2025/10/26
畳のカビは放置NG!健康を守るための対策と素材選びを徹底解説
畳をめくると、下地材にびっしりとカビが…そんな経験はありませんか?実は多くの家庭で起こっている問題です。
【記事を読んで分かること】畳の下地材にカビが生える原因と、それぞれの素材の特徴、対処法と予防策がわかります。
【記事を読むメリット】健康リスクや住環境の悪化を防ぎ、安心して長く使える畳環境をつくるための知識が身につきます。
1. 畳の下地にカビが生える原因とは?
畳の上は清潔でも、めくってみると下地材にびっしりカビが…というケースは珍しくありません。とくに日本の気候や住宅環境では、畳の下はカビの温床になりやすい条件がそろっています。この章では、畳の下地にカビが発生する原因を、構造的・素材的な観点から解説します。
1-1. 湿気がこもる構造と室内環境の関係
畳の下にカビが発生する最大の原因は、「湿気がこもりやすい構造」にあります。畳は断熱性が高く、空気を遮断しやすいため、畳と床の間に湿気がたまりやすいのです。
日本の住宅は、気密性が高くなったことで冷暖房効率は上がりましたが、その反面、通気性が低下し、湿気が逃げにくくなっているという問題があります。とくに、梅雨時期や冬場の結露シーズンには、室内の湿度が高くなりがちで、床下からの湿気も加わり、畳の裏側が常に湿った状態になってしまうのです。
さらに、以下のような生活習慣も湿気を増やす原因になります:
- 洗濯物の室内干し
- 加湿器の使いすぎ
- 換気不足(窓を開けない・24時間換気を止めている)
- 直置きの家具で空気の流れを遮断している
これらの条件が重なると、畳の下の空気は動かず、カビが好む「湿度60%以上」「温度20〜30℃」の環境が簡単に整ってしまうのです。
1-2. わら床・木質ボードそれぞれの特性とカビリスク
畳の下地材には主に「わら床」と「**木質ボード(インシュレーションボードなど)」の2種類が使われますが、それぞれにカビが生えるリスクや特性があります。
✅ わら床(天然の稲わらを重ねたもの)
わら床は通気性とクッション性に優れた自然素材ですが、湿気を吸いやすく、乾きにくいという欠点があります。とくに湿度の高い場所では、内部まで湿気が浸透しやすく、カビが根を張りやすい傾向があります。
また、天然素材であるため、カビの栄養源となる有機物を多く含んでおり、一度カビが生えると拡大しやすいというリスクもあります。
✅ 木質ボード床(再生木材を圧縮したもの)
木質ボードは比較的均一で施工がしやすく、コストも抑えられるため、現在では多くの住宅で採用されています。ただし、吸湿性があり、長期間湿気にさらされると変形やカビの発生が起こりやすいというデメリットがあります。
また、接着剤などの成分がカビにとっての栄養源になる場合もあり、表面にカビが出ていなくても内部で繁殖していることもあるため注意が必要です。
2. 畳のカビを放置すると起こる健康と建物への影響
畳の下にカビが生えていることに気づいても、「見えないから大丈夫」「少しだから放っておいても平気」と思っていませんか?しかし実際には、カビを放置することで健康面にも建物にも深刻な被害を招くおそれがあります。この章では、カビを放置した場合に起こりうる2つの大きなリスクを解説します。
2-1. アレルギーや喘息などの健康被害
カビは単なる「汚れ」ではなく、生きた微生物です。特に畳の下に生えたカビは、見えにくい場所にあるため発見が遅れ、空気中に胞子が放出され続けることで、健康への影響がじわじわと現れてきます。
畳のある和室は、家族がくつろぐ場所として使われることが多く、長時間過ごす空間にカビが存在していると、以下のような症状が出る可能性があります:
- アレルギー性鼻炎(くしゃみ、鼻水、鼻づまり)
- 目のかゆみや涙目
- 喉の違和感や咳が続く
- 喘息の悪化
- 慢性的な倦怠感や頭痛
特に小さなお子様、高齢者、呼吸器疾患を持つ方は、カビの胞子に敏感に反応しやすく、重症化するリスクが高まります。カビが原因だと気づかず、風邪や花粉症と誤認してしまうことも多く、知らず知らずのうちに健康を害してしまうのです。
2-2. 下地材の劣化と畳・床へのダメージ
カビは時間とともに下地材や畳内部に深く浸透していきます。初期段階では表面にポツポツと黒い斑点が現れる程度ですが、放置すればするほどカビの根(菌糸)は畳床の内部や接着層、さらにはフローリング材にまで侵食してしまいます。
特にわら床は天然素材で吸湿性が高いため、内部でカビが広がると構造そのものがもろくなり、ふかふかした踏み心地や沈み込みが出てくることがあります。また、木質ボードでも、長期間湿気にさらされると膨張・反り・腐敗などが進行し、畳の張り替えだけでなく床材の補修が必要になるケースもあります。
さらに、カビ臭が部屋全体に広がると、住環境の快適さも損なわれるだけでなく、来客時の印象や生活の質にも悪影響を及ぼします。
3. 畳の下地にカビが生えたときの正しい対処法
畳の下にカビを発見したら、焦らず冷静に対処することが大切です。無理にこすったり、市販の強い洗剤で処理すると素材を傷めたり、胞子を空気中に広げてしまう危険があります。この章では、安全かつ効果的にカビを除去する方法と、張り替えが必要なケースについて説明します。
3-1. カビ除去の安全な手順と注意点
カビを除去する際は、健康への影響を防ぎながら、畳や下地材を傷めない方法を選びましょう。以下に、安全な除去の手順を紹介します。
✅ 必要な準備と道具:
- マスク(N95推奨)、手袋、ゴーグル
- 消毒用エタノール(70%程度)または防カビスプレー
- 使い捨ての布やキッチンペーパー
- ゴミ袋、雑巾、換気扇または扇風機
✅ 作業手順:
- 窓を開けて換気を行う
作業中はカビの胞子が舞う可能性があるため、しっかり換気をしましょう。 - 畳を持ち上げ、カビ部分を確認する
下地のどこに、どの程度カビが広がっているかを丁寧に確認します。 - カビにエタノールをスプレーし、10分放置
カビの表面にたっぷりと吹きかけ、完全に殺菌します。塩素系漂白剤は畳や木材を傷める可能性があるため避けましょう。 - 柔らかい布で押さえるように拭き取る
こすらず、やさしく押し当てるように拭き取るのがポイントです。 - 乾燥させる
畳や下地が完全に乾くまで、扇風機や除湿機を使ってしっかり乾燥させましょう。湿気が残っていると、再発の原因になります。 - 仕上げに防カビ剤を噴霧
再発防止のために、防カビ処理をしておくと安心です。
✅ 注意点:
- 広範囲にカビが生えている場合、自力での除去は難しく、専門業者に依頼する方が安全かつ確実です。
- 作業後は、使用した布や手袋などはすぐにビニール袋に入れて密封し、廃棄してください。
3-2. カビがひどい場合の張り替え判断基準
以下のような状態であれば、畳や下地材の張り替えを検討する必要があります。
✅ 張り替えが必要なサイン:
- 畳の裏一面にカビが広がっている
- 下地材まで黒く変色し、ニオイが強い
- 畳が湿って柔らかくなっている、またはふかふかと沈む
- 表面のカビを拭いてもすぐに再発する
- 部屋全体にカビ臭がこもっている
特にわら床の畳はカビの根が深く入り込みやすく、一部にカビが見えている場合でも内部でかなり広がっている可能性があります。無理に使用を続けると、健康リスクが高まるため、畳の張り替えと下地材の交換をセットで行うことが最善策となることもあります。
張り替えの際には、次章で紹介するように「カビに強い下地材や畳素材」を選ぶことが、再発を防ぐうえで非常に重要です。
4. カビの再発を防ぐための湿気対策と予防法
カビを除去しても、同じ環境で暮らし続けていれば再発するリスクは高いままです。とくに畳の下は目に見えない場所だけに、事前の予防と環境の見直しがカビ再発を防ぐカギとなります。この章では、再びカビを生やさないために重要な湿気対策と、下地材選びのポイントをご紹介します。
4-1. 室内の通気・除湿・温度管理のポイント
カビを防ぐには、まず「湿度を上げないこと」が何よりも大切です。以下に、畳のカビ再発を防ぐための日常的な湿気対策をご紹介します。
✅ 室内湿度は40〜60%をキープ
カビが活発になる湿度は60%以上。常に湿度計を設置して、湿度の見える化を行いましょう。湿度が高い場合は以下の対策が有効です。
- 除湿機やエアコンのドライ機能を活用
- 晴れた日は畳を上げて換気
- 梅雨や冬の結露対策として、床下換気口の点検・清掃
✅ 空気の流れをつくる
空気が動かない場所に湿気はこもります。以下を心がけると効果的です:
- 家具と壁の間に5cm以上のすき間を作る
- サーキュレーターを使って空気を循環させる
- 畳のある部屋のドアを常時開けておく時間をつくる
- 押し入れや収納の扉を定期的に開けて換気
✅ 室内干しと加湿器は使いすぎない
洗濯物の室内干しや長時間の加湿器の使用は、畳の下に湿気が溜まる原因になります。使用する際は、短時間で終わらせ、除湿器との併用がおすすめです。
4-2. 下地材選びと防カビ処理のコツ
畳のカビ対策では、「最初からカビが生えにくい下地材を選ぶ」ことも非常に重要です。下地材の選び方ひとつで、カビリスクは大きく変わります。
✅ わら床を使う場合
わら床は天然素材ゆえに湿気を吸収しやすく、カビが生えやすい傾向があります。使用する場合は以下を徹底しましょう:
- 防カビ剤を施工前に塗布(専用スプレーや下地材用処理剤)
- 床下に調湿材や除湿剤を設置
- 年に一度、畳を持ち上げての点検と乾燥
✅ 木質ボードの場合
木質ボードは比較的軽く施工がしやすいですが、水分を吸い込むと変形やカビの原因になるため、防湿対策が必要です。
- 施工前に撥水性のある防カビ下地処理を行う
- 断熱材との間に**空気の通り道(通気層)**を確保
- 調湿シートを併用して、床面からの湿気上昇をブロック
✅ 畳下に「防湿シート」を敷く
畳の下に市販の防湿シートを敷くことで、床下からの湿気を遮断できます。価格も手頃で、後からでも対応可能なため、カビが気になる環境では特におすすめです。
5. カビに強い畳の選び方とメンテナンス術
畳のカビ対策は、掃除や湿気管理だけではなく、「最初にどんな畳を選ぶか」がとても重要です。素材選びを誤ると、どれだけ手入れをしても再発を防ぎきれないことがあります。この章では、わら床と木質ボードの違いや、それぞれのメリット・デメリット、そしてカビに強い畳を保つためのメンテナンス方法についてご紹介します。
5-1. わら床 vs 木質ボード:どちらを選ぶべきか?
畳の「床(とこ)」部分には主にわら床と**木質ボード床(建材床)**があります。それぞれの特徴を比較し、カビに強い選び方を解説します。
✅ わら床の特徴
- 天然素材で通気性とクッション性が高い
- 調湿性があるため、一時的な湿気を吸収できる
- しかし、湿気が抜けにくく、内部でカビが繁殖しやすい
- 重くて高価だが、伝統的な和室には適している
🟢 おすすめシーン: 和室を本格的に仕上げたい場合や、しっかり換気・管理できる環境で使用する場合に適しています。
🔴 カビ対策ポイント: 防カビ処理+定期乾燥が必須です。
✅ 木質ボード床の特徴
- 工業製品で軽く、コストも安く施工が簡単
- 均一な厚みで扱いやすい
- 吸湿性があり、長時間湿気を受けると膨張やカビが発生する可能性がある
- 表面に防カビ処理されている製品もある
🟢 おすすめシーン: 現代住宅やマンション、コストを抑えたいケースに適しています。
🔴 カビ対策ポイント: 防湿シート併用・防カビ処理済製品を選ぶこと。
5-2. 長持ちする畳環境をつくるメンテナンスの基本
カビに強い畳にするには、日々のメンテナンスが欠かせません。以下はカビ予防にもなる基本的なケア方法です。
✅ 1. 定期的に畳を干す・立てかけて換気する
畳をまくり上げて下地に風を通す習慣をつけることで、湿気が抜け、カビの発生を予防できます。晴れた日は年に2〜3回、畳を立ててしっかり換気しましょう。
✅ 2. 畳の表面は乾拭きが基本
濡れ雑巾はNGです。水分を含ませると畳が傷み、カビの原因になります。掃除は乾いた雑巾やモップでの乾拭きを徹底しましょう。
✅ 3. 除湿・通気アイテムを活用
- 畳下に除湿シートやすのこを敷く
- 収納スペースには除湿剤を設置
- 室内用サーキュレーターで空気を循環させる
✅ 4. 畳の表替えや裏返しを定期的に
畳は5〜10年で「表替え」や「裏返し」を行うのが理想です。その際に下地材の点検とカビチェックを行うことで、長期的に清潔な状態を保てます。
一般社団法人 微生物対策協会について
一般社団法人 微生物対策協会は、「カビの検査と対策」を専門に取り組む団体として、住環境の安全と健康を守る活動を行っています。現代の住宅では、気密性の高まりや換気不足により、カビによる健康被害や建物の劣化といった問題が年々増加しています。当協会は、こうしたリスクに対応するため、**空気中に存在する微生物やカビの「見える化」**を通じて、住まいの安心を提供しています。
私たちの活動の根拠となっているのは、平成27年に施行された「アレルギー疾患対策基本法」です。この法律では、アレルギー症状の予防や軽減のために、生活環境の改善が強く求められています。微生物対策協会はこの理念に基づき、住宅・施設内の空気の状態を科学的に検査・分析し、その結果に基づいた具体的な対策の提案と支援を行っています。
とくにカビは、見た目に分からない場所で広がることが多く、健康被害の原因となるだけでなく、畳や壁材・床材の劣化を進行させるなど、暮らしの質を根底から脅かす存在です。当協会では、空気中に浮遊するカビの胞子を採取・測定し、リスクの有無や濃度を「見える形」でご提供します。
検査を通して被害の実態を明確にし、その建物に合った的確で実行可能なカビ対策を講じることが、私たちの使命です。とくに畳の下など見えにくい箇所におけるカビは、知らず知らずのうちに健康や建物に悪影響を及ぼします。だからこそ、見えないリスクを見える状態にするプロセスが、今後ますます重要になります。
「空気が重い」「カビ臭が気になる」「畳や壁が湿っている」など、住まいのちょっとした変化に気づいたら、ぜひ微生物対策協会にご相談ください。科学的な根拠に基づいた調査と対策で、快適で健やかな住環境づくりをサポートいたします。