一般社団法人
微生物対策協会

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2025/08/20   

放置空き家に潜むカビの危険と正しい換気方法

空き家は換気不足から湿気が溜まりやすく、カビ被害が深刻化しやすい環境です。
【記事を読んで分かること】空き家における換気の重要性と、効果的なカビ予防・対処法がわかります。
【記事を読むメリット】カビによる健康・建物被害を防ぎ、空き家の価値と安全性を長く保てます。

空き家は人が住んでいない分、室内環境が変化しやすく、カビの温床になりやすい条件が揃っています。特に「換気不足」と「湿度のこもり」は大きな原因です。この章では、なぜ空き家でカビが増えやすいのか、その仕組みと被害の深刻さを解説します。

人が生活している家では、日常の出入りや窓の開閉によって自然と換気が行われます。しかし空き家では、扉や窓が閉め切られたままになり、空気がよどんで湿気が室内にこもります。さらに外気温と室温の差による結露や、雨漏り・壁内の湿気が乾きにくくなるため、湿度が60%以上の状態が長く続きます。この湿度環境ではカビはわずか2日ほどで繁殖を始め、壁紙や木材、畳などに定着します。特に梅雨や台風の季節は、外から侵入した湿気がそのまま閉じ込められるため、カビ発生のリスクが一気に高まります。

空き家のカビは放置期間が長くなるほど根を深く張り、見た目以上に建物内部へ侵食します。木材が腐食すれば構造の強度が落ち、石膏ボードや断熱材は劣化しやすくなります。また、カビの胞子は空気中に漂い、近隣の住宅や管理者が訪問した際に吸い込むことで、アレルギー症状や呼吸器疾患を引き起こす恐れがあります。さらに、長期間放置されたカビは臭いも強く、売却や賃貸利用時に大きなマイナス要因となります。このため、空き家管理では「換気による湿気対策」が欠かせません。

カビ予防の第一歩は「湿気をためないこと」、そのために欠かせないのが換気です。空き家では特に意識的な換気が必要で、方法やタイミングを間違えると逆効果になる場合もあります。この章では、換気の種類や特徴、そして季節ごとの最適な換気タイミングを解説します。

自然換気は、窓やドアを開けて空気の通り道を作る方法です。費用がかからず簡単ですが、外の湿度が高いと逆に室内湿度が上昇する恐れがあります。一方、機械換気は換気扇や空調設備を使って強制的に空気を入れ替える方法で、外気の湿度をある程度調整できます。空き家の場合は、訪問時に自然換気を行い、湿度が高い時期は除湿機や空調を併用すると効果的です。また、ソーラー発電式の換気ファンを設置すれば、定期的に訪れなくても自動で空気が循環し、湿気の滞留を防げます。

春や秋の湿度が低い日は、日中の気温が上がる時間帯(10〜15時)に窓を開けると効果的です。夏は外気の湿度が高い日が多いため、朝の涼しい時間や夕方以降に短時間の換気を行いましょう。梅雨や台風シーズンは、外の湿度が70%を超える日は窓を開けず、機械換気や除湿機を優先します。冬は外気が乾燥しているため、結露防止のためにもこまめな換気が有効ですが、急激な温度差による結露を避けるため、窓を全開にする時間は短くしましょう。こうした季節ごとの工夫が、空き家のカビ予防に直結します。

空き家での換気は、ただ窓を開けるだけでは十分な効果を得られないことがあります。空気の流れを意識した換気と、湿気やカビ胞子の侵入を防ぐ工夫が必要です。この章では、実際に効果を高める窓や扉の開け方、そして換気時に注意すべきポイントを紹介します。

換気を効率よく行うには、空気の入口と出口を意識することが重要です。風が入る方向の窓を少しだけ開け、反対側の出口になる窓や扉を大きく開けると、空気がスムーズに流れます。部屋が複数ある場合は、ドアを開けて一直線の空気の通り道を作りましょう。1回の換気時間は10〜15分程度が目安です。また、空気の流れを促すために扇風機を出口側に向けて回すと、効率的に室内の湿った空気を排出できます。

外の湿度が高い日に長時間窓を開けると、かえって室内に湿気を取り込んでしまいます。そのため、雨天や梅雨時は機械換気や除湿機を優先しましょう。換気中は、外から入ってくるカビ胞子やホコリを減らすために、入口側の窓にフィルターや網戸を設置するのも有効です。また、換気後には床や窓周りの結露を拭き取り、湿気を残さないようにします。こうした細かい工夫が、空き家のカビ発生を長期的に防ぐポイントになります。

換気はカビ対策の基本ですが、それだけでは万全とは言えません。空き家の環境や構造によっては、湿気のこもりやすい場所が残るため、補助的な対策を組み合わせることが重要です。この章では、湿度管理や防カビ素材の活用など、換気以外でできる効果的な方法を紹介します。

湿度は目で見えないため、温湿度計を設置して数値で管理することが欠かせません。特に梅雨や台風の時期は、湿度が60%を超えたら除湿器を稼働させましょう。電源を長期間入れられない場合は、押し入れやクローゼットに除湿剤を置くのも効果的です。また、家具は壁から5cm程度離して配置すると、空気が流れやすくなり湿気がこもりにくくなります。畳やカーペットの下にも湿気が溜まりやすいので、定期的に干すことがカビ防止につながります。

壁紙や塗装、床材に防カビ機能のある建材を使用すると、長期間カビの発生を抑制できます。特に浴室やキッチン、玄関周りなど湿気が多い場所に効果的です。市販の防カビスプレーやコーティング剤を換気後に使用すれば、カビ胞子が定着しにくい環境を作れます。また、収納内部や家具の裏側には防カビシートを敷くことで、見えない場所でのカビ繁殖を防ぐことができます。こうした素材や薬剤の活用は、空き家の維持管理を長期的に楽にしてくれる予防策です

どれだけ予防をしても、空き家では環境条件によってカビが発生してしまうことがあります。発見したら早期に対応することが重要ですが、方法を誤ると胞子を拡散させ、被害を広げてしまいます。この章では、自分でできる軽度なカビ清掃と、専門業者に依頼すべきケースについて解説します。

カビの範囲が小さく、表面にとどまっている場合は自分で処理できます。まず窓を開けて換気し、マスクと手袋、必要に応じてゴーグルを着用して安全を確保します。次に、70%前後のエタノールや市販のカビ取り剤を布に含ませ、カビを優しく拭き取ります。擦りすぎると胞子が舞い上がるため、押さえるように拭くのがポイントです。使用した布や手袋はビニール袋に密閉して廃棄し、作業後は手洗いを徹底します。

カビが1㎡以上の広範囲に広がっている場合や、壁紙の下や床下など見えない場所に被害が及んでいる場合は、専門業者への依頼が安全です。業者は空気中の胞子濃度を測定し、原因を特定した上で適切な除去作業と再発防止策を行います。費用は被害の規模や作業内容によって数万円〜数十万円と幅がありますが、放置して構造材の劣化や健康被害が拡大することを考えれば、早期対応が結果的にコストを抑えます。信頼できる業者を選ぶためには、見積もり内容や実績、保証の有無を必ず確認しましょう。

一般社団法人微生物対策協会は、「カビの検査と対策」を専門とし、人々の健康と安心できる住環境を守るために活動している団体です。カビによる健康被害や建物の劣化を防ぐため、室内空気中の微生物を数値で可視化し、その結果に基づいた適切な対策を提案します。設立の背景には、平成27年施行の「アレルギー疾患対策基本法」があり、この法律では生活環境や建築構造の改善を通してアレルギー疾患の予防・症状軽減を進めることが定められています。

協会の目的は、環境中の微生物災害から住まいと生活環境を守ることです。そのため、室内や車内を漂う目に見えない微生物の存在を測定・分析し、公衆衛生の向上や環境保全、福祉への貢献を目指しています。空気中には私たちが日常的に吸い込む汚染物質が浮遊しており、その有無や濃度を測定することで、リスクを明確化し的確な対策が可能になります。

現場では、建物内での微生物被害としてカビが圧倒的に多く確認されています。カビは一度発生すると、落下した胞子が容易に死滅せず環境に定着します。そのため、見えるカビはもちろん、肉眼では確認できないカビの存在も含めて被害状況を把握し、科学的根拠に基づいた除去と再発防止策を講じることが重要です。微生物対策協会は、この確かな検査と対策を通じて、健全な住環境づくりを支えています。

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