2025/06/24
せっかくの新築住宅なのに、カビが発生してしまうケースが増えており、入居者の健康や快適性に影響を与えています。
【記事を読んで分かること】新築でもカビが多発する理由とその背景、発生しやすい場所、予防と対処の方法が分かります。
【記事を読むメリット】大切な住まいをカビから守り、快適で健康的な生活空間を維持するための知識と実践策を得られます。
1. なぜ新築なのにカビが発生するのか?
「新築なのにカビが出た…」という相談は、年々増加しています。本来は清潔で快適なはずの新築住宅で、なぜカビが発生してしまうのでしょうか? 実は、新築ならではの建材・構造・施工スケジュールがカビの原因を生みやすくしているのです。この章では、主な原因を2つに分けて解説します。
1-1. 施工時の湿気や乾燥不足が原因に
新築住宅では、建築工事の工程で大量の水分が発生します。たとえば、基礎のコンクリート打設・モルタル・内装のクロス糊や塗装など、水を使う工程は多岐にわたります。これらがしっかり乾燥しないまま工程が進むと、建材内部に水分が閉じ込められた状態で完成してしまいます。
また、近年は建築工期の短縮が求められ、乾燥期間を十分に設けず次の工程に移るケースも多いです。これが、完成した時点では見えない内部の湿気として残り、入居後にカビが発生する原因になります。
特に梅雨時期や秋雨の季節など、外部湿度が高いタイミングで建築される住宅は注意が必要です。施工時に湿気を含んだまま密閉されることで、壁の中や床下にカビが繁殖する温床が生まれてしまうのです。
1-2. 高気密・高断熱住宅の落とし穴
近年の住宅は省エネや断熱性能の向上により、「高気密・高断熱」が標準仕様となっています。これはエネルギー効率の観点では大きなメリットですが、同時に「空気がこもりやすい」「湿気が逃げにくい」構造でもあります。
たとえば以下のような事例が典型的です:
- 冬場に室内と外気の温度差で窓や壁の内部に結露が発生
- 入居直後は換気が十分でなく、クローゼットや収納内部が湿っぽくなる
- 一定期間、空き家状態で空気の循環が止まり湿気が停滞
このように、高性能な住まいであるほど、換気不足や湿気滞留が起きやすくなり、それがカビ発生の引き金となるのです。特に近年では、24時間換気システムのフィルター詰まりや運転停止が原因で、知らぬ間に空気の流れが悪くなり、湿度が上昇するケースも見受けられます。
つまり、「新築=カビが出ない」とは限らず、むしろ構造的に湿気をため込みやすいリスクが潜んでいるということを、あらかじめ理解しておくことが大切です。
2. 新築カビの発生が多発している背景
「新築=清潔で快適」というイメージがある一方で、実際にはカビが多発する新築住宅が全国で急増しています。その背景には、現代の住宅事情やライフスタイルの変化が深く関係しています。この章では、なぜ近年新築でのカビ発生が多くなっているのか、建築事情と生活環境の両面から掘り下げて解説します。
2-1. 最近の建築事情とカビ増加の関係
カビの多発と大きく関係しているのが、「工期短縮」「高気密・高断熱」「新建材の普及」という、ここ10〜20年で急速に進んだ住宅建築の変化です。
◆工期短縮による乾燥不足
近年では、建売住宅や分譲住宅の多くが2~3ヶ月という短期間で完成します。ところが、コンクリートや木材は完全に乾燥するのに数週間〜数ヶ月の期間が必要です。その乾燥工程が不十分なまま建物が完成し、内部に湿気を抱えた状態で引き渡されてしまうのです。
◆高性能住宅ゆえの換気不足
断熱材やサッシ性能の向上により、冬は暖かく夏は涼しい住宅が増えた一方で、空気の流れが滞りやすく、湿気がこもる構造にもなっています。24時間換気の導入は義務化されていますが、実際にはフィルター詰まりや使い方の誤りによって効果を発揮できていない住宅も多く、室内の相対湿度が上昇しやすい状況が生まれています。
◆新建材の吸湿性の問題
現代の建材は軽量化やコスト削減が進み、合板やビニールクロスなど湿気を通しにくい素材が主流です。一見すると水に強く見えますが、実は一度水分を含むと乾きにくく、内部で湿気がこもりやすくなります。このため、下地材との間にカビが繁殖しやすくなるのです。
2-2. 入居前の見えないリスクとは
建物の完成後、引き渡しから入居までにしばらく空き家状態が続くケースも多く見られます。とくに建売住宅や分譲マンションでは、購入から実際の入居まで数週間〜数ヶ月放置されることも少なくありません。
この「無人期間」に次のような状況が起こり得ます:
- 室内の空気が停滞し、湿度がこもる
- 換気がなされず、微細なカビ胞子が定着
- 気温の変化で結露が発生し、クロスの裏や天井にカビが繁殖
つまり、新築住宅であっても、施工ミスがなくても空気管理が不十分なだけでカビは簡単に発生してしまうのです。
特に近年は、地球温暖化の影響もあり、湿度の高い日が増えていることも見逃せません。温暖多湿な気候と現代の住宅構造が合わさることで、新築カビが“起こるべくして起こる”時代になってきています。
3. 新築住宅でカビが発生しやすい場所
新築住宅に住んでいても、「なんだかにおう」「壁紙にシミがある」といった小さな異変に気づくことがあります。実はそれ、**カビの初期症状かもしれません。**新築でも油断できない、カビが発生しやすい具体的な場所とその原因について、詳しく解説します。
3-1. 壁の中・床下・天井裏などの隠れた危険地帯
表面はきれいに見えても、住宅の構造の奥深くでカビが静かに繁殖しているケースが多く見られます。とくに以下のような“見えない場所”は要注意です。
◆壁の中(断熱材やボードの裏)
新築時、断熱材の施工が甘かったり、防湿シートに隙間があると、外気との温度差で壁内に結露が発生します。この結露が長く続くと、カビが石膏ボードや木材に広がるのです。
◆床下
基礎部分が十分に乾燥しないまま床を組み上げると、床下に湿気がこもってカビが発生します。近年は基礎断熱が主流となり、床下の空気が動きにくいため、一度湿ると乾きにくい構造になっています。
◆天井裏・屋根裏
小屋裏や天井裏は換気が不十分になりがちで、断熱施工が不完全だと天井面で結露→カビ発生という流れが起こりやすくなります。気づいた時には木材が黒ずんでいた、断熱材にカビが付着していたという事例も。
これらの場所は、目視での確認が難しく、においや空気の重さで異変を感じるまで発見が遅れることが多いため、定期的な点検や検査の重要性が高まります。
3-2. クローゼットや窓まわりの湿気トラブル
居住スペースの中でも、日常的に湿気がこもりやすく、カビのリスクが高い場所があります。特に以下の2か所は、見逃されがちで注意が必要です。
◆クローゼット・押入れ
収納内は空気の流れが少なく、衣類や布団から出る湿気がたまりやすい空間です。とくに北側の部屋にあるクローゼットは、外気の影響で壁内結露も起こりやすく、壁紙裏にカビが広がることもあります。
よくある事例:
- 入居3ヶ月で「押入れの布団がカビ臭い」
- 壁際に置いた棚の裏が真っ黒になっていた
◆窓まわり・サッシ周辺
冬場、室内と外気の温度差で窓ガラスに結露が発生し、サッシのゴムパッキンや壁際が濡れた状態になることがあります。これを放置すると、ゴム部分やクロスの隙間にカビが定着します。
チェックポイント:
- カーテンの裏側にカビの斑点がある
- サッシのゴムが黒ずんでいる
- 壁紙の下端がめくれ、黒ずんでいる
これらの箇所は、毎日目にしているのに見落とされやすい場所です。湿気を逃がすために、収納を開けて風を通したり、結露を拭き取る習慣を持つだけでもカビのリスクを大幅に下げることができます。
4. 新築時にできる!カビの予防策と点検ポイント
新築住宅をカビのない快適な住まいに保つためには、「最初が肝心」です。施工中から入居直後にかけての湿気管理と適切な点検が、将来的なカビトラブルを防ぐ最大のカギとなります。この章では、新築時に意識したい具体的な予防策と、チェックすべきポイントをわかりやすく解説します。
4-1. 工事中の湿気管理と乾燥期間の重要性
住宅が完成するまでの間に、どれだけ湿気を含んでいるかが将来のカビリスクを左右します。とくに基礎工事〜内装工事の間は、湿気がこもりやすいため、以下のような点を重視することが重要です。
◆乾燥工程を飛ばさない施工管理
- コンクリート打設後は最低でも数週間の乾燥期間を確保
- 雨天時の作業にはブルーシートなどで建材の濡れを防ぐ工夫
- 木材や断熱材が湿った状態で施工されていないかを確認
工期の短縮が重視される中でも、「乾燥が不十分なまま次工程に進まない」ことが絶対条件です。信頼できる施工業者や現場監督に、乾燥管理をしっかり確認しておきましょう。
◆防湿シートや通気層の確保
基礎や壁、屋根裏には、湿気を遮る防湿シートや通気層の設計・施工が不可欠です。これらの施工ミスや手抜きがあると、内部に湿気がこもり、結露やカビの温床になります。
4-2. 入居後すぐにすべき換気と環境管理
新築住宅は「ピカピカで安心」と思いがちですが、完成直後は湿気がこもっている状態が多く、注意が必要です。入居してすぐに、以下のような換気・環境管理を行いましょう。
◆24時間換気の活用とメンテナンス
- 入居当初は1〜2週間は特に積極的に窓を開けて換気する
- 換気システム(第一種・第三種)は必ず電源ON、フィルター清掃も忘れずに
多くの新築トラブルは、「換気がオフになっていた」「フィルターが詰まっていた」という初歩的な原因によって湿度が上昇し、カビが発生しています。
◆湿度の見える化と管理
- 室内の相対湿度は40〜60%を目安に維持
- 湿度計をリビング・寝室・クローゼット内などに設置してこまめに確認
- 湿気が高ければ除湿機やエアコンのドライモードを活用
また、家具は壁から少し離して設置することで通気を確保し、壁との接触部分にカビが発生するのを防げます。
新築時からの意識的な湿度管理と点検によって、「気づいたらカビだらけだった」という事態を回避できます。家は建てた瞬間がゴールではなく、「育てて守る」意識が、清潔で快適な住まいを長く維持するポイントです。
5. カビが発生してしまったら?適切な対処と専門家の活用法
どれだけ対策をしていても、住まいの中で**湿気が長く停滞したり、見えない構造部分に湿度がこもると、カビが発生してしまうこともあります。**大切なのは、発生に気づいた時点で迅速に、そして正しい方法で対応することです。この章では、カビを見つけたときの初期対応、DIYでの対処の限界、そして専門家の活用法までを詳しく紹介します。
5-1. DIYで対応できるケースと注意点
軽度なカビであれば、自分で処置することも可能です。以下のような状況であれば、まずは市販の防カビ剤やアルコール除菌剤などを使って対応しましょう。
◆自力で対処可能なカビ
- 壁紙や窓まわりの表面だけにポツポツと発生している
- クローゼット内にカビ臭さを感じるが、視覚的な被害は軽度
- 浴室やキッチンの目地部分など、カビの範囲が小さい
この場合の対処法としては、まず換気を強化し、次にエタノールや防カビスプレーで丁寧に拭き取ります。ただし、**表面を拭いても内部まで根を張っていた場合は再発することが多いため、「様子見」で終わらせない」ことが大切です。
◆DIYの限界とリスク
- 壁紙をはがしたら石膏ボードまで黒ずんでいた
- 床下からカビ臭が上がってくる
- 拭いても何度も再発する
このような状況は、すでに建材内部にカビが入り込んでいるサインです。無理に削ったり薬剤を塗ったりすると、かえって胞子を空気中に拡散してしまい、健康被害を招く恐れもあるため注意が必要です。
5-2. 専門機関の検査・除去・再発防止の流れ
カビの再発や広範囲の被害が疑われる場合は、迷わず専門業者に依頼するのがベストです。プロの検査と処置は、見た目だけでなく空気中のカビ濃度や湿度の問題まで可視化してくれるため、根本的な改善が可能です。
◆専門的なカビ対応の流れ:
- 室内の空気・壁面のカビ検査
┗ カビ菌の種類や濃度、拡散範囲を数値で見える化 - 除去作業
┗ HEPAフィルター付き機材や薬剤を使い、カビ胞子を残さず除去 - 防カビ処理・再発防止対策
┗ 防カビコーティング、通気改善、断熱補強などの処置を施す - 再検査で安全を確認
┗ 除去後にもう一度カビ濃度を測定し、問題ないことを確認
信頼できる団体や専門家に依頼することで、見えないカビのリスクをゼロに近づけることができます。また、報告書を元に今後の予防策も明確になるため、安心感も段違いです。
一般社団法人 微生物対策協会とは
一般社団法人 微生物対策協会は、「カビの検査と対策」を柱とする専門団体です。カビによる健康被害や建物の劣化被害などの問題に対応するために、室内空気の“見える化”を通じて健全な住環境の実現を目指して設立されました。
私たちの活動は、平成27年に施行された「アレルギー疾患対策基本法」に根拠を持ち、生活環境や建築構造の改善を通じて、アレルギーや疾患の予防・症状の軽減を図ることが求められている社会的背景のもとで行われています。
活動目的
- 室内や車室内を浮遊する微生物(カビや菌)に関する理解を深め、住環境や公衆衛生を守る
- カビによる被害の認識を広げ、適切な対策を促進
- 健康と暮らしを支えるための保健医療、福祉、環境保全活動の推進
主な業務内容
- 空気中のカビや菌の浮遊調査・検査(見えない汚染の数値化)
- 壁面や床面などに付着した菌の採取・分析
- 揮発性有機化合物(VOC)や湿度の測定
- 結果報告書の作成と、改善のための具体的な提案
- 防カビ・除菌の技術支援および施工協力
カビ被害へのアプローチ
私たちは、建物内で最も多く確認される微生物被害=カビと向き合っています。空気中に浮遊するカビ菌は、目に見えないからこそ検出が難しく、知らぬ間に健康や建物に影響を及ぼします。特に新築や改修直後は、構造内部でカビが広がるリスクが高まるため、早期の検査と対策が重要です。
協会では、目に見えるカビ・見えないカビの両方を明確にし、安心・安全な空間づくりを支援しています。