2025/10/17
「畳にカビ…そのまま使って大丈夫?畳替えの正しい判断と対処法」
畳にカビが生えてしまったとき、拭き取るだけで済むのか、それとも畳替えが必要なのか判断に迷います。
【記事を読んで分かること】
カビの原因や畳替えが必要なケース、防カビ仕様の畳の選び方、日常の予防法まで詳しく解説します。
【記事を読むメリット】
畳のカビ問題に正しく対処する知識が身につき、快適で安全な住環境を維持することができます。
1. 畳にカビが生える原因とは?
日本の住宅に欠かせない「畳」は、天然素材でできているため通気性や調湿性に優れる一方、環境によってはカビが発生しやすいという特徴も持ちます。とくに梅雨や夏の高湿度な時期には、気づかないうちにカビが繁殖してしまうことがあります。ここでは、畳にカビが生える代表的な原因と、見落としがちな生活習慣との関係について解説します。
1-1. 高温多湿の日本特有の気候と畳の性質
畳にカビが発生する最大の原因は、日本の「高温多湿な気候」です。梅雨や夏場の湿度は70~90%に達することもあり、カビが繁殖するには絶好の環境となります。カビは湿度60%以上、気温25~30度で最も活発に増殖するとされており、日本の夏はまさにその条件が整っているのです。
畳の素材には、イグサ(い草)が使われることが多く、天然の植物であるため水分を吸収しやすく、湿度が高いと中まで湿気が染み込んでしまいます。さらに、畳床(たたみどこ)には稲わらや木材チップが使われていることが多く、これらもカビにとって格好の栄養源になります。
また、新築やリフォーム直後の家では、建材に含まれる水分が室内に残っていることがあり、これが畳に移ってカビの原因となるケースも少なくありません。加えて、最近の高気密住宅では風通しが悪く、湿気がこもりやすいこともカビの発生を促進します。
1-2. 生活習慣が招く湿気とカビの関係
畳のカビは、気候だけでなく日々の生活習慣によっても引き起こされることがあります。たとえば、以下のような行動が湿気を増やし、カビの原因になることがあります。
- 布団を敷きっぱなしにしている
敷き布団は体温と汗によって湿気がたまりやすく、畳との接地面が常に湿った状態になるため、カビが発生しやすくなります。 - 部屋の換気が不十分
特に雨の日やエアコン未使用時は、室内の空気がこもり、湿気が逃げにくくなります。長時間締め切った部屋では、畳が湿気を吸い続けてしまいます。 - 洗濯物の室内干し
乾ききっていない洗濯物が部屋の湿度を一気に上げるため、畳が過剰な湿気を吸収する結果となり、カビの温床となります。 - 観葉植物の設置
水やりや蒸散によって局所的に湿度が上がり、その付近の畳にカビが発生することもあります。
このように、畳にカビが発生するのは自然環境だけでなく、私たちの生活スタイルによる影響も大きいのです。普段の暮らしを少し見直すだけでも、カビのリスクを大きく減らすことができます。
2. 畳にカビが生えたら畳替えは必要?判断基準を解説
畳にカビを見つけたとき、「すぐに畳替えしなければいけないのか?」「自分で掃除すれば大丈夫?」と迷う方も多いのではないでしょうか。実はカビの種類や範囲、発生している場所によって、対処法は大きく異なります。ここでは、畳替えが必要なケースとそうでない場合の見分け方について詳しくご紹介します。
2-1. 拭き取りで済むケースとNGな対処法
まず、畳の表面にうっすら白いカビが見える程度で、まだ広範囲に広がっていない場合は、自分での対処が可能なケースもあります。たとえば、以下のような軽度のカビであれば、畳替えをせずに済むことがあります。
- カビの範囲が小さく、数か所にとどまっている
- 畳の表面(畳表)だけに発生している
- 黒や緑ではなく、白くふわっとしたカビである
- 発生から日が浅く、素材が傷んでいない
このような場合は、乾いた布で軽く拭き取り、アルコールスプレーを噴霧して除菌することで、ある程度の対応が可能です。その後は、部屋の換気と除湿を徹底し、再発を防ぎましょう。
ただし、注意したいのは「濡れた雑巾で拭く」「強くこすり取る」といったNG行動です。水分を使うことで畳の湿気がさらに増し、かえってカビを広げてしまう可能性があります。また、ゴシゴシこすると畳表が傷み、カビが奥まで入り込む原因になるので要注意です。
2-2. 畳替えを検討すべきカビのレベルとは
次のようなケースでは、自力での除去は難しく、畳替えを検討するのが望ましいと言えます。
- カビの色が「黒」「緑」「青」などに変色している
- 畳表だけでなく、畳の中(畳床)にまでカビが浸透している
- 部屋中にカビ臭が広がっている
- 畳が湿ってふわふわとした感触になっている
- カビを拭き取ってもすぐに再発する
これらの症状は、カビがすでに畳の内部まで入り込み、根を張ってしまっている状態です。見た目にはきれいになったようでも、内部のカビが胞子を出し続けている可能性があり、再発リスクも高くなります。
さらに、畳の内部までカビが進行している場合、空気中にカビの胞子が舞い、健康被害を引き起こす危険性もあります。とくに小さなお子さんやアレルギー体質の方がいる家庭では、早めの対応が必要です。
畳替えは、「表替え(畳表のみを交換)」や「裏返し(畳表を裏にして再利用)」という方法もありますが、カビが内部にまで達している場合は、「新調(畳ごと交換)」を検討すべきタイミングです。
カビの広がり具合を正確に見極めるには、専門の畳店やカビ対策業者のチェックを受けることが一番確実です。無理に自己判断せず、プロの意見を取り入れることで、健康と住環境を守ることにつながります。
3. 畳替え時に気をつけるカビ対策のポイント
畳替えは、ただ新しい畳を敷くだけでは本当の意味での改善にはなりません。カビを発生させた原因が残っていれば、またすぐに同じようなトラブルが起きてしまう可能性があります。この章では、畳替えの際にしっかりとチェックすべきカビ対策のポイントをご紹介します。
3-1. 畳の下の床に潜む見えないカビにも注意
畳替えのときに多くの人が見落としがちなのが、「畳の下の床面」です。畳にカビが生えていた場合、その湿気は畳の下にある床板や構造材にも影響を与えている可能性があります。
特に、畳をめくったときに次のようなサインがあれば要注意です。
- 床板に黒っぽいシミや斑点がある
- 畳の裏面がベタついていたり、変色している
- 畳の設置面がカビ臭い
- 踏んだときにフカフカと沈むような感触がある
こうした場合は、床板にまでカビが侵食している恐れがあります。そのまま新しい畳を敷いても、根本的な解決にはなりません。畳を外すタイミングは、床面や構造材の状態を確認し、必要であれば床の清掃や防カビ処理を行うチャンスでもあります。
また、床下に湿気がたまりやすい構造である場合(通気が悪い・断熱材がないなど)、床下の点検口から内部の湿度状況をチェックしておくと、長期的なカビ対策に役立ちます。
3-2. 防カビ仕様の畳や素材選びのコツ
畳替えをするなら、次にカビを発生させないための素材選びがとても重要です。従来のい草畳は自然素材で吸湿性が高く、風合いもよい反面、カビのリスクがどうしてもつきまといます。
そこで、カビ対策を意識するなら、以下のような防カビ仕様の畳や新素材を検討するのがおすすめです。
- 和紙畳:和紙をこより状にして樹脂でコーティングした畳。い草に比べて吸湿性が低く、カビ・ダニに強いのが特徴です。変色しにくく、カラー展開も豊富。
- 樹脂畳(ポリプロピレン製など):耐久性が非常に高く、水拭きができるのでメンテナンス性にも優れます。水回りに近い和室や、ペットのいる家庭に特におすすめです。
- 防カビ加工畳表・畳床:い草や稲わらに防カビ処理を施した製品もあります。天然素材の風合いを保ちつつ、ある程度の防カビ効果を期待できます。
また、畳の内部(畳床)にも注目しましょう。従来の「わら床」は通気性に優れる反面、湿気を含みやすい素材です。カビが心配な場合は、建材床(ボード系素材)やスタイロフォーム床(発泡スチロール系)など、水分を吸収しにくい素材を選ぶのも有効です。
畳を選ぶときは、価格や見た目だけでなく、「カビの再発リスクを減らせるか?」という視点を持つことが、後悔しない畳替えのポイントになります。
4. カビに強い畳の選び方と最新の防カビ技術
畳のカビトラブルを根本から防ぐには、そもそも「カビに強い畳」を選ぶことが非常に重要です。最近では、見た目や触り心地は従来の畳に近いまま、カビ・ダニに強い高性能な素材や防カビ技術を備えた畳が数多く登場しています。この章では、カビに強い畳を選ぶポイントと、注目されている最新技術をご紹介します。
4-1. 和紙畳・樹脂畳など新素材のメリットと特徴
「畳=い草」というイメージを持っている方も多いと思いますが、現在では和紙畳や樹脂畳といった新しい素材の畳が広く普及しており、それぞれにカビ対策としての強みがあります。
和紙畳(わしだたみ)
和紙をこより状にして樹脂コーティングした素材で作られた畳です。以下のような特徴があります。
- 湿気を吸収しにくく、カビやダニが発生しにくい
- 日焼けや変色が少なく、長期間きれいな状態を保ちやすい
- 表面がさらっとしていて肌触りも良好
- 豊富なカラーバリエーションでモダンな和室にもマッチ
特に、湿気が気になる場所や、ペット・小さな子どもがいる家庭に向いています。
樹脂畳(ポリプロピレン畳など)
合成樹脂でできた非常に丈夫な畳で、水拭きやアルコール消毒も可能です。
- 完全防水性があり、湿気を通さない
- 食べこぼしや水分にも強く、お手入れが簡単
- カビやダニの発生リスクがほとんどない
- 高耐久でへたりにくい
公共施設や宿泊施設などでも導入されており、機能性を重視したい家庭におすすめです。
いずれの素材も、い草のような風合いを再現したデザインが多く、違和感のない見た目で、なおかつ高い防カビ性を実現しています。
4-2. 防カビ加工のある畳表・畳床の選び方
「やっぱり自然素材がいい」という方には、防カビ加工を施したい草畳や畳床の製品もあります。これらは従来の風合いや香りを保ちながら、カビへの耐性を高めたものです。
防カビ加工畳の特徴
- 畳表(い草)にカビ抑制剤を浸透させ、湿度が高くてもカビが繁殖しにくい
- 畳床にも防虫・防カビシートを組み込んだ構造がある
- アレルゲンの抑制効果がある製品も登場しており、健康への配慮も◎
また、防カビシートや防湿材を畳と床の間に敷く「二重対策」も効果的です。これにより、床下からの湿気が直接畳に伝わるのを防ぎ、カビのリスクを大幅に低減できます。
さらに、最新では抗菌・抗ウイルス機能付きの畳も登場しています。空間全体の衛生環境を向上させるという観点から、今後はこうした高機能畳の需要が高まると予想されます。
畳を選ぶ際には、「どの素材が自宅の環境に合っているか」「見た目と機能性のバランスはどうか」をしっかり見極めることが、後悔のない選択につながります。
5. 畳をカビさせないための日常メンテナンス法
どんなに高機能な畳を選んでも、日常的な使い方やメンテナンスが適切でなければ、再びカビが発生してしまう可能性は十分にあります。畳のカビ対策は、「敷いた後が本番」です。この章では、畳を長持ちさせ、カビを防ぐために知っておきたい日常的なお手入れのコツをご紹介します。
5-1. 換気・除湿のコツとNGな掃除習慣
畳にとって一番の敵は「湿気」です。特に梅雨や夏場の多湿期には、何もしていなくてもカビが発生しやすくなるため、日頃の換気と除湿が最重要ポイントになります。
換気のポイント
- 毎日1回以上は窓を開けて空気の流れをつくる
- 対角線の窓を開けると空気が通りやすく効果的
- 雨の日でも30分程度は換気するのが理想
除湿の工夫
- 湿度が60%を超える日はエアコンの「除湿モード」を活用
- 畳のある部屋には除湿機の設置がおすすめ
- 押入れや家具の裏にも湿気がたまりやすいため、こまめに空気を入れ替える
掃除に関しては、水拭きは基本NGです。濡れた雑巾での拭き掃除は畳が湿気を吸収してしまい、カビの原因となります。日常の掃除では、乾いた雑巾で畳の目に沿って拭く、または掃除機でゆっくり吸い取る方法が理想的です。
どうしても汚れが気になる場合は、アルコールスプレーを使い、軽く湿らせた布で拭き取り、すぐに乾拭きと換気を行うようにしましょう。
5-2. 季節ごとの注意点とカビ予防アイテム活用術
畳のカビ対策は、季節に応じて気をつけるべきポイントが異なります。とくに湿度が上がる春〜夏と、寒暖差で結露が生じやすい秋〜冬では、それぞれ違った注意が必要です。
春~夏(梅雨・夏の高湿期)
- 畳の部屋は特に除湿を意識して管理する
- 布団を毎日畳む&定期的に干す習慣をつける
- カビ防止スプレーを月1回程度使用すると効果的
秋~冬(結露・冷え込みによる湿気)
- 暖房使用時は部屋の換気も並行して行う
- 窓の結露が床に伝わらないように吸水テープなどで対策
- 家具の裏にスノコや隙間を設けて通気性を保つ
また、市販の畳用防カビアイテムを取り入れることで、手軽にカビ予防ができます。たとえば…
- 防カビ・抗菌スプレー(天然成分タイプもあり)
- 畳下用の調湿シート(湿気を吸収・放出してくれる)
- 置き型の除湿剤や炭素材の調湿アイテム
これらを上手に活用することで、畳の内部に湿気がたまりにくくなり、カビの発生を未然に防ぐことができます。
一般社団法人 微生物対策協会について
一般社団法人 微生物対策協会は、**「カビの検査と対策」**を専門的に行う団体として設立されました。カビが引き起こす健康被害や建物の劣化などの問題に真摯に向き合い、見えないリスクを「見える化」することで、誰もが安心して暮らせる住環境の実現を目指しています。
この活動の背景には、平成27年に施行された「アレルギー疾患対策基本法」があります。この法律では、アレルギー症状の予防や軽減のために、生活環境や建築構造の改善が求められています。当協会はこの法的枠組みに基づき、建物内の空気環境を科学的に評価し、適切な対策の普及に努めています。
協会の主な目的は、環境微生物による災害から住まいや生活環境を守ることです。住宅や車内などの空間には、目には見えない微生物が常に存在しており、特にカビは建物への被害が大きく、健康に対する影響も深刻です。私たちはこうした微生物の影響を調査・検査し、リスクの可視化と予防のための啓発活動を行っています。
当協会の検査では、空気中に浮遊する微粒子やカビ菌を専用機器で測定し、その「種類」や「濃度」などを明らかにします。これにより、住まいや建物のどこにリスクが潜んでいるのかを把握し、必要な対応を科学的根拠に基づいてご提案します。
特に建物内でのカビ被害は深刻で、カビ菌は空気中を浮遊し、落下しても簡単には死滅しません。壁の内側や床下、畳の裏などに潜む見えないカビも、当協会の技術によって明確に把握することが可能です。こうした見えない脅威を「見える化」することで、より安全で快適な生活空間づくりを支援しています。
住まいの健康診断とも言える微生物検査を通じて、家族の健康を守り、建物の寿命を延ばすための確かなサポートを行っています。カビや空気環境について気になることがあれば、ぜひ一度、微生物対策協会にご相談ください。