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2025/11/10   

カビ臭い部屋の原因は吸音材かも?見落としがちな原因と対処法

気づかぬうちに吸音材にカビが生え、部屋全体に嫌な匂いが広がることがあります。

【記事を読んで分かること】
吸音材にカビが生える原因やカビによる匂いの正体、安全な除去と防止策が分かります。

【記事を読むメリット】
カビ臭のない快適な室内環境を維持するための具体的な方法と製品選びのコツが得られます。

見た目では気づきにくい吸音材ですが、実はカビが発生しやすい素材です。ここでは、なぜ吸音材にカビが生えるのか、その仕組みと原因を解説します。

吸音材は、音を吸収するために多孔質(小さな穴が無数に空いている)であることが特徴です。この構造が音を和らげる効果を生み出しますが、同時に空気中の湿気を吸いやすいという性質も持ち合わせています。特にグラスウールやウレタン系の素材は水分を内部に溜め込みやすく、乾きにくいため、カビにとって理想的な環境となります。さらに、これらの吸音材は壁の内部や家具の裏など、通気が悪い場所に設置されることが多いため、湿気がこもりやすく、カビが繁殖しやすい状況を作り出してしまいます。

カビは温度20~30℃、湿度60%以上の環境で活発に繁殖します。特に梅雨や冬場の結露が多い季節は、室内の湿度が高くなり、吸音材に水分が染み込みやすくなります。また、エアコンや加湿器を頻繁に使用する家庭では、知らず知らずのうちに湿気が多くなっている場合があります。このような状態で換気が不十分だと、吸音材内部に湿気が滞留し、カビが発生します。壁や天井に設置された吸音材は直接目に触れないため、カビの発見が遅れる傾向があり、匂いや健康被害が出て初めて問題に気づくケースもあります。

カビが発生すると、特有のカビ臭が部屋全体に広がります。ここでは、その匂いの原因と、私たちの体への影響について詳しく説明します。

カビ臭とは、カビが繁殖する際に放出する「MVOC(揮発性有機化合物)」と呼ばれる成分が原因です。この成分は空気中に広がり、独特のかび臭さを感じさせます。特に吸音材のように、湿気を含みやすく、密閉された空間にある素材はMVOCが蓄積しやすくなります。さらに、吸音材の内部にカビが繁殖している場合、表面を掃除しても匂いが消えないことが多く、根本的な対処が必要となります。

カビは見た目や匂いだけの問題ではなく、健康へのリスクもあります。カビの胞子やMVOCを長期間吸い込むことで、アレルギー性鼻炎、喘息、皮膚炎、頭痛などの症状を引き起こすことがあります。特に子どもや高齢者、免疫力の低い方にとっては深刻な健康被害の原因となる可能性があります。吸音材からの匂いに気づいたら、すでに室内の空気にカビが広がっている恐れがあるため、早急な対策が求められます。

カビが吸音材に発生してしまった場合、適切な方法での除去が必要です。家庭でできる対処から専門業者への依頼まで、状況に応じた対応方法をご紹介します。

吸音材にカビが生えている場合、まずは表面の汚れを掃除機で軽く吸い取り、アルコールスプレーや消毒用エタノールを使って拭き取りましょう。ただし、吸音材が多孔質であるため、表面だけを掃除しても内部に根を張ったカビまでは除去できないことが多いです。その場合は、素材ごと交換するのが最も確実です。また、掃除の際はマスクや手袋を着用し、換気をしっかり行うことが大切です。市販の防カビスプレーは一時的な効果しかないため、根本対策にはなりにくいことを理解しておきましょう。

吸音材内部までカビが侵食している場合や、匂いが部屋全体に広がっている場合には、専門業者への依頼が最も安全です。業者は専用の機材を使ってカビの除去や消臭作業を行い、必要であれば吸音材の交換や壁の修繕も対応してくれます。費用の目安としては、部分的な除去なら数万円、広範囲な施工や材料交換を含むと10万円以上かかることもあります。見積もり時には「再発防止策の有無」や「施工後の保証内容」を必ず確認するようにしましょう。

カビを発生させないためには、日頃の室内環境管理が非常に重要です。ここでは、カビが好まない環境を作るための具体的な方法をご紹介します。

カビを防ぐ基本は、「湿気をためないこと」です。まず、1日に数回は窓を開けて部屋の空気を入れ替えましょう。特に入浴後や料理のあとなど、湿気がこもりやすい時間帯の換気が効果的です。また、除湿器やエアコンの除湿機能を活用することで、室内の湿度を60%以下に保つことができます。湿度計を設置して目で湿度を確認することもおすすめです。吸音材がある部屋は、空気が停滞しやすいので、サーキュレーターなどで空気を動かす工夫も有効です。

吸音材の周囲にホコリがたまると、湿気と混ざってカビの栄養源になります。定期的に掃除機で吸い取るだけでもカビの発生リスクを下げることができます。また、湿気が多くなりそうな時期には、防カビ剤を事前に使用しておくことも有効です。吸音材の表面が劣化していたり、色が変わっていたりする場合は、早めに交換を検討しましょう。普段から「触らず、見えない場所こそ注意する」という意識が、カビ予防につながります。

近年では、カビが発生しにくい吸音材や、カビ臭対策に効果的な製品が多数登場しています。おすすめのアイテムと選び方をご紹介します。

最近では、防カビ加工が施された吸音材も販売されており、特に湿気が多い地域や地下室などに設置する際には非常に効果的です。購入時には「防カビ性能の等級」や「通気性・吸湿性のバランス」を確認しましょう。高密度すぎる吸音材は湿気がこもりやすくなるため、通気性とのバランスが重要です。製品の中にはJIS規格に基づいた性能試験をクリアしたものもあるので、信頼性のある製品を選ぶことが大切です。

カビの匂いが気になる場合は、空気清浄機や消臭剤の活用も有効です。HEPAフィルター搭載の空気清浄機は、カビの胞子を除去する効果があります。また、活性炭入りの消臭剤は、空気中の臭い成分を吸着し、部屋全体の空気をクリーンに保ちます。さらに、天然アロマを使用した消臭スプレーは化学物質を避けたい方にもおすすめです。匂い対策は一時的なものではなく、カビの原因と合わせて根本的に改善する視点が大切です。

一般社団法人微生物対策協会は、「カビの検査と対策」を中心に、室内空気の「見える化」を通じて健康で安心できる住環境づくりを支援する団体です。当協会は、平成27年に施行された「アレルギー疾患対策基本法」に基づいて設立されました。この法律では、アレルギーの予防や症状軽減のために、生活環境の改善を推進することが求められています。

当協会の主な目的は、環境中の微生物による健康被害から住まいと生活環境を守ることです。特に室内や車内に浮遊するカビなどの微生物による影響を明らかにし、よりよい公衆衛生の実現を目指して活動しています。

私たちは、カビが浮遊する空気を「見える化」することで、被害の特定と対策の方向性を明確にします。一般家庭や施設における検査を通じて、目に見えない空気中のカビの有無や濃度を数値化し、その特性に応じた最適な対応を提案しています。見えないカビも、見えるカビも、その存在と影響を的確に捉えることが、安心・安全な空間づくりに直結します。現代において求められる「健全な住環境」を目指し、日々活動を続けています。

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