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2025/10/31   

セメントでも油断大敵!繊維セメント板に潜むカビのリスクとは

防水性に優れたファイバーセメントボードですが、使い方を誤るとカビの原因になることがあります。
【記事を読んで分かること】
繊維セメント板にカビが発生する条件や原因、防ぐための施工と管理のポイントが分かります。
【記事を読むメリット】
見落としがちな湿気リスクを理解し、カビのない安全な建材使用ができるようになります。

ファイバーセメントボード(繊維セメント板)は、近年の建築現場やリフォームで多く使用されている建材のひとつです。防火性・防水性に優れており、外壁や軒裏、室内の下地材など幅広い場所に使われています。しかし、万能に見えるこの建材にも、使用環境や施工方法によってはカビのリスクが潜んでいます。まずは、ファイバーセメントボードの基本的な構造や性能についてしっかり理解しておくことが重要です。

ファイバーセメントボードは、セメントと無機質の繊維(セルロースファイバーやガラス繊維など)を主な材料とし、圧縮・成型して作られた板状の建材です。一般的にはアスベストを含まない安全な素材として製造されており、環境や健康への配慮がなされています。
セメントが主成分であるため、耐火性や耐水性に優れているのが大きな特徴です。木材や石膏ボードに比べて腐食しにくく、シロアリにも強いため、住宅の構造を守るための外壁下地材や軒天などによく使われます。また、強度もあるため、外部からの衝撃や風雨にも耐える構造材として信頼されています。これらの特性から、戸建て住宅だけでなく、集合住宅や商業施設など、さまざまな建築物に活用されています。

ファイバーセメントボードは、セメントの持つ耐水性と耐火性をそのまま活かす形で成型されているため、湿気が多い環境や火災リスクの高い場所にも安心して使える素材です。例えば、キッチンや浴室の壁、外壁やバルコニーの天井など、湿気や熱の影響を受けやすい場所での使用に適しています。また、国の建築基準でも「不燃材」として認定されている製品が多く、防火地域の建築物に使用されるケースも少なくありません。
ただし、防水性に優れているとはいえ、常に湿気にさらされる環境水分が排出されにくい構造では、素材自体にカビが生えにくくても、下地や接合部、表面仕上げとの間にカビが発生する可能性があります。そのため、繊維セメント板の性能を過信せず、使用場所や施工方法をよく考慮することが大切です。

セメント系の建材は「カビが生えにくい」と思われがちですが、使用環境や施工条件によっては、ファイバーセメントボードにもカビが発生することがあります。特に日本のように湿度が高い地域では、素材の特性だけに頼った施工では十分とは言えません。ここでは、セメント系でもカビが生える理由や、実際に起こりやすいカビ発生のケースについて解説します。

ファイバーセメントボードは、無機質でカビが繁殖しにくい素材とされていますが、「素材そのものに栄養がない=絶対にカビない」わけではありません。カビは、湿気・温度・栄養分・時間の4条件が揃えば、ほぼどこにでも繁殖します。繊維セメント板の表面に、空気中のホコリ・皮脂・雨だれなどが付着すれば、そこがカビの栄養源になります。また、施工後すぐの雨濡れや乾燥不足、さらに密閉された空間に設置された場合は、通気不足による結露が生じ、カビが発生する可能性があります。
特に問題となるのは、表面ではなく裏面や接合部、壁内部の隙間など、見えにくい部分での発生です。ここにカビが発生すると、気づいた時には広範囲に拡大していることもあり、補修に大きなコストがかかるケースもあります。

カビが実際に発生している現場を分析すると、いくつかの共通した要因が見えてきます。まず多いのが、下地材の湿気が抜けにくい施工です。ファイバーセメントボード自体は水分に強くても、裏側に使われている木材や断熱材が湿気を含んでいると、そこがカビの温床になります。また、ボードの継ぎ目処理が甘い、または防水施工が不完全な場合も、水分が入り込み、内部でカビが繁殖する原因になります。
次に、換気が不十分な空間もリスクが高まるポイントです。たとえば、外壁の軒天や、浴室に面した壁などは、湿気がこもりやすく、排湿がうまくいかないとカビの原因になります。さらに、最近では高気密・高断熱の住宅が増えていますが、これが裏目に出て、内部結露や湿気の停滞を招く例もあります。こうしたケースでは、いくら防水性に優れたボードを使っていても、カビの発生は避けられません。

ファイバーセメントボードは性能面で優れた建材ですが、使い方を誤るとカビが発生することがあります。とくに、施工時の判断ミスや環境に対する配慮不足が原因となっているケースが多く見られます。この章では、実際に現場で起きたカビ被害や、施工ミスによるトラブル事例を紹介します。

ある新築住宅では、外壁にファイバーセメントボードを使用しましたが、施工中に雨にさらされた状態で乾燥処理が不十分なまま仕上げに進んでしまい、壁内部に湿気が残留。半年後、室内の壁紙にカビが浮き上がるようになり、調査の結果、下地の合板とセメント板の間にカビがびっしり繁殖していたことが判明しました。
また別の事例では、継ぎ目のシーリング不良により、微細な隙間から水分が浸入し、ボードの裏面に水が滞留。通気層も十分に確保されていなかったため、カビの温床となってしまいました。これらの事例に共通しているのは、「セメントボードの防水性に過信があり、周辺環境や施工状態への注意が不足していた」という点です。

カビは一度発生すると、空気中に胞子が拡散し、目に見えない範囲にも広がる可能性があります。特に問題となるのが、通気層の設計不良や換気不足によって、セメントボードの裏側に湿気が滞留するケースです。
たとえば、集合住宅のバルコニー天井にファイバーセメント板を使った現場では、内側の通気が不足しており、見えない裏面にカビが発生。建物全体の見直しが必要になるほどの大規模改修に発展したケースもあります。これは、素材がいくら優れていても、環境と構造設計が伴っていなければ意味がないことを示しています。

カビの発生を未然に防ぐためには、「素材選びだけ」では不十分です。施工環境や使用条件に応じた事前対策を行うことで、長期的に清潔で安全な状態を保つことができます。

ファイバーセメントボードを使用する前に、設置する場所の湿度環境と下地の含水率を確認することが重要です。たとえば、雨が当たりやすい外壁、浴室近くの壁、結露が発生しやすい北側の部屋などは、特に注意が必要です。
また、ボードの裏に使う下地材(合板や断熱材など)も、湿気に強い素材を選ぶか、防湿シートなどで適切な処理をしておくと安心です。乾燥した状態での施工を徹底し、湿気が逃げる構造にしておくことが、カビを防ぐ第一歩です。

セメントボード自体にはカビが付きにくいとはいえ、周囲の材料や空気環境が悪ければ意味がありません。防カビ処理としては、表面仕上げに防カビ塗料を使用する裏面に通気層を設ける継ぎ目をしっかりシーリングするなどの方法が有効です。
また、ボードを貼る前に、施工マニュアルをしっかり確認し、通気層の確保や排水処理の設計がされているかどうかを見直す必要があります。カビの発生は「後から対応」よりも「前もって予防」の方がはるかに効果的で、コストも抑えられます。

カビのリスクを最小限に抑え、ファイバーセメントボードを長持ちさせるためには、施工後の管理や点検も重要です。この章では、効果的なメンテナンス方法をご紹介します。

外壁や軒裏などに使用しているファイバーセメントボードは、年に1〜2回の点検をおすすめします。特に、継ぎ目や隙間、結露しやすい場所には注意を払い、初期のカビや黒ずみを見つけたらすぐに対処することが肝心です。
カビの初期段階であれば、専用のカビ除去剤で清掃することで対処可能です。放置すると内部まで浸透し、張り替えが必要になる場合もあるため、早期対応がコスト削減にもつながります

カビの再発を防ぐには、プロの目による点検と診断が非常に効果的です。とくに目に見えない構造内部や、通気の状態までは一般の人では判断が難しいため、専門業者による空気環境調査や赤外線サーモグラフィー診断などを取り入れるのが望ましいです。
また、防カビ処理や補修工事を行う場合も、施工ミスを防ぐために経験豊富な業者を選ぶことが重要です。事後の対応より、定期的な予防策の実施が、長期的なコストと安心につながります。

一般社団法人微生物対策協会は、「カビの検査と対策」を柱とした活動を展開する専門団体です。カビによる健康被害や建物の劣化など、住環境にまつわる多くの問題に対処するため、**室内空気の「見える化」**による健全な住環境づくりを目的として設立されました。

当協会の活動は、平成27年に施行された「アレルギー疾患対策基本法」に基づき、アレルギーの予防と症状軽減のために、生活環境の改善と建築構造の見直しを推進しています。

私たちは、空気中に浮遊するカビや微生物の調査・検査・分析を行い、その情報を可視化することで、正確なリスク評価と対策を可能にしています。とくに、目に見えない「見えないカビ」に着目し、空気環境の健全性を維持・向上させることを重視しています。

また、カビは落下しても自然には死滅せず、空気中を漂い続けます。そのため、建材の選定や施工だけでなく、定期的な空気環境のチェックと対策が不可欠です。微生物対策協会では、住宅・施設の構造や用途に応じた専門的な診断と改善提案を行っており、安心して暮らせる住環境を実現するためのサポートを提供しています。

無垢材や繊維セメント板など、自然素材・高機能素材を使った建築をご検討の方は、ぜひ一度当協会のサービスをご活用ください。見えないリスクを「見える化」し、確かな安心を手に入れるお手伝いをいたします。

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