
  • 布団や衣類からカビ臭を感じる
  • 壁紙や天井に黒っぽい点が現れている
  • エアコン使用時に咳や目のかゆみが強くなる

また、湿度計を設置して、室内の湿度が常に60%以上になっている場合もカビの繁殖環境が整っている可能性が高いです。

大切なのは、「カビはどこにでもいる」という前提で、こまめにチェック・換気・掃除を行う習慣を持つことです。次の章では、カビによる咳を防ぐために実践したい、室内環境の整え方と具体的な対策を詳しくご紹介します。

カビによる咳を防ぐためには、原因となるカビの発生そのものを抑えることが最も効果的です。特に空気の質が健康に直結する現代では、室内環境をどれだけ整えられるかが、咳などの不調を防ぐカギになります。この章では、誰でも今日から始められるカビ対策のポイントを具体的にご紹介します。

カビは湿気を好み、湿度60%を超えると活発に繁殖します。逆に言えば、湿度をコントロールできれば、カビは増殖しにくくなります。

まずは、室内に湿度計を設置して、常に湿度の状態を把握することが第一歩です。理想の湿度は**40〜60%**で、この範囲内で保つように心がけましょう。

具体的な対策としては:

  • 除湿機やエアコンの除湿モードを積極的に活用
  • 晴れた日は窓を2か所以上開けて風通しを良くする
  • 浴室・キッチンは使用後に換気扇を30分以上回す
  • 窓の結露はこまめに拭き取り、放置しない

雨の日や外の湿度が高いときは、無理に窓を開けず、換気扇やサーキュレーターで空気を循環させるのがおすすめです。

また、家具の配置にも注意しましょう。壁にぴったりくっつけると空気が通らずカビの温床になります。壁から5cm以上離して設置し、空気の通り道を確保することが大切です。

室内でカビが溜まりやすく、しかも私たちが見落としやすいのが、空調機器や布製品まわりです。これらは直接空気と関わるため、汚れているとカビの胞子が部屋中に広がる原因になります。

以下のような掃除のポイントを押さえておきましょう:

  • エアコン:フィルターは2週間に1回を目安に掃除。年に1回はプロの内部清掃も検討。
  • カーテン:湿気を吸いやすいため、洗濯表示を確認のうえ月に1回程度洗うのが理想。
  • 家具の裏:ホコリと湿気が溜まりやすいため、3ヶ月に1度は動かして掃除する習慣を。
  • 寝具や布団:湿気がこもらないように天日干しや布団乾燥機を活用。

また、布製品には「防カビスプレー」や「除湿シート」を活用するのも効果的です。特に収納の中では空気がこもりやすいため、湿気取りアイテムを組み合わせることで、カビの発生を抑えることができます。

このように、湿度・空気・清掃の3本柱を意識することで、室内環境を快適に保ち、カビによる咳や不調を未然に防ぐことができます。

次の章では、それでも咳が続いてしまった場合の対処法や、医療機関への相談の目安について解説していきます。

カビによる咳は、軽度であれば環境改善や生活習慣の見直しで自然におさまることもあります。しかし、咳が長引いたり、他の症状を伴う場合は、自己判断せずに専門医を受診することがとても大切です。この章では、咳が止まらないときに取るべき行動と、受診の目安について解説します。

市販の咳止めを使っても咳が止まらない場合、まずは原因がカビなどのアレルゲンである可能性を疑いましょう。風邪やインフルエンザとは異なり、カビが原因の咳は薬で一時的におさまっても、環境が変わらなければすぐに再発します。

このような場合は、以下の対策を試してみてください:

  • 寝室や長時間過ごす部屋の掃除を念入りに行う
  • 布団、カーテン、エアコンなど咳の原因となりやすい場所を集中的に除菌・除湿する
  • 空気清浄機や除湿器を24時間稼働させ、空気の質を安定させる

また、咳の出方やタイミングを記録するのも有効です。たとえば、「夜にひどくなる」「家の中でだけ出る」といったパターンがある場合、環境性の問題である可能性が高くなります。

こうした対策をしても改善が見られない場合や、2週間以上咳が続いている場合は、迷わず医療機関を受診しましょう。

咳が長引いているとき、医師に的確な判断をしてもらうためには、日常生活での症状の傾向や住環境についても伝えることが重要です。以下のような情報を整理しておくと診断がスムーズになります。

  • いつから咳が続いているか
  • どの時間帯・場所でひどくなるか(例:寝室・リビング)
  • 他にどんな症状があるか(熱、痰、息苦しさなど)
  • 自宅の湿度状況やカビの気になる箇所の有無
  • 既往症(喘息、アレルギー、肺疾患など)

医療機関では、レントゲンや血液検査、アレルギー検査などを通して、咳の原因を特定します。もしカビによるアレルギーや感染症の疑いがあれば、専門的な治療(抗真菌薬やアレルギー抑制薬など)が行われることになります。

大切なのは、「たかが咳」と放置せず、**“長引く咳には必ず原因がある”**という意識を持つことです。特にカビは見えにくく、気づかないうちに私たちの体に影響を与えていることもあるため、体のサインを見逃さず、早めに対応することが健康維持のカギとなります。

一般社団法人微生物対策協会は、「カビの検査と対策」に特化した専門団体として設立されました。現代の住環境では、目に見えないカビや微生物が空気中に浮遊しており、それが原因となって健康被害や建物の劣化が進行する事例が増えています。私たちは、こうした問題に対処すべく、**室内空気の「見える化」**を通じて、人々の健康を守る取り組みを行っています。

当協会の活動は、平成27年に施行された**「アレルギー疾患対策基本法」**に基づいています。この法律は、アレルギー疾患の予防や症状軽減のために、生活環境や建築構造の改善を求めています。協会はその理念を受け、空気環境の検査・対策を専門的に実施しています。

私たちの目的は、環境微生物による被害から住まいや生活を守ること。室内や車内に浮遊するカビをはじめとする微生物が、呼吸器や免疫系に与える影響を理解し、そのリスクを減らすことで、公衆衛生の向上に寄与することを目指しています。また、保健医療、福祉、環境保全分野とも連携し、広く社会に貢献する活動を推進しています。

協会では、専門機器を用いた空気中のカビ検査・調査を行っており、目には見えない汚染物質を数値として「見える化」することで、具体的な対策につなげています。特に建物内では、カビによる被害が最も多く確認されており、エアコンや壁の裏、床下などに広がる「見えないカビ」への早期対応が重要です。

カビの胞子は一度空中に放出されると、落下しても自然に死滅することはほとんどなく、呼吸を通じて体内に取り込まれてしまいます。そのため、見えないリスクを正しく把握し、科学的根拠に基づいた予防と対策が必要不可欠なのです。

微生物対策協会では、「見えるカビ」だけでなく、「見えないカビ」まで明確にし、安心で安全な空間を作るための支援を行っています。住まいの空気を整えることが、健康を守る第一歩——それが私たちの信念です。

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