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2025/10/29   

カビに弱い?麻・ジュート建材のリスクと正しいメンテナンス方法

天然素材として人気の麻やジュート製建材ですが、吸湿性が高いためカビの発生リスクが懸念されています。
【記事を読んで分かること】
麻・ジュート製建材とカビの関係、対策方法、建材選びのポイントが分かります。
【記事を読むメリット】
自然素材を安全に活用しながら、カビのリスクを最小限に抑える知識と対策が身につきます。

自然素材として人気を集める麻やジュートは、環境に優しくデザイン性にも優れているため、建築やインテリアの分野で注目を浴びています。しかし、吸湿性が高いという性質が、室内環境に与える影響についてはあまり知られていません。この章では、麻・ジュート建材の基本的な特徴と、その魅力の裏にある注意点をわかりやすく解説します。

麻やジュートは、自然素材の中でも特に再生可能で地球環境にやさしい繊維として知られています。これらの植物繊維は生育が早く、農薬や化学肥料をほとんど必要としないことから、持続可能性の高い素材として注目を集めています。建材として使用される場合は、断熱性や調湿性に優れている点が評価され、ナチュラルテイストの住まいづくりを目指す人々に支持されています。とくに内装材や壁紙、カーペット、天井材などで使用されることが多く、見た目のやさしさと手触りの良さから人気が高まっています。また、通気性が良いため夏は涼しく、冬は湿気を適度に保つという面でも優れており、快適な室内環境づくりに貢献してくれる素材です。

吸湿性とは、空気中の水分を吸収する性質のことで、麻やジュートはこの特性が非常に高い繊維です。この性質があるおかげで、室内の湿度が高くなると余分な水分を一時的に吸収し、乾燥すると放出してくれるため、快適な湿度を保ちやすくなります。これが「調湿効果」としてメリットとされており、結露の軽減やカビの予防にもつながるとされています。しかし一方で、素材自体が水分を長く抱え込んだままになると、逆にその湿った環境がカビの発生源になってしまう可能性もあります。特に換気が不十分な場所や、湿度が高い地域では、その吸湿性の高さが裏目に出てしまうことも少なくありません。つまり、吸湿性の高い建材は取り扱い方を間違えると、室内環境を悪化させるリスクも抱えているのです。

麻やジュートは湿気を吸いやすい性質を持つため、調湿素材として好まれますが、それが原因でカビの温床になってしまうケースもあります。ここでは、カビが発生するメカニズムと、吸湿性が高い建材がどのように影響しているのかを詳しく解説します。

カビは、湿度が60%を超える環境下で活発に繁殖すると言われています。さらに、温度が20〜30度、栄養となる有機物がある状態が重なると、急速に増殖します。麻やジュートといった天然繊維は、まさにカビにとって「好都合な住処」になる要素を多く含んでいます。これらの素材は空気中の水分を吸収しやすく、湿った状態が長時間続くと、内部にまで湿気が染み込み、乾きにくくなることがあります。また、麻やジュート自体が有機物のため、カビの栄養源にもなってしまいます。このように、吸湿性の高さは一見するとメリットですが、湿気がたまりやすい季節や環境では、かえってカビの繁殖を助長する要因となってしまうのです。

カビが生えるかどうかは、湿度・温度・栄養源・時間の4つの条件が揃うかによって左右されます。麻やジュート建材を使用している空間では、湿気がこもりやすい部屋、たとえば浴室近くの壁や床、風通しの悪い収納スペースなどがカビのリスクが高くなります。また、夏場の湿度が高い地域や、冬場に結露が発生しやすい家では、建材が常に水分を含みやすくなるため注意が必要です。さらに、麻やジュートは化学処理されていない製品が多く、防カビ加工が施されていないものは特にカビが発生しやすい傾向があります。これらの建材を安全に使用するには、素材の性質を理解したうえで、環境に応じた使い方やメンテナンスが不可欠です。建材の相性と使用場所を誤ると、カビのリスクが一気に高まってしまうのです。

天然素材ならではの風合いや調湿性で選ばれる麻・ジュート製建材ですが、使用環境によっては深刻なカビ被害を招くことがあります。ここでは、実際に起こったカビの発生事例や、カビが発生しやすい場所・条件について詳しく見ていきましょう。

ある住宅で、リビングの壁材にジュートを使った内装仕上げを施していたところ、梅雨の時期に壁一面にカビが発生。見た目はまだら模様で、最初は汚れに見えましたが、拭いても取れず、専門業者による検査でカビと判明しました。原因は、ジュートの吸湿性と通気不足、さらに冷暖房による温度差によって生じた結露でした。また、別の事例では、麻素材を使った天井板が施工後1年以内にカビの温床となり、天井裏の通気が不十分だったことが原因とされました。いずれも共通しているのは、「吸湿性が高い素材を使っているのに湿気対策が不十分だった」という点です。こうした実例は、建材の選び方だけでなく、設計段階での環境配慮の重要性を示しています。

麻やジュート建材を選ぶ際は、見た目や素材感だけでなく、設置する場所の湿度環境をしっかり把握することが大切です。たとえば、風通しが悪く、湿気がこもりやすい空間では使用を避けるか、調湿機能を持つ他の建材との併用が望ましいです。また、防カビ加工がされている製品を選ぶことで、ある程度のリスクを軽減できます。さらに、設置後のメンテナンス計画も重要で、定期的な換気、除湿器の使用、湿度計によるモニタリングなど、環境を整える習慣が欠かせません。天然素材は扱い方を間違えると「健康的なはずの建材」が「カビの温床」になってしまう恐れがあるため、建材選びの段階から長期的な使用環境を見据えた判断が求められます。

麻やジュートの建材を安全に使用するためには、素材の特性を理解し、それに合った対策を講じることが不可欠です。この章では、カビの発生を未然に防ぐための基本的な対策と、素材そのものに施す処理方法について解説します。

カビ対策で最も基本かつ効果的なのが、湿度をコントロールすることです。麻やジュートのように吸湿性の高い建材は、空気中の湿気を抱え込みやすいため、湿度60%以下を維持することがカビ予防に重要なポイントとなります。換気の頻度が少ないと、素材に溜まった水分が乾燥せず、カビの繁殖を助長してしまいます。日中は窓を開けて風通しを確保するほか、サーキュレーターや換気扇を活用して空気の流れをつくることが有効です。また、除湿機やエアコンのドライモードを利用し、室内の湿度をチェックしながら調整することも大切です。特に、梅雨や秋の長雨シーズン、冬の結露が多くなる時期は注意が必要です。定期的な湿度確認には湿度計の設置がおすすめで、建材が使われている場所の湿度を常に「見える化」することで、早期の対処が可能になります。

麻やジュートの建材を導入する前に、防カビ処理を施すことでカビの発生リスクを大幅に軽減できます。市販されている防カビスプレーやコーティング剤には、天然素材専用のものもあり、建材の風合いや通気性を損なわずに保護することができます。特に水分が溜まりやすい場所には、撥水性のある仕上げ剤や、抗菌作用を持つ塗料の活用も効果的です。また、施工前の段階で専門業者に相談すれば、素材に適した処理方法や、適正な設置場所のアドバイスを受けることも可能です。ただし、防カビ処理は万能ではなく、定期的な再施工が必要な場合もあるため、メンテナンススケジュールを確認しておくことも忘れてはいけません。見た目の美しさを保ちながら長持ちさせるには、こうした下準備と継続的なケアが欠かせません。

見た目や素材の良さだけで建材を選ぶと、後々カビ被害など思わぬトラブルを招くことがあります。麻やジュートのように吸湿性が高い天然素材を安心して使うためには、素材単体ではなく「建材全体のバランス」と「定期的な管理体制」を含めた選び方が必要です。この章では、後悔しないための具体的な対策と考え方をご紹介します。

天然素材の風合いや通気性を活かしながら、カビの発生を抑えるには、素材の組み合わせ方を工夫することが効果的です。たとえば、ジュートや麻を壁材に使う場合、その背面や周囲に**カビに強い無機系素材(石膏ボードやセラミック系材)**を配置することで、湿気がこもるリスクを軽減できます。また、吸湿性がある天然素材でも、あらかじめ防カビ処理された製品を選ぶ、あるいは別の自然系建材(竹材や漆喰など)に代替するという選択肢もあります。これらの素材は調湿性がありつつも、カビに対して比較的強い特性を持っているため、ナチュラルな空間づくりにおいて相性が良いのです。デザインと機能性のバランスをとりながら、住環境全体での調和を考えることが、後悔のない建材選びにつながります。

どんなに慎重に建材を選んでも、設置場所の環境や季節の影響によって湿気がこもり、カビが発生する可能性はゼロにはできません。だからこそ、設置前の環境調査と、導入後の定期的なメンテナンスが非常に重要です。専門業者による空気中の湿度・温度・微生物の測定を行えば、建材に適した場所かどうかが明確になります。導入後も、年に一度は点検を行い、カビの兆候がないかをチェックすることで、大きな被害を未然に防げます。また、建材自体の寿命や劣化状態を見極めるためにも、定期点検は有効です。特に自然素材は経年劣化が早い傾向にあるため、専門的な視点からのアドバイスを受けながら、住まいの健康を維持していくことが求められます。

一般社団法人微生物対策協会は、「カビの検査と対策」を専門に行う団体として設立されました。現代の住宅や建物においては、カビによる健康被害や構造材の劣化といった深刻な問題が増加しており、それらに対処するための科学的かつ実践的なアプローチが求められています。協会では、室内空気の「見える化」を通して、目に見えないリスクを明確にし、健全な住環境を守ることを目的としています。

この取り組みは、平成27年に施行された「アレルギー疾患対策基本法」に基づいており、法的根拠を持った活動として信頼されています。この法律では、アレルギーの予防と症状の軽減のため、生活環境の改善や建築構造の見直しが推進されることが定められています。微生物対策協会は、これを受けて、カビを中心とした環境微生物によるリスクから人々の暮らしを守る活動を続けています。

私たちの主な活動は、空気中に漂う目に見えない汚染物質の測定と分析です。カビの胞子や微粒子は呼吸とともに体内に取り込まれ、アレルギーや体調不良の原因となることがあります。協会では、専用機器を用いた測定で、それらの浮遊物質の有無や濃度を「見える化」し、的確な対策につなげています。

建物内の微生物被害の中でも、カビは特に発生件数が多く、目に見えない箇所で進行することも珍しくありません。落下したカビ胞子は自然には死滅せず、再び空中に舞い上がることで被害が拡大するリスクがあります。そうした見えない脅威に対応するには、専門的な検査と調査が不可欠です。

住まいに安心と安全を取り戻すため、微生物対策協会は「見えないカビ」と「見えるカビ」の両面に対応し、健やかな暮らしを支えるパートナーとしての役割を担っています。カビに悩まされている方、自然素材の建材を検討されている方は、ぜひ一度、専門的な診断をご検討ください。

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